96◆女性開発者◆
目玉の魔物を埋葬し、一晩休んだ俺達は、荷物を取りまとめて、レイレ達の待つ村へと戻った。予定より早く戻った俺をレイレが嬉しそうに出迎えてくれた。ニコニコと微笑むレイレを見ていると俺も嬉しくなる。その後、パーティで夕食を取りながら、離れていた間の報告を取り交わしていく。
「サラマンダーの魔石が500個越えた?え?狩りすぎじゃない?いや、6人揃って1日で100個くらいだったのに、なんで3人に減ったのに逆に増えてるの!?」
「ふふ、他の冒険者からも、魔石だけを買い取っているんです。北に送られるとは言っても二束三文です。それよりも少しだけ高い価格で私達が買い取ると伝えたら、皆喜んで持ってきてくれてます」
「さすがテイカーだなぁ。やり手だ」
「リュード、もちろん私達もたくさん狩ってるんですよ?」
「そうですね…姫はすごい勢いで狩っていましたね。あれは憂さ晴らしでしょうね…」
レイレが可愛く主張し、その横でハイマンが小さく呟く。
「うん、レイレもありがとうね。皆もありがとう」
「それで、リュードの方はどうだったんですか?」
「うん、実はさ目玉で…」
俺は目玉の発見、解剖、そして魔石が2つあったという事実を、皆に順序立てて説明していく。
「ほぉー。なんともおもしろい魔物がいたものですね」
「で、俺はしばらく複合魔法で再現できないか、ちょっと試してみようと思ってる。これまでのものと違って、全然仕組みがわからないからね。自分で再現できれば、試作とかも作れるようになるかなって。皆は、その間ちょっとサラマンダー狩っててくれない?」
「そのサラマンダーなのですが、私達が来てから、だいぶ狩った数が増えて、もうそろそろ打ち止めになるようです」
「え!本当ですかっ!?」
レイレの情報に、テイカーが動揺する。
「テイカー、諦めようよ。また来年くればいいんだから」
「そうです……ね…。なら明日か明後日には狩り納めですね…」
「テイカー、明日はあたしもがんばるから、元気だして」
「はい。ありがとう、ミュカ」
結局、2日後でサラマンダーは狩り終わりとなり、俺達は合計800個の火の魔石を手に入れたのだった。
◇
馬車で東街道に戻り、東辺境伯領の領都へと進んでいく。俺は荷馬車の中か、荷台の上のルーフバルコニーでひたすら昼と夜の複合魔法を試していた。が、どうにも上手くいかなかった。そもそも夜魔法でイメージを作る感覚が全くわからないのだ。
頭の中で思い描いた絵を、黒のもやもやに入れようとしても、それができない。もやもやは、中途半端に動くだけで像を結ぶような動きは見せない。
それでは難易度が高すぎるのかと、携帯液晶玩具たまごっぴの最初期のもののように、白と黒のドットを、光と黒いもやもやで表現するところから始めようと思ったが、そもそも昼魔法で光のスクリーンを作ることができない。基本である光球までは出すことができるが、その形を変えることが出来ないのだ。
レイレに四角い光のスクリーンが作れるか頼んでみたら普通にできた。もともと光の剣を作るために、形の変化方法を会得していたためだが、話を聞くと光の形を変えるには、魔力量をもとにしたコツが必要だと言われた。
では、スクリーンになっていなくても、せめて近いものでも作れないかと光球に直接夜属性のもやもやを混ぜ込むようにしてみた。できたのは光と影が渦巻く、意味不明な玉だった。見ているだけで人を不安にさせるような気持ちの悪い模様が浮かんでは消え渦巻いている。
「気持ち悪い!」
試しに皆に見せたら、クロナに怒られた。しばらく、ああでもない、こうでもないと模索していたが、完全に煮詰まったので、俺は皆に相談することにした。頼るべきは仲間だ。
◇
「この白黒の玉、改めて見ると、何かを映し出そうとがんばっているようにも見えますね。リュード殿の夜属性が『ふつう』か『たくさん』なら安定できるのでしょうか」
「イメージの断片でも映し出せればいいんだけどねー。正直、そもそも俺のイメージが反映されているのかどうかもわからないんだよね。やり方の見当もつかない」
「リュード、先日の昼と夜の合成魔石を使って、違った検証はできないでしょうか?」
サラマンダーの季節が終わったことで一時期落ち込んでいたテイカーも、もう復活している。
「合成魔石かー。あれで何かを写すことができるかを検証した方が早いかなー。もう、複合魔法の手応えがなさすぎて、どうしようかなって思っていたんだよね」
「っていうか、リュードさん、その見たものが表示される仕組みができたら、いったい何を作るの?」
「いやー、いろいろ夢は広がるよ。一番簡単なのは、ペンダントとかでさ。そこに奥さんとか恋人とか仲間の姿を記録しておけば、いつでも見れたりするよね。あとは、なりきり武器だってもっとかっこよくなるし、それに…」
とここまで言ったところで、女性陣の目がキラキラ輝き始めた。
「それ!そのペンダント!それ作りましょう!なんとしてでも!」
「いつでも好きな人の…素敵すぎます!」
そこから、女性陣を中心に、かつてないほど様々な意見が飛び出てきた。試してみる価値のありそうな意見も多くあった。その勢いから、俺は女性陣に試作も開発も、まるっとまかせることにした。
前世において玩具業界では、女性の企画者・開発者は多かった。女児玩具以外に、センサートイや、かわいいキャラ、雑貨など女性のセンスが活かされる場面が多いからだ。
そして俺の知る限り、女性のおもちゃ屋、企画をする人にはパワフルな人が多い。大酒飲みで、記憶をなくしては翌朝植え込みで起きることの多かったIさん、椅子の上に胡坐をかいて、煙草をくわえてモニターを睨みながら企画仕様書を作っていたYさん、いかに自分の考えたものが可愛いかを数時間かけて説得しにきたKさん(説得された)。自費で何百万もかけて工場に発注して作ってしまったオリジナルキャラのぬいぐるみ(大量)を売り込みに来たMさん…どの人も自分の作るものに込めた想い、熱量は異様に高かった。
中には昼休憩として会社を出てパチンコ屋に行き、半日帰ってこずに夜になってから猛烈に仕事する人や、何日も帰宅せず会社に泊まり込むため、香水をつけまくって匂いの塊になっているとか、そんな少し良くないベクトルの人もいたが。
今回のレイレ、クロナ、ミュカに、俺は同じような熱量の高さ、盛り上がりを感じた。こういうときは、変に口出しも、ガイドもしない方がいい。その方がいいものができあがることを、経験上俺は知っている。材料を渡して、作り方を教え、後は好きにやってもらうことにした。煮詰まったり、何か進展があったら言ってくるだろう。
女性陣が、基本そちらにかかりきりになったので、男性陣だけでギルドにいき依頼を精力的にこなす日々がしばらく続いた。
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