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『その日、世界中の人々が戸惑った。魔物も魔族も、魔法も魔王も、神すら、全てがなくなったからである。ところが、読者諸君もご存じの通り、大きな問題にはならなかった。一応、大きな出来事として時代の終わりにはなっているが、歴史書にはあまり詳しく刻まれていない。それらしいものといえば、「大魔法時代の終了」、と言われるくらいか。
とにかく、世界的に見て実質的な影響は少なかった。
それは、十三歳にして王となり、非常に明晰かつ聡明な頭脳で国を動かし、他国の主要な人物に働きかけ、世界中をまとめあげたスコトス国王・ヴィクトリア・ネル・スコトスの手腕、スラムが消え混乱した元住民に薬や食料を分け与えたほか、職を失った、冒険者や魔法研究者、魔法使いなどに新たな職を紹介したり、自ら薬の知識を与えたり、齢十四にして資産と才覚、知識全てを社会的弱者に投じ、国の心臓、血液たる民の死を最小限に防いだ、かの世界的に有名な一級薬師・ストルゲ・ディーオンの一番弟子・モニカ・ディーオンによるところが大きい。
そのほかに、勇者の仲間であったメラニアが、自らをメラニア・ラプソドスと名乗り、各地を転々として娯楽を提供しつつ、孤児院や貧しい村、奴隷など、比較的お金の流れていきにくいところに、貴族からもらった給料のほとんどを注いだため、彼らの反乱が防がれたり、同じく勇者の仲間として各地で知られていたシメオンは、その大きな体と斧を使って、土地の開発を進めたり、メラニアと同じように、そうして得たお金を貴族階級以外にも回したために、世界は平和を保ったのである。
また、彼らが異口同音に語った、神殺しの逸話は、世界中で知られることになる出来事となった。魔法が消えたことによって、かつては四人に批判が殺到したが、やがて人々が魔法のない世界になれると、魔物が消えたことに喜ぶ人や、彼らに可能性を見せてもらった若者が、批判的な思考を押しのけ、時代の中心となった。『神殺し事件』から三十年の時が経とうとしているこんにちでは、頭の固い者のみがそのような批判をする有様である。
彼彼女らよりもよほど年上の筆者だが、そんな筆者も彼彼女らの行動や熱意に敬意を示したい。
といったところで、筆を置こうと思う。
最後に、本書は、魔法歴史や魔法研究への悪影響、それから魔法文化などのマイナスな面から過剰に彼彼女らの行動をあしざまに罵る、はたまた神か仏かのように彼彼女らを褒め称えたる、もしくは単なる出来事として追われがちな『神殺し事件』について、筋道を再構築し、読者諸君にこの出来事について新しい見方で見てもらおうという思いで生まれた、革新的なものであると思う。いかがだっただろうか。本書を通して、新しい視点で『神殺し事件』およびそれにかかわった彼彼女らの暖かさを感じていただければ幸いだ。
繰り返しになるが、彼彼女らに絶え間ない尊敬と好意、彼彼女らを信じる言葉を書き留めて、最後とさせていただく』
――三十年後の、とある書物『終章』より引用。




