56◆仲間との出会い◆
年が明け、春の15日を迎えた。あと30日ほどで俺は18歳になる。俺は今、王都の冒険者ギルドにいた。
グリフォンバスターになったことで、俺の名は一部で有名になった。その結果、王都のギルドから「うちで登録してくれないか?ランクはあっという間にすごい上げちゃるから」という身もふたもない打診が来た。ギルドとしては、自分のところに凄腕が登録しているという箔が欲しいらしい。俺は生まれた町でしか冒険者登録していないが別に複数していてもいいと言うので、それならと応えることにした。
そして数回依頼を受けただけで、異例の早さのランクアップを果たし、今日、俺のプレートは星4になった。星3までは中堅、星4になると手練れと言われ、星4からはプレートも金属になる。
ちなみに、その数回の依頼は、ほぼお使いのみだった。王都近辺は騎士団や兵士が頻繁に見回っているためモンスターはとても少ない。そのため討伐系の依頼もあまりなく、近隣の町や村への宅配系の仕事が多かった。宅配数回で星4ってまずいだろうと思うが、上げてくれたのはギルドだから、しょうがない。
ちなみに王都のギルド職員は、俺が王都に住んでいると勘違いしているが、俺はそれを否定も肯定もしていない。なので、長らくいなくなっても、文句を言われる筋合いはないと思っている。
金属のプレートを受け取り、さて帰ろうかとカウンターを離れた俺とクロナに近づく者がいた。クロナは一応俺の護衛もかねているので、こういうとき、自然に半歩前に出て、相手が何かをしようとしても初動でつぶせる位置に動く。女性に守られるなんて…とは思わない。対人においてはクロナは俺よりも強いからだ。
「すみません、リュードさんでしょうか?」
「そうだけど。そちらは?」
「俺は、星3の冒険者でテイカーと言います。リュードさん、俺とパーティを組みませんか?」
◇
俺達は、ギルド近くの食堂に移動していた。
「改めて、俺がリュードだ」
「私はクロナよ、リュード君の仲間よ」
クロナと最初に会って、王都から旅立つ前。俺はクロナと2人きりになるのが嫌で、ギルドで仲間になる人間を探していた時期があったが、その時は結局いい人材がおらず諦めていた。ちなみにクロナと2人きりになるのが嫌だった理由は、お色気バシバシのクロナに耐えられるかわからなかったし、そもそも手を出したら国からつけられたクロナという紐が鎖になるように感じていたからだ。結局クロナの方で、俺のその気持ちを察してくれて、仕事としてのほどよい距離感をとってくれるようになったので、今は平気だ。
「で、テイカーだっけ?パーティって?」
「はい、まず簡単に紹介を。俺は王都の中堅商会の3男として生まれました。商会は一般的に長男が継ぎ、次男やそれ以降は、部門や支部をまかされるものですが、俺はより大きなことをしたいと思い、その芽を探すため冒険者になりました」
テイカーは背が高く、やせた体型をしている。腰には大きめのメイスを差しているので、それを使いこなせているのなら、ひょろりとした体型のわりに、力も強く戦えるのだと思う。
「それで?なぜ俺に声を?」
「最初に聞いたのは、リュードさんのグリフォンバスターの話です。俺は商売の芽であるかもしれないと感じたら、それを細かく調べます」
「うん、で?」
「リュードさんの痕跡を追いました。エルソン男爵領にも、北にも行きました」
「まじか」
ストーカー規制法とかないので、人を追跡することに規制はないが、そんな人間はほとんどいない。理由は、皆そんな暇じゃないからだ。
「バルクアクスの街で、北辺境伯に何か作っていたと聞いています。そして今、貴族達の間で話題になっているカード、おそらくその原型のこれ」
テイカーが懐から取り出した1枚のカードは、俺が感謝祭で最初にトレカだ。この世界での初の商品だ。
「失礼を承知で言います。俺はリュードさんが金になると思っています。リュードさんのような人を探すために冒険者になることを選択しましたが、それが正しかったと思っています」
「ずいぶん、俺を買ってくれているけどテイカーは何ができるの?金になるかどうかで言われたら、確かになると思うし、現になっている。でも、それにテイカーを加えたいと思う理由が俺にはないよね?」
「俺は、金の管理と、将来的な商会と店舗の立ち上げ、あと共に戦えます。リュードさん、クロナさんほど強くはないでしょうが、地方も回っていますので、実戦経験は王都の冒険者の中でもかなり積んでいる方だと思います」
俺はテイカーを面白いと思っていた。自らの動く理由もはっきりとしているし、よく調べている。俺のやってきたことを、ここまで把握しているやつもいなかったし、何ができるとの質問に、戦うより先に金の管理と答えたのもすごい。だって、お前の金を俺が管理してやると言っているのだ。他の冒険者に同じセリフを言ったら、その場で刃傷沙汰になってもおかしくない。
「今までパーティを組んだことは?解散したことは?あるならその理由は?」
少し意地の悪い質問だ。金のことをそこまで言うなら絶対にトラブルも起こしているに違いない。
「パーティを組んでいたことも、解散したこともあります。回数は2回で、どちらも原因は俺です。パーティの共用財産を設定しましたが、使用目的や頻度で揉めました。」
予想通りの答えが返ってくるが、返事の仕方からテイカーは自身が悪いことをしたという意識は持っていないのがわかる。
「俺は会ったばかりのテイカーを信用できない。ましてやパーティの金を預けるなら、なおさらだ。そうだな、例えば実家の商家に、テイカーが金を持ち逃げしたりしたときの保険となる証文を発行させることはできる?王国法院の判子付きで」
王国法院の判子は、通常は一定規模以上の商会同士が結ぶ契約の際に用いられる。王国法院にけっこうな額を支払って判子押してもらうことで、契約としては絶対に破られてはいけない一番重いものになる。ちなみに王国法院は、契約を結ぶ両者が法院にきて合意していることを確認していれば、契約の中身までは口を出さない。
これには、テイカーは眉をしかめて黙り込んだ。商家からすれば家を出た3男が、特大の面倒を持ちかけてきた状態になるだろう。テイカーを見ていると、ぶつぶつ言いながら目を左右にせわしく動かしている。どのように段取りを立て、説得し、証文をとりつけるかの具体的な方法を高速で思考しているのだろう。
「はい、少し時間をもらいますが、できます」
少しして、こちらを見返したテイカーの目には、すぐにでも動きますと書いてあった。その目を見て、俺は信用してみることにした。
「わかった。すまなかった、テイカーの気持ちを試した。契約書は作って、テイカーの実家の一筆まではもらうけど、王国法院の判子は必要ないよ。テイカー、パーティ組もう。まずは半年くらいをお互いのお試しとしよう。よろしくね」
俺とテイカーは握手をした。
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