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1.婚約破棄されましたわ


「クリスティーナ・ローセン、君との婚約は破棄だ」


 突然、目の前の隣国王子は立ち上がり、そう叫んだ。

 今まさに、私と王子の婚約パーティーが行われているというのに。


「ええと、理由をお伺いしても?」


 婚約破棄を告げられたショックよりも、何が何だか分からないという驚きの方が大きい。思わず淡々と質問してしまった。


「わたしには心から愛する人がいるからだ。もし結婚したとしても、君を愛することはないだろう」


 私とて、今日初めて会った相手であるこの隣国王子・カイルに恋心も愛情も持ち合わせてはいない。だが、ハイそうですかと私の一存で返事をしても良いのだろうか。これは国同士が決めた婚約なのだから。


 私は隣国のしきたりにならい、単身でこの国へ来ている。送ってくれた護衛もすでに城門の前で別れている状態。つまり、この場には隣国の人々しかおらず、私の味方はいない……と思いきやそうでもなさそうだ。


 困ってまわりに視線を動かすと、みんな必死な表情でダメだと首を横に振る。

 つまり、カイル殿下とは逆で婚約破棄はしないで欲しいらしい。



「わたくしとしては、形だけの結婚でも構いませんが」


 好きでもない人の相手をするくらいなら、形だけで放っておかれた方がそれはそれで楽だし、と思って提案してみる。そちらの好き合ってる同士でいちゃこらして、子どもも作れば良いと思うし。


「すがりつくとは哀れだな。だが、彼女を差し置いて妃を娶る訳にはいかない。彼女が悲しんでしまうからな」


 カイル殿下は鼻で笑うように返事をしてきた。


 再びまわりに視線を動かす。青ざめた顔色でぶんぶんと首を横に振っている。


 そんなに婚約破棄をして欲しくないなら、何か言ってくれれば良いのに。でも、仕方ない。このマルシェヴァ帝国は王家の独裁政治が敷かれているのだ。王が病に伏せっている今、遠くない未来で王座に就くのはカイル殿下である。彼の意志に逆らう、それは反逆者として処刑される危険性をはらむのだろう。


 だけど、本人に結婚の意思がないのに婚約を強行するのもためらわれる。


「ちなみに、お相手はどのような御方なのでしょうか」


 相手が国を支えられるような人物なら、私としては喜んで身をひく。けれど、そうでない場合は、やはりカイル殿下には我慢してもらったほうがマルシェヴァ帝国の民のためにも良いだろう。そう思って問いかけたのだが、カイルは嘲笑するばかり。


「クリスティーナ、わたしのことが諦められないのは仕方ない。そりゃわたしは魅力的だろう。だが、困るんだよ」


「いえ、そうではなく……」


「君もしつこいな。エリーは君なんかよりも遙かに素晴らしい女性だ。可愛らしく、聡明で、わたしに献身的に寄り添ってくれる。まるで聖母のように優しくて強い女性なんだ。自国から用無しで追放されてきたような君とは違う。エリーさえいればこの国は安泰なんだよ」


 いろいろと私に対しての誤解があるようだが、かのエリーという女性が素晴らしいということは分かった。聖母のような女性で、彼女がいれば国が安泰ならば、確かに私はいなくても大丈夫だろう。


「そのような素晴らしい女性ならば安心いたしました。わたくしなど不要というのも頷けます」


「やっと理解してくれたか」


「はい、カイル殿下。では婚約破棄の件、承諾いたしますわ」


 私は笑みを浮かべて承諾した。


 だがその瞬間、パーティー会場のあちこちから、声にならぬ悲鳴のような息遣いが聞こえたのは気のせいだろうか。



新作始めました。

短めのサクッと読めるものですので、ぜひ隙間時間のお供にどうぞ!


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