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87◆国王様となりきり武器◆



 温泉で羽を伸ばしまくって、ようやくカプラードに帰ってきた俺達を待っていたのは、国王からの召喚状だった。


「え、どういうこと?」


「この街の調査員からもらった伝言をリュードに伝えるわね」


「うん」


「『おい、リュード。おもしろそうなものできたら送れって俺は言ったよな。お前いつになったら送ってくるんだ。むかついたから大至急、王都に来い』だそうよ」


「…えぇ、そんなんで呼ぶの?」


「あのね、リュード。私、前にもあなたに言ったけど。普通は国王陛下から何か作って送れって言われたら、真っ先に作って送るものなの」


 クロナ以外の皆がしきりに頷く。


「王国調査室の私の上司からも、『もっとうまく誘導しろ、俺が叱られたじゃねえか』ていう伝言を、私ももらったわ」


「わかったよ。ということは、さすがに今回は何か渡さないと怒られるよね?」


「当たり前じゃない!!」


「じゃあ、しょうがない作るか……」


「リュード、あ、相手は王様なのですよね?」


「リュード殿、何を作る気ですか?もしかして、今から作るのですか?」


「時間もないからね。移動しながら作るとするよ。俺は荷馬車に籠るから、皆申し訳ないけどごめんね」


「いや、ごめんとかではなくてですね。リュード、そんな適当に作るものでは…」


「あぁ、大丈夫、細かい作業は馬車の中ではしないから。宿屋ではちょっと根詰める作業にはなるけど、夕ご飯は皆で食べるから、安心して」


「「「「「そういう心配じゃない!」」」」」


「よーし、じゃあ、材料買いに行くかなー。あ、スケッチも描いて発注だけ先にしなきゃな。出発は3、いや4日後になるかな?あ、そうだ、クロナ、王家の宝剣ってどんなタイプのものかわかる?」





 16日後。季節は春の8日になった。召喚状が届いたのが冬の85日で、その3日後の88日に俺達はカプラードを発った。春夏秋冬は各90日ずつあり、冬の終わりに、次の春まで何もしない5日間がある。


 俺達はこの5日間も、ゆっくりと移動に費やしつつ王都へと向かった。ちなみに発注していた2台目の馬車も完成しており、今回から使用している。女性陣専用となった荷馬車に、レイレもクロナもミュカもとても喜んでいた。当然、男子禁制だ。


 開けて春の9日。俺達は王城の一室にいた。


「リ、リュード、本当にやるんですか?」


「むりむりむり、目立つの好きなあたしでも、さすがに今回は無理!」


「国王陛下の前で…ぶくぶくぶく」


「リュード殿、テイカーが白目むいて泡吹いています。今一度!考え直してください!」


「皆、往生際が悪いなー。ここまで来たら、やるしかないし、下手に恥ずかしがったら、かえって不興を招くよ」


「私をお家に返して…」


「大丈夫だって、国王陛下と思うから緊張するんだよ、なんか漁師の元締めの人だと思えばいいよ。実際そんな感じだし」


「「「「「不敬にもほどがあるっ!」」」」」


 さすがの俺も多少緊張はしているが、ここまで来たらしょうがない。後はやるしかない。前世で聞いた話でが、某大手企業の新キャラ、新商品の社内プレゼンでは、女児玩具担当の中年男性が並居る役員の前で、ノリノリでかわいい呪文を唱えながら、ステッキみたいな女児玩具の試作を振り回してプレゼンしたりするそうだ。だいたい似たような感じだろう。たぶん。


「国王陛下、入られます!」





「我が鉄槌を喰らえ!アースクェイクメイス!」


「あたしの弓は!全てを貫く必中の弓!テンペストボウ!」


「私の短剣は、音もなく影もなく悪を斬る。宵闇のダガー!」


「竜から生まれたわが剣を見よ!ドラゴニックソードッ!」


「私の双剣の舞味わうがいい!花剣カフレ!リサール!」


「俺のメイスは、この世の全てを砕く!カオティックメテオハンマー!」



 俺達6人がポーズを決めると、ソファの上で、両手と両足を打ち鳴らしながら、漁師の元締めおじさんが大興奮して喜んだ。後ろに控えた宰相も目を見開いている。


「うぉおおおお!なんだそれ!なんだそれ!あっはっはっはっは!かっこいいな!かっこいいな!」


「いかがでしょうか、国王陛下」


「これいいな!俺に売らぬか?」


「そうおっしゃって頂けるかと思いまして、国王陛下専用の剣を作って参りました」


「ぬ、叱りつけようと思っておったが、こんなかっこいい武器を、しかも俺のために作ってきたのなら、許そう。見せろ」


「は、こちらにございます」


 俺はかたわらに置いた長方形の箱を取り出す。本来であれば、いかなる物でも直接手渡すようなことはあり得ないし、そもそも武器となれば、翻意ありと捉えられて縛り首になってもしょうがない。


