57◆冒険者パーティ『プレイヤーズ』結成◆
テイカーから、詳細を詰める打ち合せを、すぐにでも行ないたいと言われ、翌日にはエルソン男爵邸で部屋を借りて打合せをした。
「それでリュードさん」
「あ、ちょっと待って、テイカーって幾つなの?」
「俺は今年の秋で19になります」
俺より1つ年上だった。ちなみにクロナはそのもう4つ上、23歳だったと記憶している。もちろん、クロナにここで聞き返すようなことはしない。この世界での女性の結婚適齢期は18~22歳で、話題にしてはいけないネタだとわかっているからだ。
「リュードでいいよ。年上だけど、俺もテイカーって呼ぶし」
前世の分は加算すれば、俺の方がだいぶ年上になるが、そこは考えない。
「わかりました。ではリュード、パーティの共有財産について話をしておきたいと思います」
「えっと、その前に、最初に説明したいことがある」
俺は、俺の旅の目的について話をした。俺が思う、俺の楽しいこと、それはおもちゃや、遊びを作ること、広めること。作ったものの事例を交えながら話をする。
「リュードの跡を追いながら、ずっと思っていました。この人何をやっているんだろうと。ようやく納得がいきました」
ナチュラルな笑顔で言われたが、確かに知らない人から見たらそうだろう。明確な旅の目標を持たず、金にもならない魔物をわざわざ退治してまわって、町にこもっては研究や試作を繰り返している。そういう旅や動き方をしている人間もほとんどいないはずだ。
もう1つ大事なことも話した。俺の金に対する考え方だ。俺は前世のときから、金に対しての認識が甘い。別に実家が金持ちだったり、給料をたくさん稼いでいるわけでもなかった。俺にとって金とは自分が生活でき、興味のあることに手を出せる分の余裕があればよかったからだ。俺にとっての優先順位の1番は、俺が楽しんでいられること、おもしろいものを作ることだけだった。旅行や、出費のかさむ趣味、ブランド品や車、別荘やクルーザー…そういったものには興味もなかったし、派手な生活もしていなかった。
俺は、この世界に生まれて、何もかもが前世の日本とは違うと思い知らされた。怪我は教会で直してもらえるが、病気は難しい。保険制度もなく、薬、しかもちゃんと効果のあるものは高い。旅に出れば、安全を確保するためにも護衛を雇ったり、きちんとした宿に泊まるなど金は必要だ。おもちゃを研究するのだって、素材や器材の購入、職人への依頼料、研究している間の生活費が必要だ。
冒険者になってから、より怪我や安全に関してシビアにならざるを得なかった俺は、『マギクロニクル』の開発にあたり、駄目元でエルソン男爵と交渉をしていた。
本来であれば、貴族は商人でもない平民の俺と交渉などしないものだが、自分の騎士の息子であり、啓示を受けたものであり、そして『マギクロニクル』が引くに引けない状態になっていたため、エルソン男爵は快く応じてくれた。その結果『マギクロニクル』の売上の1%が成果報酬として俺に支払われることになった。現時点で20万リムを越えているし、今後も増えていってくれる。北の辺境伯は大迷路の報酬として20万リムくれたので、現状、俺の資金は40万リムは優にある。前世日本での金額に換算するなら2億円くらいになるだろうか。おかげで、俺は金を気にせず、おもちゃ道を進んでいける。
とは言え、その金は、俺の、俺のおもちゃ道のための金であってパーティのものではない。パーティを組むことで、旅する上での俺の安全が担保されるのはあるが、だからと言って全部俺が出すのだと、雇用関係でしかなく仲間、パーティではない。そういったことをテイカーに説明した。
テイカーは、「リュードの言うことは全くもって、その通りです」頷きながらパーティの共有財産や分配、考え方を話してくれた。テイカーの基本的な考え方に異存はなかったし、俺自身も納得できたので、俺は最初にプールするための金を出した。テイカーも続いて金を出す。
「クロナはどうする?」
俺は、クロナにも改めてどうするか聞いた。王宮調査室として行動を共にしているが、俺はクロナも仲間だと思っている。今後も一緒にいるなら、パーティの発足にあわせて共有財産に参加してはどうかと思ったのだ。ある意味、正式に仲間になる区切りとも言えた。ちなみにクロナの事情はテイカーにも説明してある。
「私ももちろん、出すわ」
「もし、足りないとかだったら、国からもらった準備金の残りをあててもいいけど?」
「大丈夫よ。そして、これは国ではなくて私の選択よ。だから私のお金を出したいの。これは私自身の未来への投資でもあるのよ」
「そか、じゃあ、クロナも改めてよろしく」
「ええ、これからもよろしくね、リュード君」
「クロナもリュードでいいよ」
「了解よ」
こうして俺達はパーティを組んだ。テイカーは半年のお試しとしてあるが、俺は既にテイカーを気に入っていた。根が真面目だし、自分の目的も持っている。俺に対しての理解もある。大丈夫だと思えた。
「ねぇ、リュード、パーティ名はどうするの?」
「そうか、パーティ名か。クロナ、テイカー何かいいのある?」
「ないですね」
「ないわよ、何かいいのを、リュードが考えて」
困った。
◇
数日後の早朝、王都の門で俺とクロナはテイカーを待っていた。新たな素材や発見を求めて出発するためだ。少し待っていると、パロに乗ったテイカーが現れた。俺の荷馬車があるので、てっきり徒歩で来るものと思っていた。
「テイカー、どうしたの、そのパロ。」
「最初からリュードにおんぶにだっこでは、どうかと思いまして。自分の乗るパロくらいはと思って購入しました。何かあったときの予備にもなりますし」
「了解、まぁでもパーティだし、いつでもこっちの荷馬車に乗っていいから。中は俺がいろいろ改造しているから、かなり快適になってるんだ」
「おぉ、それは楽しみです。道中その工夫を聞かせてください」
「リュード、それで、今回は?西に向かうとは教えてもらったけど、目的は何?」
「いつもの通り、現地調査と素材集めだけど…今回の目的は迷宮!迷宮に行ってみたいんだ」
「はぁ~、やっぱりそうだと思ったわ。私としてはあまり危険なところに行かせたくないのだけど」
「いやー、昼と夜の魔物がいるなら、その素材や魔石はぜひとも欲しいし、どんな特徴があるのかとか見ておかないと!」
「それで、パーティ名はどうするの?」
「そうそう、いろいろ考えたんだけど。『プレイヤーズ』はどうだろう?」
「プレイヤーズ?」
「うん、遊ぶ人、参加している人、競技する人、賭けている人…、それぞれで、自分にあてはまる意味は拾ってもらうけど、一番は“楽しむ人”かな。楽しんでいる人達が集まったから、『プレイヤーズ』。どうかな?」
「いいじゃない、私は素敵だと思うわよ。『プレイヤーズ』」
「うん、俺もすごくいいと思います」
2人とも笑顔で認めてくれた。
こうして俺達『プレイヤーズ』は王都を後にした。
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