97◆『写映石』◆
「リュードさん、できました!見てください!」
目の下に隈を作った女性陣3人が俺に差し出したのは、昼と夜の合成魔石だった。女性陣はここしばらく、映像を記録し映し出す技術の開発にかかりきりだった。
俺は緊張しながら、小指ほどの大きさの合成魔石を手に取る。昼の魔石の方が、平らに処理された状態で、2つの魔石が接着されている。魔石全体は、魔力遮断コーティングがされており、夜の魔石の側に、指が触れるようの小さい穴、昼の魔石の側には、小さく四角に区切られた穴が開いていた。
「夜の魔石の方に指をあててください」
俺が夜の魔石の側の穴に手を触れると、昼の魔石の側から、四角いスクリーンが空中3センチの所に浮いて出てきた。スクリーンは5センチ四方の大きさだ。そこにレイレとミュカのちょっと疲れた顔が浮かんでいる。
「おぉぉぉおっーーーー!す、すす、すごいーーーーー!!!」
「あとは、成功したのはこれもね」
渡されたもう1つの合成魔石に触れると、彼女達の泊っている宿の部屋だと思われる風景が映っている。きれい好きな彼女達には珍しく、乱雑に散らかった部屋で、失敗した試作や材料や、奥の方に下着のようなものも見える。
「えーっと、これはまだ他の人に見せない方がいいかな」
俺が映った映像の奥にある下着を指さすと、顔を真っ赤にしたレイレに魔石を奪い取られた。レイレのだったのか。もっとしっかり見ておくべきだった。
「いや!すごいね!すごいね!本当にびっくり!これどうやって作ったの!?」
それから女性陣が説明してくれたところを要約すると、こうなった。
(1)合成魔石を、昼の方も夜の方も完全に空にする
(2)魔石は種類を問わず魔力をチャージできるが、夜の魔石から合成魔石の夜の魔石側へとチャージする
(3)神経棒を使って魔石をチャージする際に、魔石同士をつなぐラインに、横から細い神経棒を差し込んでT字型にしたものを使用する
(4)細い方の神経棒のラインを、夜属性を『たくさん』持つクロナが握りこみ目に見たものを、そのままイメージとして送り込む。
T字型の神経棒を開発したこと、魔石を1度空にしてイメージを固定させること、何もかも驚かされた。そして1番驚いたのが、映像の送り込み方だ。魔力チャージのメインラインに、イメージを割り込ませたというが、人間は魔力を放出することができない。
これを彼女達は力技で解決した。クロナは夜属性の魔法使いで、対象となる人間に触れることで幻覚や暗闇を送り込んで見せることができる。その要領で、自分の魔力量『たくさん』をもって全力でイメージを送り込んだ。結果、なんと神経棒をイメージが通って、チャージされる魔力と共に魔石に固定されるにいたったのだという。
「そんなこと、よくできたね…」
「私自身もいろいろな発見があったわ。魔石にイメージを送り込むコツも少し掴めた気がするわ。幻覚を送り込むときって、無意識で相手の魔力というか、人間の体が持つ波みたいのにあわせていたようなの。それを意識したら後は早かったわ」
「すごいね、クロナ、発見だ」
「あら珍しく褒めるじゃない」
「いや、本当に。皆、本当にありがとう!これはすごい発見だよ!本当にすごいんだよ!!」
「リュードさん、あたしもレイレも、すっごく!がんばったんですよ!ね、レイレ!」
「えぇ、何度も魔石が夢に出てきました…」
「本当に、本当に皆、お疲れさま。とりあえず、今日はすぐに皆横になって、ゆっくり休んでね」
俺は、女性陣3人の背中を見送り、その後何度も魔石を起動しては、映像を見返した。前世ではスマホで写真を撮って表示するのは子どもでもできる、当たり前のことだった。でもこの世界で、それを再現できるとは思っていなかった。
画面というのは、おもちゃの構成要素としてとても大きい。携帯液晶玩具に搭載された白黒、またはカラーの画面には、多くの情報が表示され、おもちゃの表現の幅がかけ算的に増す。それに伴い遊びの奥深さも加わり、遊びごたえも増す。
俺は、女性陣に心の底から感謝をしながら、これからの展開に想いをはせた。
◇
女性陣がたっぷりの休憩をとった後、パーティの皆で情報を共有した。できあがったものを見て、テイカーは『ポケットファイア』のときと同じくらい興奮していた。
話し合いの結果としては、この映像が見れる合成魔石を『写映石』と名付けて、本格的な研究は拠点を定めてからとすることにした。女性陣の作った試作は、いまだ粗い原石のようなもので、形状や、効果時間、製造方法、耐久性など、いろいろと詰めていかねばならない。そのためには、旅暮らしで移動の続くの今の生活ではどうしても限界がある。
本当は、今の試作でパーティの皆が映っているものと、レイレが映っているもの2つ、個人的に欲しいのだが、そもそもクロナが映像を込めているので、全員は映れないし、俺だけここでわがままを言ってもしょうがない。
こうして俺達は、次の街へと移動することにした。そして、そこで俺は最悪で最凶なやつと戦うことになるのだった。
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