勝てず
この作品は、フィクションです。
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食い気に勝てず、
眠気にも勝てず、
物欲にも、スケベ心にも勝てぬ、
弱き心を持ち、
手際よく、
決してミスせず、
いつも定時で「お先します」
そういう仕事に、私は就きたい。
東に親方がいれば、資材が届かぬと叱られ、
南に部下がいれば、図面と違うと騒がれ、
西に取引先がいれば、資材は搬送済みと言われ、
北に社長がいれば、お前の責任だと聞く耳を持たぬ。
朝にその日の予定を確認し、
あらゆる苦情を受け止め、
皆の体調を気遣い、
飲食を差し入れす。
上司に勝てず、
部下にも勝てず、
取引先にも、役所にも勝てぬ、
弱き立場にしがみつき、
日々頭を下げ、
決して怒れず、
いつも静かに「了解しました」
そんな社畜が、現実の私。
病を持たず、
疲れも知らず、
賢しく、頭の回転も速い、
理想の身体を持ち、
欲は叶え、
決して挫けず、
いつも笑顔で「任せてくれ」
そんな姿は、ただの幻。
食い気に勝てず、
眠気にも勝てず、
物欲にも、イタズラ心にも勝てぬ、
弱き心を持ち、
酒もタバコも博打もやらず、
伴侶もおらず、
いつも職場と家の往復ばかり。
そんな人生でも、楽しんだもの勝ち。
人生一度きり。楽しんだもの勝ちです。
他人に迷惑をかけぬのならば。