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先輩と後輩ちゃん  作者: ゆうなま
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会話劇その2

「お前って、犬っぽいよな」


「犬、ですか。まぁたしかに私は身長が低いので、背の高い先輩からしたら、足元をちょこまか動かれてるみたいで鬱陶しいでしょうが」


「いや、違う意味で言ったんだけど。その前に犬が足元で動くのを鬱陶しいとか言うなよ」


「違う意味とは?」


「いや、なんか人懐っこいし、感情豊かで素直だから」


「え?褒められてるんですか?」


「普通、犬に例える時はほとんどの場合がいい意味で言ってると思うぞ」


「ははあ、そうなんですか。でも何で犬に例えるんです? 犬好きなんですか?」


「あー、まあ好きさ。俺は犬好きだ。実家が犬を飼っててな。それでふと思ったんだよ」


「先輩は犬好きだったんですね。じゃあ私は何犬っぽいですか?」


「何犬、か。うーん・・・フレンチブルドッグ?」


「それは褒めてない! いや、フレンチブルドッグ可愛いですが、この場合、女の子を犬に例えるなら他にもっとあるでしょうよ!」


「だって別に他の犬知らないし」


「柴犬とか!」


「ああ確かにな、でも俺にとっては犬と言ったらフレンチブルドッグなんだ。子供の頃から、何代もフレンチブルドッグなんだよ」


「そうかも知れませんが、町中で見掛けたり、テレビで見たり色々知見を広げる場面はあったでしょう」


「他人の犬なんか興味ないし。俺が好きなのは、実家の犬だ」


「それを果たして犬好きと言っていいものか」


「何でだよ、犬好きと言っていいだろ」


「普通、犬好きと言ったら自分の飼っている犬は当然、他の犬にも詳しかったりするものですがね。あるいは飼って無くても、犬好きを名乗るのならある程度犬種とか知識がありそうですが」


「でも犬が好きな事に変わりはないんだぜ? 実家の犬を、こよなく愛してるんだぜ? これを犬好きと言わず何というのだ」


「犬バカでしょうね」


「じゃああれか? もしお前と俺の間に子供が産まれたとしよう」


「な、何を言い出すんですか!」


「俺はきっと子供を溺愛するだろう。目に入れても痛くないくらい子供のことが好きになるだろう。だけどそれは子供好きでは無いということか?」


「それは親バカですね」


「くそう、わかった。相手が生き物だから悪いんだな。違う例えにしよう」


「子供のことを生き物とか言わないで下さいよ・・・」


「例えば俺は、ラーメンが好きだ。駅前のラーメン屋のラーメンが。何故か人気はないが、俺は大好きだ。帰りにいつもそれを食べる。週に最低三回は通っている。これはラーメン好きと言っていいだろ? ラーメンバカじゃないだろ?」


「あの駅前のラーメン屋ですか? 先輩ってバカ舌なんですね」


「くそ! 俺はどうあってもバカなのか!」


「すいません、今のはノリでつい」


「なんだノリか。良かった。あのラーメン美味しいもんな?」


「いや、普通は一度行ったらリピートしないレベルですよ」


「女には良さがわからないんだ!」


「人気が無いとか言ってたじゃん」


「・・・・」


「まぁ、話を戻して、確かにそれだけ食べ続けるならラーメン好きと言っていいでしょう。先輩は他のラーメン屋とか学食のラーメンとかは食べないんですか?」


「そりゃあラーメン好きとして、この辺り一帯のラーメン屋は制覇したが、駅前以外に俺が二度足を運んだ店は無い。誰かに薦めるなら駅前のラーメンだけだ」


「ははん、なるほど。先輩は基本的にこだわりが強いんですね?」


「こだわりか。確かに、何かに付けてこだわりを出すのが俺かも知れない。が、そもそも好きなモノというのはこだわるということなのではないか?」


「そうですね。好きなモノには少なからずこだわりはあるでしょう。しかし、私的に好きは二つの派閥に分かれると思うのですよ」


「ほほう」


「厳選派と無類派です」


「またカッコいい感じで分類したな」


「先輩は厳選派の傾向にあると思います。対して私は無類派の傾向にあるかもしれません」


「厳選派は、俺の例からして何となく理解できたが、無類派はどうなるんだ?」


「例えば私は、ハンバーグが大好きです。ファミレスに行ったら必ずハンバーグを注文するくらい好きです」


「打って変わって小学生みたいだな」


「うるさいですよ! ただ、やはり店のランクで美味しさに差はありますので、出来ればいいハンバーグを食べたいという欲求はあるのです」


「ん? 出来ればいいハンバーグを食べたいのならば、俺の極端な例を除けば、厳選派とどう違うんだ?」


「自分が極端だと言う自覚があるんですね・・・。まあ派閥に分けましたが好きは好きですからね。実は境界は曖昧なのですが、あえて言わせてもらえば判断基準の差、ということになるのでしょう」


