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旅は道連れ世は情け  作者: siguhatyou
少女との出会い
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第6歩:「うん。その何かってさ、あれ女の子だよね?」

修正完了( ˙꒳˙ )

 漁夫と別れて数時間が経過した。

 青かった空に暖色が混ざり始めた頃、アルタエルとアヤメは海岸に座り込んでいた。疲れが溜まって休憩をしている訳ではなく、暗くなる前に腹ごしらえを済ませるべきだとアヤメが提案したからだ。

 周辺には地面を照らすものなど無く、背後には急斜面の森。日が落ちると闇に包まれるのは容易に想像が出来た。


「あれ、村長おにぎりとか入れてる……日持ちしないのにねぇ」


「いや、下の方には日持ちしそうな缶詰がありますので、わざわざ食べ慣れている物を上の方に入れてくれたんだと思いますよ」


「やっぱり村長は優しいねぇ……それじゃあ好意に甘えておにぎりから食べようか」


「そうしましょう。それなりの路銀を頂いているため、リンリバに到着したら船を探しますか?」


「そうだねぇ。でもどこに行こうか? ここが確か中央大陸って場所なんだよね。おぉ、これ梅入ってる」


「はい。今は南方向へと足を向けている為、候補としてはそちら側の大陸になるかと。アル、口元にご飯粒が」


「あ、ごめん。うーん、北大陸にいけばアヤメの故郷に行けたけど……暫く来ないんだもんね。じゃあアヤメの言う通り南側に行く船で一番初めに出るものに乗ろうか」


「問題無いとは思いますが、一応その国のパンフレット等を読んでから行きましょう。治安が悪い国には警戒するべきですから。もしくは乗る際に聞いても良いかもしれませんね」


「ならそうしよう。南側の大陸ってどんな場所だろうね」


 二人はご飯を食べながら南側にある大陸の話に夢中になった。アヤメは書物で得た知識をアルタエルへと伝え、その度彼女は目を丸くする。アルタエルは想像で仮定を述べ、アヤメに呆れられる。


「全く、アルはお父様と同じで想像力が豊かですね」


「えへへ、そうかもしれない。それより話していたらだいぶ暗くなってきたね。そろそろ行こうか?」


「そうですね。海と山に挟まれた場所ですと安全性に欠けていますから。おにぎりの包みは別のポケットに入れておきましょう……ってアル、どうしました?」


 アヤメが顔を上げると、アルタエルは険しい表情をして街の方向を睨んでいた。リュックサックを握る手に力が入っているのを見て、アヤメも警戒心を高めて彼女の視線を追った。


「あれは……」


 すぐに彼女が見ているものの正体に気が付いた。いつの間にか二足歩行の生き物が三匹、海岸に立って踊っていた。人影というには歪な造形をした体躯の影、魔物が跳び上がる度に足元にある物体が微かに動く。

 贅肉がまとわりついた太い手足が彼等の動きに合わせて踊る様を見て、自分の顔が嫌悪感で曇る事をアヤメは自覚した。

 幸いな事に親指程の大きさに見える程の距離が開いており、自分達の気配に気が付かれても容易に体勢を立て直せる距離が開いている。


「人間……では無いようですね。魔物の類でしょう。しかしこちらに気が付いている様子はありません。何かを手に入れて喜んでいるような、遊んでいるような――」


「うん。その何かってさ、あれ女の子だよね?」


「えっ――」


 魔物に囲まれたそれが人であるか、距離が開きすぎてアヤメには判断が出来なかった。辛うじて白い布に包まれた何かという認識が出来る。しかしアルタエルは確信しているのか、アヤメの返答を待たずに砂浜を蹴った。


「きゃっ!」


 巻き上がった砂が雨となってアヤメの頭上に降り注ぐ。

 安易な突進を止めようと目を開いた時にはアルタエルは魔物まであと数歩の所まで跳んでおり、アヤメは慌ててカバンを持ち上げる。


「何を、しているの?」


 普段の明るいは表情とは違う、どこか不気味な笑顔でアルタエルは魔物達へと問いかける。


「ガゥ? ヴ!?」


 いつの間にか背後に立っているアルタエルに魔物達はたじろぐ。三匹で顔を見合せ、再度彼女へと振り返る。


「何を、しているのかな?」


 再度繰り返される質問に魔物達の体が無意識に動いた。

 背筋が震え、頭から熱が引いていく。自分が立っているか、呼吸出来ているか、仲間の無事は……そんな事を考える余裕は無い。人間への底知れぬ恐怖が脳内を支配していた。

 口を開けば舌が切られ、腕を振り上げれば肩から先が無くなる根拠の無い予感。死を彷彿とさせる直感に魔物達は初めて彼女が発しているのが殺意であると気が付いた。


「グググ……」


「どいて?」


 動かなくなった魔物を腕で押しのけ、足元の少女へと手を伸ばした。目立った外傷は無く、全身は濡れている。

 気を失っているのか、体に触れても彼女に反応は無い。


「良かった、ただ気を失っているだけなんだね。あなた達は何もしてなかったんだ。ごめんね驚かせて」


 アルタエルは胸を撫で下ろすと魔物たちへ頭を下げた。殺気という目に見えない枷で動きを封じられていた魔物達は彼女のお辞儀でようやく解放された。

 怯えた表情でアルタエルから距離を置くと、急な斜面を飛び上がり、森の中へと姿を消した。


「アル、お怪我は?」


「大丈夫、この子も無事みたい。体が濡れているのを見る限り、海で遊んでいたのかな?」


「失礼」


 アヤメはそう言うと倒れている少女の首元へと手を伸ばした。すぐにはっとしてアルタエルを振り返る。


「アル、今すぐ木材と枯葉など燃えやすい物の準備をを」


「えっ――わ、分かった!」


 アヤメの鬼気迫る表情に何かを感じたアルタエルは聞くより先に森へと走りだした。

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