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婚儀前日

○婚儀前日


婚儀を翌日に控え、フェリシアは午後からライラと一緒に部屋の片付けをしていた。

明日の婚儀が終われば、フェリシアは夫となるレオンハルトの寝室と一続きになった部屋に移ることになる。

もちろん大半はライラと王太子妃付きの次女たちが片付けてくれるのだが、実家から持ってきた櫛や鏡などの調度品や宝石は母の形見の品のため、できるだけ自分の手で運びたかった。


「お嬢さま!お嬢さま!旦那さまがおみえです!」

ライラの明るい声が室内に響き渡る。

「ライラ、もう私はお前の旦那さまはではないよ」

父であるサルベ辺境伯が「相変わらずだなぁ」と、笑いながら部屋の前に立つ。


「……おとうさまっ!」

王太子妃教育を受けたご令嬢なら、ここで優雅に形式ばった挨拶をするのだろうが、一年振りの再会に感極まった私は泣きながら勢いよく父に飛びついた。

「それじゃあ、せっかくの王子妃教育が台無しじゃないか」

口ではそう言ながら、優しくフェリシアを抱きしめる。

「フェリシア、しばらく見ない間にまた綺麗になったね」


片付けを中断し、ソファーに向かい合わせで腰かけてから、ライラにお茶を運んでもらう。

「婚儀前の忙しいときだから、陛下とレオンハルト殿下にご挨拶だけして屋敷に帰ろうと思ってたんだが、殿下に『フェリシアが喜ぶからぜひ部屋を訪ねてやってくれ』と言われたんだ」

そう言いながら、ライラの淹れたお茶を口にする。

「フェリックスも誘ったんだが、『最後の日くらい親子水入らずで話をしたらどうか』と言ってどこかに行ってしまったよ」

「うれしいわ。明日はお二人でご出席してくださるんですね」

辺境伯という立場上、領地からめったに出ない父が、私たちの晴れの日のために来てくれたことが何よりうれしかった。

「かわいい娘の晴れ舞台だからね」

そう言って、再度お茶を口にした。


フェリシアは、父親に会ったらずっと聞きたいと思っていたことがあった。

正面でお茶を口にしている父親に話しかける。

「お父さまは私が持つ力の正体をご存知だったんですか?」

すると辺境伯は急に真顔になった。

「サルベ家も過去には王族をお迎えしたことがある家だから、王族の血にまつわる聖獣とその力の話は先代から聞いていたよ」

「だからこそお前の力のことは秘密にして守りたかった。現在の王家に加護を受けた者がいない場合、お前が権力争いに巻き込まれるかもしれないからね。実際に、どちらの王子を立太子させるかで揉めていたし」

「その話は殿下からお聞きしております」

「だが結局、王室から婚約の申し入れがあった。何とか断れないかと書状のやり取りをしたとき、殿下から 過去に出逢った不思議な少女の話を伺った。それを聞いて、ああこれがお前の運命だと思ったんだ」


あの日、私が不思議な体験をしたことはライラの母親から父に報告されていただろう。

殿下の話から父はすべてを悟ったのかもしれない。


「まあ、お前は私とシルヴィアの自慢の娘だ。お前なら、ちゃんとやっていける。シルヴィアもきっとお前の幸せを願ってくれているよ」

その愛情に満ちた言葉と励ましに涙が溢れる。

(二人の子どもに生まれて本当によかった)


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