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93◆リトルサラマンダー◆



王都と東辺境伯の領都ユーガッズを結ぶ街道の半分ほどまでをゆっくりと進んできた俺達はガグロムという町に泊まっていた。ここも相変わらずのレイレ歓迎フィーバーだ。そのガグロムの町の冒険者ギルドで魔物の情報を2つ聞くことができた。


 1つは火属性の魔物。リトルサラマンダーと呼ばれており、50センチほどの大きさで、ガグロムの街から南に2日下った火山地帯にいるらしい。強くはないが、燃える痰を吐いて獲物を焼き殺してから食べるという独特の習性を持っている。1年に1回、大繁殖をしては方々に散ろうとするらしく、山火事の原因になったりすることもあるそうで、ちょうど数が増える今の時期は、中堅冒険者が小遣い稼ぎに狩りにいくそうだ。リトルサラマンダーの燃える痰は粘着質のため下手をすれば大火傷を負うこともあるらしい。


 手に入る素材は、耐火性に優れた皮が鍛冶屋の手袋やエプロンに使われることが多い。また魔石は火属性で北の辺境領に送られるらしい。冒険者や兵士が、火の魔石をポケットに入れておいて、手を突っ込めば熱を発して指先を温まることができるからだ。だが、実際には冬は魔物も大人しくなるし、魔石を使わなくても温めた石を布にくるんだカイロを使うのが一般的なので、安く買いたたかれるのが落ちのようだ。


 俺達の未来のヒット商品『ポケットファイア』のためにも、ちょっと多めに手に入れておきたい。狩りまくりたい。狩りつくし…てはまずいから、少しだけ残して狩りまくりたい。繁殖してるなら好都合だろう。


 もう1つは、前世でいうところのUMA、未確認生物で噂程度の話だった。目玉の形をした魔物がいるというものだ。目撃情報があったのはリトルサラマンダーのいる火山地帯の少し先で、その目玉の周囲は景色が歪んでいたという。


「これは行くしかない。特に、」


「リトルサラマンダーですね!」


 興奮したテイカーが後を継ぐが、違う、もう1つの方だ。いや違ってはいないが、俺の興味は目玉の方が強い。景色が歪むって、いったい何をしているんだ。どういう仕組みなんだ。そもそも目玉の魔物ってなんだ。前世でも遊んだテーブルトークPRGとかでは、目玉の気持ち悪い魔物がいたと思うが、そういう系なのだろうか?今まで出会った魔物は、基本野生生物の延長にあるようなもので、目玉だけとか明らかに異質なものはいなかった。すごく……、そそられる。


「よし、行こう!」


 一応、他のメンバーにも確認したが誰も異存はなかったので、俺達は準備をして2日後、ガグロムの町を出た。





 ガグロムの町の近くの、街道から外れた細い道を荷馬車で進むこと1日半、風の中に硫黄の香りが混じってきた。さらに進むと、赤茶けた複数の山が連なった火山地帯の手前にできた村へと着いた。この村は、付近から硫黄を採る人や、稀に見つかる宝石を狙う山師、リトルサラマンダーの討伐にくる冒険者などが利用する村だ。ちなみに硫黄は皮膚病などの薬の原料になるそうだ。


 2軒あるうちの高い方の宿屋に空きがあったのでそこに泊まることにする。食堂は併設されておらず村に1つだけある大きな食堂で、俺達は情報収集がてら食事をとった。


 この村の冒険者達も、レイレのことを当然知っていた。俺達に挨拶をしてきたり、声を掛けてくることはあれど、それ以上絡んでくることはなかった。


 俺達は酒場にいた全員に一杯おごって情報を募った。いい情報くれたら2杯目もおごる。リトルサラマンダーは、よく狩られていることもあり狩り方以外にも、生息場所の情報もすぐに集まったが、目玉の方はたいした情報はなかった。


「あぁ、目玉かぁ。2回ほど見たことあるなぁ」


「それはどこで?」


「双子はげ山の右から回った奥の森だぁ。ちっちゃい目玉で、うねうね動いて気味悪くてよ。なんかもやもやしたもんが、目玉の周りで動いててよ。悪いことは言わねぇ。あんな縁起でもなさそうな魔物放っておいた方がいい」