「判断基準」


「厳選派は、基本的に好きなモノを格付けします。いわゆるランキング方式です。好きなモノに対して、こっちの方がいいとか、あっちの方が劣るとかで考えます。だから常に自分の中に、不動の一位だったり、二位だったりが存在して、それを基準に好きなモノを図ります」


「なるほどそんな気がする」


「無類派は採点方式です。自分の中に合格ライン定めて、それより上か下かで判断します。しかも合格ラインは結構低い。大抵のものは合格で、赤点かどうかを重点的に見るかもしれません。一応採点方式ですので、点数の順位は付きますが、厳選派と違って不動の一位は無く、その時のトレンドや気分ですぐに入れ替わります。最近食べた物が一番好き、というパターンもありえます」


「そう言われると、厳選派の方が偏屈に見えるな」


「実際偏屈ですよ。好きの話とは違うかも知れませんが、先輩は変わったものとか、名産品とか興味ないですよね。普通、旅行に行ったら地元の料理を楽しむものなんですが、先輩は普通にチェーン店とか行ったりしますよね」


「まあそうだな。その時食べたいものを食べるのさ」


「興味がないものにはとことん興味が無いという感じですね。流行に流されないとも言えますが、我を通す感じは、協調性の無さを表してる」


「何か辛辣じゃないか!? 二つの派閥と言いながら、厳選派が劣ってると言いたげだな。これは下剋上と受け取るぞ!?」


「すいません。なんだかつい意地悪心が」


「好きな子を虐めたくなる小学生かよ!」


「あう」


「まったく。厳選派はな、一途なんだよ。他の誰でもない運命の相手を求めてるんだ。唯一無二なんだ。無類派とか言って、尻軽なだけじゃないか。そんな人種が本気で何かを愛したことがあるのだろうか!」


「言いたい事はわかりますが大袈裟です。恋愛に例えないでください」


「恋愛には例えてないが」


「言葉のチョイスがいちいち色恋沙汰を連想させるんですよ!」


「まあまあ。好きなモノの話をしているのに欠点を探すのは違うと思うぞ?」


「先輩が始めたんでしょう」


「後輩が始めたんだ」


「そうでした」


「でも、そうか。俺にとって後輩は、厳選された唯一の存在なのだが、お前にとって俺は、数ある先輩のうちの一つでしかないんだな」


「あうう」


「お前はきっと、色んな先輩がいるんだろうな。その時の気分で入れ替えるんだろな。俺と楽しくお喋りしてくれるのも、一過性ということなんだろうな」


「そ、そんなことないですよ。私にとっても、先輩は、先輩だけで・・・ごにょ」


「まあ派閥に分けたからと言って、好きなモノによって意見は変わるよな? だって俺、蕎麦が好きだけど蕎麦なら何でもいいし。学食だろうと有名店だろうと、求める部分は一緒だ。つーか、昼まだだったな。話題に出したら蕎麦食いたくなってきた。おい後輩、行ってみたい蕎麦屋があるんだが、付き合えよ」


「言葉のチョイスが際どいんだよなぁ・・・いいですけど」


「心配すんな奢りだから」


「そんなことでは心配してないです」


「思ったんだが、自分の事を柴犬に例えるのもなかなか」


「蒸し返さなくていい!」


「でも確かにお前は柴犬っぽい顔だよな」


「先輩はラブラドールっぽいですよね」


「ら、らぶ?」


「・・・すいません詳しくないんでしたね」



◆◆

「さぁ、蕎麦だ蕎麦だ。食うぞー」


「蕎麦は蕎麦でもわんこ蕎麦!」


「お前と話していたら思い浮かんだんだよ」


「ワードに引っ張られすぎ!」


「おい、どっちが多く食べられるか勝負しようぜ」


「それは男友達とやってください!」






おわり






後輩ちゃんが勝った。

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