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6.俺とクリスティーナ【アルバート】


 俺の幼い頃の記憶はおぼろげだ。そんなうっすらな記憶の中で、母親なのかは分からないが、女の人と何かから逃げるように旅をしていた。


 そして、旅の終わりにたどり着いたのはローセン家だった。あたたかな屋敷で、お腹いっぱいにシチューを食べたのを覚えている。そして、一緒にいた女の人は力尽きたように動かなくなった。泣きわめく俺を、抱きしめてくれたのはクリスティーナだった。


 俺の新しい人生は、クリスティーナから始まったんだ。


 俺が不安になると、すぐに気がついて、大丈夫だよって頭を撫でてくれた。突然現われた俺を、家族だと、自分の弟だと、本気で可愛がってくれた。

 だから、本当は天涯孤独な俺なのに、寂しいなんて思わずにいられたのは、クリスティーナがいたからだ。



 でも、彼女が聖女候補に選ばれてからは、いつも一緒というわけにはいかなかった。寂しくて、ずっと家に居て欲しいと駄々をこねたかったけれど、クリスティーナが必死で頑張っているのを見ていたから我慢した。我慢した分、会えるときは反動ですごく甘えてしまったけれど。



 ずっとクリスティーナの側に居たい。この気持ちは、家族愛だけじゃないとすぐに気付いた。家族愛ならば、兄上が留学してたときも同じように寂しく思ったはずだ。だけど、兄上の時はただ頑張れと思っただけだ。クリスティーナのように身を引き裂かれるような寂しさなど感じなかった。


 もしクリスティーナが聖女候補に選ばれていなかったら、今も普通に姉として思っているだけだったかもしれない。けれど、俺はもう気付いてしまったのだ。俺にとってクリスティーナは特別な女性なのだと。



 それでも、クリスティーナの気持ちを優先させたかった。だから、クリスティーナが決意をして隣国へ行くというのなら、我慢すべきだと思った。結局、実際にクリスティーナがいなくなった屋敷の空虚さに耐えかねて、すぐに迎えに行ってしまったのだけれど。


 幸運にも婚約破棄されていて、クリスティーナは屋敷に戻ってきた。もう他の男のものになることはないのだと安堵していた。していたのに……。



 サンジェムという男が出現した。しかも、年上で、落ち着いていて、俺が噛みついても笑顔でいなしてくる。余裕のない俺と全然違う。男として、敵わないと思った。


 しかも、正式ではないかもしれないが、婚約を匂わせるような雰囲気だった。


「今のままでは、クリスティーナを確実に取られる」


 どうすればサンジェムに勝てる?

 すぐに俺が優位に立つにはどうしたらいい?


 俺は必死に考え、賭に出ることにしたのだった。


 

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