12話
「は?」
勇真の嫌な予感が的中する。
「いきなり、何?」
顔を引きつらせる。
「やっぱり、知らないか。10年前ッスからね。簡単に言うと、フィクションじゃない、リアルタイムで本当に1年間やっていた戦隊ヒーロー」
エブリバディーガーディアンズの説明をつらつらとしていく。
「当時まだ子供で、現実とフィクションの区別ついてなかったんスよね。本物のヒーローなのに、使っていた銃や剣のおもちゃが欲しいと泣きわめいていたのもいい思い出ッス」
(そりゃ、おもちゃなんか出したら、子供たちが勘違いして、怪人に向ける恐れがあるからな。おもちゃを出してくれ、という保護者の問い合わせが殺到して、大変だったと聞いたことがある)
二人して遠い目をして、昔を思い出している。
「今出てきているのと違って、怪人はちゃんと目に見えていて。確か地球外生命体だったのかな」
「ああ。よくある展開で、地球侵略してくるはた迷惑な奴らだったよな」
そのとき、大変だったことを思い出して、ため息を漏らしてしまう。
「優魔くん、本当は覚えているじゃないッスか」
「あ…」
また、素を出してしまったことに気づいた。
当時の勇真は二十歳の大学生であったので、当時小学生ほどの井上よりかは覚えている自負があった。
「というか俺も今思い出したんスけど、昔会ったことあるよね?」
「…今回が初対面では?」
嘘である。
今までの会話から、井上と昔会ったことを思い出していた。
優魔の体にしても、中身の勇真にしても。
「嘘だー。今まで忘れていたから信用ないかもしれないけど、君みたいな美少年、一度会ったら頭から離れられないッスよ。思い出すまで、ずっと頭にちらついていたし」
「はあ…」
確かに、勇真自身も優魔がどれだけ美形かは理解している。
今、自分の姿になっていて、鏡越しじゃないと見れないのが残念なくらいだ。
「10年前の東京の大災害。いわゆるエブリバディーガーディアンズと怪人たちの最終決戦の場にいた子でしょ?」
優魔が語った魔物に襲われたときのことは、本当は宇宙から来た怪人たちの襲撃現場であった。
だから、その場にいたのは、魔法使いではなく一般人。
しかも、魔法使いにしか見えない魔物でなく、誰でも見える怪人であった。
話を聞いたときから、そのことには気づいていた。
しかし、敢えて訂正はしなかった。
何故なら、勇真もその現場にいたからであった。
たまたま事件に巻き込まれた訳ではない。
そこにいた理由に気づかれる訳にはいかなかったから。
「もともと応援していたけど、そのとき命の恩人になったレッドハートは今でも尊敬している!」
「いや、あれって、みんなで力合わせた結果だし」
「そうだよ、分かっているじゃん」
このこの、と軽くつつく。
(言いたいことって、そっちじゃないんだけどな。他にもすごい奴はいるから、レッドハートだけはやめろって)
「まあ、俺が言いたいのは、エブリバディーガーディアンズの武器召喚すれば、いいんじゃないって話」
「あ、なるほどな」
前置きが長かったが、やっと理解できた。
(魔物と怪人がどっちが強いかとか分からねえけど、1人分の武器なら、雑魚の怪人なら十数体。最初の頃なら、その日に出てくるメインの怪人の巨大化する前なら倒せたしな。あの蜘蛛、巨大といっても、ビルほどの高さはない訳だし。…まさか、この後さらに大きくなったりしないよな?)
勇真もこの後のことを考えて、希望の光が見え出した。
考えていることで、もやも銃の形を作っていく。
しかし。
「俺にあいつらの武器を使う資格はない」
そう言って、もやは消えてしまう。
「いや、そんなの本人にしか使えないんだから、当たり前だし。別に、今からやるのって、どこかの倉庫に入れられているかもしれない武器を取り出すんじゃなくて、空想で作り出すだけッスよね?本物って訳じゃないんだし」
希望の光を消してなるかと、必死で言い繕う。
「俺はもうあいつらの仲間じゃないんだから」
ぐっと唇を噛み締める。
「まあ、候補に上げただけだから。そこまでいうのを、形作るなんて難しそうだしね。まだ、全体像が写った画像も見つけられないし。うん、他の探してみる」
また、井上はスマホに視線を向ける。
今、優魔はどうなっているのか。
顔や体に切り傷があるが、ギリギリ持ち堪えていた。
「優魔、大丈夫か?」
「赤志さんの体でも痛みを感じるんだね」
「俺の体を何だと思ってる」
そんな軽口叩けるなら、まだ余裕はありそう。
でも、膠着状態のままである。
こうなると、仕方ないが逃げることはできそうにない。
救助が来るまで、待つしかなさそうだ。
そうなるとしても、自分の体になっているとはいえ、子供に任せっぱなしにする訳にもいかないから、早く召喚したいが、まだうまくいかない。
「どう?やっぱり、難しそう?俺もさっきみたいに召喚できるようになるの数年かかったから」
やはり、たった数分でものにするのは難しい技術だったようだ。
頭を抱えたいが、巨大蜘蛛が攻撃を待ってくれる訳がない。
「優魔、右から攻撃が…!」
そう言うと同時に左の脚も優魔に向かってくる。
「ぐっ…」
二つの脚が向かってきた威力は凄まじく、優魔は後ろに突き飛ばされる。
「優魔!」




