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婚儀前〜披露パーティにて

○婚儀前


二人の婚儀の準備で、朝から王宮内は慌ただしかった。

フェリシアも朝から念入りに肌の手入れを受け、今はドレスを数人がかりで着せてもらっている。


「お嬢……王太子妃殿下、本当におきれいです」

ライラが涙を拭いながら支度を手伝う。

「まだ早いわよ。それにこれからは『フェリシア』と呼んでくれるとうれしいわ」

一年前、王都で暮らすことになった私に、故郷を捨てる覚悟でついてきてくれたライラ。


「ライラ、これからもよろしくね」

感謝の気持ちを伝える。

ライラは「今から泣かせてどうするんですか」と言いながら、再び私の支度に取りかかった。

(ありがとう、ライラ)



○婚儀のあとのパーティにて


おごそかな儀式も終わり、レオンハルトとフェリシアはバルコニーから、祝福に集まった国民に向けて並んで手を振っていた。 


国民の歓声に笑顔で応えながら、レオンハルトは横にいるフェリシアの耳元に甘くささやく。

「もう離さないから覚悟してね」

フェリシアの真っ白な肌がみるみる赤く染まっていくのを見て、レオンハルトは抑えられない気持ちをグッとこらえる。

(このまま部屋までさらっていきたいな)

このあとのパーティを思うと少し憂うつになったが、笑顔でバルコニーをあとにした。


お披露目のパーティが始まった。

レオンハルトとフェリシアは並んで来賓からの祝辞を受ける。

ひと通りの挨拶も終わり、フェリシアが少し休憩しているところに、兄のフェリックスとミレーユさまが一緒に並んで挨拶に来た。


二人の距離が以前より近いように感じる。

「この度は、心よりお祝い申し上げます」

フェリックスに続いて、ミレーユも祝福の言葉を述べる。

「お二人とも、本日はわざわざお越しいただきありがとうございます」

一緒にいる理由が気になって、ミレーユさまにひそひそと尋ねると、ミレーユさまが少し顔を赤らめながら、前回の婚約披露パーティのあと、手紙のやり取りなどで親交を深めたこと、そして先日、兄が侯爵邸を訪ね、アルバ侯爵に今日のパーティへのエスコートを申し込んだことを教えてくれた。

アルバ侯爵と父であるサルベ辺境伯は、青春時代をともに過ごした旧知の仲だ。

二人の婚約の許可が下りるのもそう遠い未来ではなさそうだと、フェリシアは予感が現実になったことを喜んだ。


パーティも中盤に差しかかり、周囲はダンスをしたり談笑したりと賑やかだ。 

私たち二人の前にはアルマン公爵が陣取り、しきりに話しかけてくる。

アルマン公爵といえば、以前にお茶会でやたらと私に絡んできたご令嬢テレーゼさまの父親だ。

お茶会での私に対する娘の数々の不作法がレオンハルトの知るところとなったようで、その挽回のためか、これまでも顔を合わすたびにやたらと二人の機嫌を取りにきていた。


「いやはや、王太子妃殿下の婚儀でのお姿は光の妖精ごとき美しさでしたが、今はまた月の女神のようにお美しい。まことに殿下が羨ましいですなぁ」

私の全身を舐めまわすような目で見ながら、歯の浮くようなセリフを横にいるレオンハルトに延々としゃべり続ける。

(愛想笑いも疲れてきたわ)

なにか理由をつけてこの場を離れられないかと思案していたとき、レオンハルトが公爵に気づかれないように私の脇の下から腰までを指でスッとなぞった。

「!」

突然あたえられた感覚にバランスを崩したところを、すかさず横からレオンハルトが支える。

「アルマン卿、妻が疲れたようなので、私たちはそろそろ失礼します」

挨拶もそこそこに、レオンハルトは公爵の目の前で私を横抱きにした。


「レオン待って」

私の問いかけには答えないまま、周りの目も気にせず、すたすたと会場をあとにする。

「私のフェイをこれ以上いやらしい目に触れさせたくない」

私を抱きかかえたまま「フェイのことに関しては心が狭いからね」とつけ加えて、部屋までそのまま連行された。

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