 俺は自分達のなりきり武器はもちろん、今回国王に贈る武器も全て事前に見てもらい、刃も重さもなく、武器としては弱くて、使い物にならないことをちゃんと確認してもらっている。


 それでも『スタープレイヤーズ』の全員を連れてきているので、万が一を考えて国王の後ろには、以前に戦った近衛騎士団長を筆頭に近衛騎士が数人立っている。ちなみに、俺達の武器を見ている近衛兵達は、全員目をキラキラさせていた。やっぱり男は武器が好きなのだ。


 国王は箱を奪い取るように受け取ると、開けて中の剣を取り出した。


「おぉ…」


 クロナから聞いた、王国の宝剣の情報をもとに作った、刃渡り80センチほどの真っ直ぐなロングソードが出てくる。


 柄は金色で、剣身は薄金色だ。剣身の中央部分には装飾を入れてあり、剣身の根元部分は、音の鳴る笛の仕組みと魔石を組み込んでいるため、小さな箱状になっている。握りの部分には、昆虫の神経を乾燥させた粉末を材料に作ったタッチセンサーが組み込まれており、剣を握ることで音と光が起動するようになっている。ポンメルと呼ばれる柄頭、持ち手の末端にも仕掛けを施しており、柄頭を90度回転させることで、電源のオンオフとなる。


「では、国王陛下、柄を握ったままポンメルを回してください」


 国王が、握ったまま柄頭を回すとピィィィィイイインン…と澄んだ高音が鳴り響き、剣身が根元から赤、青、緑、黄色、オレンジ、紫、白と7色に光っていく。


「おぉ!おぉーーーっ!なんだこれはっ!!すごいな!!すごいぞ!!」


 国王が子どものようになって、何度も剣をオンオフしては笑っている。派手なものが好きそうかと思って、光る色の数を増し増しにしておいた。ともすれば縁日で売っているメイドインチャイナのたくさん光りゃいいだろ的なチープな玩具にも見えるが、気に言ってもらえたようだ。


「国王陛下、決してそれで何かを叩いたり、斬ったりされませんよう、お願いいたします。実戦のように使えば、一瞬で砕け散りますので」


「おう、わかった」


 国王の表情が変わったのは、俺の次の説明だった。


「もし、その剣の光と音が出なくなりましたら、この棒を、剣身のその穴に差します。その後で、適当な大きさの魔石を棒の先に押し当てれば、中の魔石に魔力を充填できます」


「おう…」


「どうかされましたか?」


「リュード…。また随分な技術を開発したな。魔石を使ってこのような光や音を出す技術もだが、さらに魔力の充填をできるだと」


「はい」


「以前お前に話したこと、覚えているか」


「はい、私の技術の継承ですね。後ろにおりますのは、私がリーダーを務める冒険者パーティー『スタープレイヤーズ』です。彼等には全員、技術の内容、製造方法、全てを伝えております。将来的には、私達で商会を立ち上げる予定です」


「そうか。わかった。第1段階はクリアだな」


「第1段階…ですか?」


「そうだ、技術を残すこと。ではその次は?その技術を国、民のためにどう活かすかだ。お前の所で留め置くのも限界があるだろう」


「そうですね。例えばですが、布箱というものがありまして…」


 俺は布箱を取り出して見せつつ、カプラードの街で、服飾店『スモールラック』に製造販売権を認めた話をした。


「というような感じで、技術も段階を分けて、私達の信頼のおける商会に卸していくことを考えています。ただ、今回の技術というか基幹となる材料とそれの扱い方ですが、実はかなり単純なものです。一度広がってしまうと、もう制御はできなくなります。いずれは、それでもいいと考えておりますが、今はまだ……」


「うむ、そこまで考えているならいい。リュード、お前、その布箱の技術、何か他に応用が利くなら国に売れるか?」


「実は『マギクロニクル』も同じ材料を使っています。なので、カードにしたもの、箱状にしたもの、着せ替え人形以外ででしたら大丈夫かと思います」


「ふむ何ができるかを含めて、宰相ヴァルドと1度話し合っておけ。ヴァルドいいな?」


「御意」


 こうして俺達のなりきり武器のお披露目会は無事に終わった。






お読みいただきありがとうございます。

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