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旅は道連れ世は情け  作者: siguhatyou
旅の始まり
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第5歩:「ほらな、二人は旅に出るって言った通りだっただろう?」

 木製のエレベーターの扉か開かれると、アルタエルはアヤメが止めるのも聞かずに外へと飛び出した。


「わわわっ!?」


 好奇心に突き動かされ、足元を見る余裕もなく飛び出した彼女は、足元にあった線路につまずいてそのまま白い砂浜に頭から突っ込んだ。線路はエレベーターの前を横切るように左に伸びている。


「アル!?」


 砂が空へと舞い上がり、彼女の後頭部へと小雨のように降り注ぐ。アヤメはその様子に慌てて外へと飛び出した。幸い彼女が躓いたのは奥のレールだった為、柔らかい砂浜が彼女を受け止めた。


「ぷはっ!」


「ご、ご無事ですか?」


「だ、大丈夫ぅ……」


 顔を上げたアルタエルは自分の躓いた物を振り返る。


「これ……何かな?」


 薄暗いトンネルに目が慣れておらず、アルタエルは手探りで線路の形を把握する。


「どうやら何かを運ぶ時に使うレールのようです。恐らくですが荷物をここまで楽に運んでエレベーターに載せるのでしょう」


「なるほど?これもレアで造られているのかな?」


「見る限りそうですが、海沿いに使用しても問題ない木材なのか気になるところですね」


 体に付着した砂を払いながらアルタエルは暗い通路を見回す。レールの敷かれた道はトンネルの中に設置されており、右にはトンネルの壁、左手にはトンネルの出口が見えており、そこから陽の光が差し込んでいる。


「向こう側が歩道になっているみたいなので、念の為あちらから出ましょう」


「手すりも木材なんだね……」


 光を頼りに二人が洞窟を抜けると眩しさすら感じる程強い日光が二人を照らした。薄暗いトンネルにいた二人は思わず目を細めながら周囲を見渡す。


「わぁ……!」


 目の前に広がるのは白い砂浜に空色の海、水深が増すにつれてグラデーションのように深い青色へ色が染まっていく。その水面を反射した日光が海面にアクセントとして色を加える。

 手を伸ばすと吸い込まれそうな雲一つない青空が二人の頭上に広がっていた。


「なんか、何度か見たことある筈なのに凄く綺麗に見えるね……」


「二人旅を始めたという事で無意識に心機一転していたのでは? 私も少しこの光景に圧倒されています」


「あ、向こうから歩いてくるのってジジさんが言っていた漁夫さんかな?」


 彼女の視線を追うようにアヤメも振り向くと、遠くから長い釣り竿を持った褐色肌の男性二人が歩いてくるのが見える。反対の手には竹を編んで作られた籠を持っており、中から魚の尾が飛び出ている。


「そのようですね。声をかけ――ってもう遅かったですね」


 アヤメが聞くよりも早く漁夫の元へ駆け寄るアルタエルを見て、アヤメもその背中を追う。

 漁夫は二人に気が付くと、釣り竿を持った手を上にあげて挨拶をした。


「よぉこんにちは、二人は確かフォレステスにいた子だな。大きくなったじゃないか」


「こんにちは! それが今日釣ったお魚?」


「うんそうだよ。僕の方が彼より一匹多く釣ったんだ」


「おい、それをわざわざ言う必要はないだろう⁉ コホン、そんな事より二人一緒でマルクスさんがいないって事は……ついに行くのか?」


 マルクスはフォレステスにいる村長の名前である。

 漁夫からの言葉にアルタエルは大きく頷いた。あとから合流したアヤメも二人に会釈をする。


「ほらな、二人は旅に出るって言った通りだっただろう?」


「アルタエルちゃんはともかく、アヤメちゃんもとは予想外だったね。この賭けは君の勝ちか。二人はこの後どうするんだい? 北大陸に行きたいなら残念だけどあと数十日待つことになるよ」


「アヤメの故郷に行ってみたい気持ちもあるけれど、それは大丈夫。一旦近くにあるコールに来ただけなんだ。船に乗るとしたら南側にあるリンリバって街から行くよ!」


「おぉそれは良い。ただ、今からリンリバに向かうとなると日は暮れるだろうね。ご飯とかそういうのは大丈夫かい?」


「おいおい心配しすぎだよ。二人だって準備して旅を始めているだろうから俺達が気にする事じゃないさ。もしリンリバに行くならこのまま海岸沿いを歩きな。多分上に戻って森の中通ると魔物と出くわすからな。まぁ崖から降りてこないとも限らないが」


「君も十分お節介ではないか? あぁ、魔物といっても人間を食べる奴らじゃないから大丈夫。せいぜいからかって遊ぶくらいじゃないかな。俺達人間の方が強いんだぞってところを見せればいなくなるよ」


「親切にありがとうございます。大丈夫、私達も気を付けて旅をしますわ」


「引き留めてしまってごめんなさい! 私達ももう行くね!」


「おう、帰ってきたらいい話を聞かせてくれよ」


 二人は漁夫に手を振ると、横を通り過ぎて歩き出した。その背中を漁夫が見つめる。


「本当に大きくなったなぁあの二人」


「そうだね。お騒がせアルタエルと無口なアヤメなんて呼ばれていた様子はもうないね」


「はは、確かに」

投稿がだいぶ遅くなりました。

しばらくは最新話よりも以前投稿していた話を修正する、必要であれば今回のように話を増やすという作業を行いたいと思います。

マイペース投稿です。

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