「ありがとう!お礼に肉と酒をお代わりしてくれ!」


 飯を食べに来ていた村の狩人から有力な情報を得ることができた。俺は狩人に礼を言って、追加の酒と飯を頼んだ。





 翌日。それぞれの魔物の情報は得たが、まずは『スタープレイヤーズ』全員でリトルサラマンダーの狩りに行く。


 岩だらけの地面のあちらこちらに、大小様々なサイズの赤いイグアナがいた。大きいものは1.5メートルはある。リトルサラマンダーは、火の痰を吐くときに喉と胸の付け根のあたりをプクーッと膨らませる。空気を取り込んで、その空気の力で火の痰をペッと吐き出すのだが、この痰のスピードが想像よりもだいぶ早く驚いた。体の動きが遅いのと顔の向いている方向にしか飛ばないので気を付けていれば大丈夫だ。


 狩りのポイントは、濡らした木の盾で火の痰を受けつつ、そのまま前進してリトルサラマンダーを盾で地面に押し付けたまま、ナイフで頭部をきっちりと刺すことだ。このとき、喉元をうっかり刺したりすると、炎の痰がナイフに着いたり飛び散ったりして大変なことになるので注意が必要だ。


 リトルサラマンダーをさばいた第一印象は、「なにこれ、熱っ!」だった。50~60度はある高い体温をしている。喉の奥に痰袋みたいのがあって、中にどろりとした粘液状の痰の素が入っている。痰の素の中には炭酸飲料のように細かい気泡が入っていた。気泡がはじけると、中の揮発・可燃性のガスが空気に触れて発火する仕組みだ。


「すごいな~~、こうやって燃える仕組みなんだ!」


 俺は燃え上がって高温になった痰を木の棒で突きながら笑顔をうかべていた。前世で俺が特に好きだったモンスターを狩るゲームは、モンスターの生態や攻撃の仕組みを、生物として本当にいそうな設定で考えており、それがとても新鮮で面白かった。ゲームにはまりまくった俺は設定資料集も買って読み倒していたが、それと同じような生態や仕組みを目の前にして感動していた。


 ちなみに魔石は、胸の中央、肺というか気管支が枝分かれしたところに小指くらいの大きさのものが埋まっていた。薄い赤色の火属性だ。


 昼に1度村に戻って昼飯を食べ、夕方まで狩りを続ける。その日、俺達が狩ったリトルサラマンダーは合計で100匹近くになった。テイカーが狩った数が一番多い。たぶん金に見えているのだろう。


 ちなみに100匹狩ってもまだ余裕だそうだ。一応小さいのはまだ火の痰も吐けないので狩らないようにしているが、これからまだまだ増えるらしい。


 夕食後、それぞれが好きなものを飲み、くつろぎながら皆で話をする。


「ということでさ、『スタープレイヤーズ』を2つにわけて、俺は目玉の調査、残りはここでリトルサラマンダー狩りにしたいなと思ってるんだけどどう?」


 俺が提案をする。


「皆で目玉探しに行ってしまうと、その間サラマンダーが狩れなくなりますね。サラマンダーは今の時期だけのようですし、それは俺は許容できませんね」


 テイカーが予想通りの反応を返してくる。


「うん、本当は俺1人で、4~5日間くらい目玉を探してこようと思ったんだけど、さすがに俺がソロで探しに行くのはよくないかなって。だから申し訳ないけど、もう1人か2人、一緒に来てもらえたらと思うんだ」


「リュードも自分の立場をようやく理解したのね。私はお役目もあるから、リュードの方に行くわ」


「あ、じゃあ、私も行きます」


「姫が行くなら私も行かねばなりませんね」


「え、それだと…」


 クロナに先を越されたレイレが慌てて言うが、ハイマンが一緒に行くと宣言する。


「レイレ、ごめんね。今回はこっちでサラマンダー狩っててもらっていいかな?レイレはサブリーダーだし、パーティ分けるとなれば、しょうがないと思うんだ」


「そうですね……」


「そして今回、できればミュカに一緒に来てほしいんだ」


「あたし?どうして?」


「攻撃力が一番高いから。こっちのサラマンダーの方はでかいやつとか、強いのもいなさそうだから大丈夫だと思うけど、森の方で強いのに出くわしたら嫌だなって。あと、弓の腕もあるからね」


「ほほー、頼りにされているってことですね。了解、任されたよ!」


「レイレ、帰ってきたら何か埋め合わせするからね」


「わかりました。そのかわり期限はしっかりと決めましょう。往復で1日、向こうで2日でしょうか?それで帰ってこなかったら探しに行きますから」


 何気に1日縮まっているがしょうがない。まぁ実際粘って見つかるかどうかもわからない。


「了解。じゃあ、明朝出るからクロナとミュカは準備しておいてね」


 こうして俺達はパーティをわけて行動することにした。





お読みいただきありがとうございます。

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☆評価、ブックマーク、感想いただけましたら嬉しいです。

どうぞよろしくお願いいたします。



今日の/明日の、あなたに、ちょっといいことがありますように。

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