6.もう彼氏面は終わりです
私は結局、隣国王子に嫁ぐことになった。相手はもちろんカイルではない。可愛くて頼りになるアルバートだ。
「アルバートは王様とか興味がないと思っていましたわ」
今はイシュリア王国に帰る馬車の中だ。
実は病の重かった国王様には、真奈美様から受け取っていた回復薬を渡したのだ。病によって体力が削られているところに、結界を張り続ける負担が重なり、治癒が追いついていなかったのだ。
だが、回復薬のおかげでだいぶ体調も良くなり安定したため、ひとまずは報告も兼ねて自国へ帰ろうということになった。
「そう? 好きな相手を手に入れるためには最高の位だからね」
「えっ……まさか、そんな理由でマルシェヴァ帝国の王子になることにしたの?」
「もちろんだよ」
「呆れた! ちょっとこれは婚約破棄よ。マルシェヴァ帝国の皆さまに申し訳ないわ」
「待って待って、落ち着いてよクリスティーナ。確かにクリスティーナを他の男に取られたくなくて、高い地位が欲しいと思ったのは事実だよ。でも、やるからにはちゃんと責任は果たす。そうしなきゃクリスティーナに愛想を尽かされるって分かってるから」
「本当に、ちゃんとやる気はあるのね?」
「もちろん! クリスティーナがいてくれるんだ、どんな困難だって乗り越えられる自信しか無い!」
調子よく宣言するアルバートに、思わず笑ってしまう。
でも、そうだなと思った。
私も、アルバートがいてくれるのなら、きっとどんな困難だって乗り越えられると思う。
だから、アルバートとこれからも一緒に進んでいきたい。
「アルバート、わたくしのそばにいてくれて、本当にありがとう」
私はそっと、アルバートの手をにぎる。
「クリスティーナ……、その、我が儘言って良い?」
アルバートがうるうるとした瞳で私を見つめてくる。
相変わらず可愛い。どんな我が儘でも聞いてあげたくなってしまう。
「ええ、もちろん」
「キスしたい」
「キス?!」
子犬のようなうるうるとした瞳が、いつのまにか熱っぽさを伴っていた。
じぃっと見つめられ、逃がさないとばかりに背中に手が回ってくる。
どうしよう。キスなどしたことがないのに。
「ねえ、ダメ?」
アルバートが顔を寄せて、耳元でささやく。
吐息の熱さに、のぼせてしまいそう。
「だめ……ではないわ」
「本当? 嬉しい!」
アルバートが幸せそうに目を細める。
あぁ、彼は幸せなんだ。
いろんなことがめまぐるしく変わったけれど、私にとっての幸せも、ずっと隣にあったんだ。
お互いがお互いの幸せになれるって、なんて素敵な奇跡なんだろう。
私はそんな奇跡に感謝しつつ、そっと目を閉じたのだった。
【了】
完結しました!
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