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あなたがいる。 SIDE B  作者: 原田楓香
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① 懐かしい場所


① 懐かしい場所


「……間違いない。ここや」

 思わず、声が出た。嬉しさがこみ上げる。

 今回、僕が調査船に乗り込んだ理由の一つが、この場所に来ることだった。

 

 僕の記憶の中に残る、懐かしい思い出の場所。

 ほんの一瞬にも等しい、短い時間だったけど、忘れられない時間をともにした、小さな女の子との記憶。

 その場所が、18年近く経った今もほとんど変わらない姿で、目の前にある。



 今日、僕は仲間たちと一緒に、調査船で地球に到着した。

 太陽系を巡って、星々の現状を調査すること。それが僕たちの目的だ。

 調査期間は、地球時間で3年間。その期間内に、各惑星の現状を調査し、報告書をまとめる。

 この調査船に乗り込んだのは、大学院生3名、学部生4名の計7人。

 全員、同じ大学の宇宙惑星環境学科の学生だ。


 今回の調査対象は、地球だ。

 調査対象として、地球は一番人気がある。一方で、一番『危険』な場所だとも言われている。


 地球は、僕たちの星とほぼ同環境で、文化的な成熟度もよく似ている。生物の姿形や生息状況も、ヒトやそれ以外も含めて同様の進化をたどってきている。

 そのため、僕たちにとって、地球は感覚的にとてもなじみやすく、生活していて不便を感じることが一番少ない星なのだ。それで、『調査に行くならやっぱり地球!』という声も少なくないのだ。


 一方で、あまりにも自分の星に似ているせいで、ここでの生活になじみすぎてしまって、もとの星に帰れなくなってしまう者が、多数出ているのも確かだ。

 僕が知っているだけでも、先輩たちのうちの3割強が、地球への調査から帰って来なかった。(彼らの多くは、地球に定住し、ごキゲン?で暮らしているらしい、との情報もある)


 だから、地球は、人気が高いのと同時に、『危険』な場所とされている。特に、家族や恋人にとっては、もしかしたら、行ったきり、もう永久に帰ってこないかもしれない、そんな不安を抱かせるから。


 幸い(?)、僕には、そんな家族も恋人もいない。


 ただ、僕は、もう一度会いたいだけなのだ。

 18年前のあの日、ここで出会った、小さな温もりに。――――今も、僕の心に灯る、優しい光に、もう一度。

 

 


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