54◆国王様とお話、再び◆
※文中のアウラはリュードの母親です。
「やぁ、リュード、元気そうだね。いろいろと君の話は聞いているよ。活躍しているようだね、私も嬉しいよ」
その日、俺は王都のエルソン男爵邸にて久しぶりに父親と会っていた。エルソン男爵は冬になって王都に上がるのにあわせて、3人いる騎士の内誰か1人を随伴するのだが、今年は父親になったそうだ。
「父上、お久しぶりです。俺、いや私の話と言うのは?」
「ハハッ、リュード、君はもう好きな調子で話していいよ。たぶん砕けたほうがしゃべりやすいだろう」
「すみません。それで…、俺の話と言うのは、やっぱりあれですかグリフォンの?」
「そうだね。ただ1人でグリフォンを倒したグリフォンバスター。すごいねリュード。僕にもできるかどうか」
「いえ父上は余裕でできます」
俺は即答した。昔聞いたことがある。巨大な熊型の魔物が近くの村に出たとき、父親は柄まで鋼鉄でできた槍をもっていき、真正面から心臓への一突きで仕留めたと。グリフォンくらい余裕に違いない。
「そういえば、グリフォン倒すのに魔法を使ってしまいました」
「切り札は使うべきときに使うもので、君はそうしただけだよ。これからもそうしなさい」
「はい」
なるべく隠し続けておきたかったという俺の気持ちを組んだ上で、父親はそう言ってくれた。盗賊退治の時にも使ってはいるのだが、今回のグリフォンは状況が違った。一緒にいた冒険者達は一言ももらしていないと思うが、頭部が消失したグリフォンの話はすぐに広がってしまい、それが何かまではわからないが、俺が魔法と言う切り札を持っていることは知れ渡ってしまっている。俺も、ここまで自分の話が広まってしまうとは思っていなかった。
「『マギクロニクル』も順調なようだね。エルソン男爵閣下もいつも君のことを話題にしている。聞かされるたびに誇りに思うよ」
「ありがとうございます」
「そうそう、君がカードの製法をラーモット家の秘伝としてくれたことで、今我が家は凄い勢いで繁盛しているよ。我が家も新しくし以前とは全く違うものになっているよ。近くを通るときは、家に寄りなさい。アウラも喜ぶだろう」
「はい、わかりました」
「よし、では今日はエルソン男爵閣下からも時間をいただいたことだし、久しぶりに剣をあわせよう。さぼったりしていないかな?」
「は…はい。お手柔らかにお願いします」
1時間後、エルソン男爵邸の裏庭で父親にボッコボコにされた俺がいた。
◇
「おう、久しぶりだな。元気であったか?リュードよ。」
浅黒い肌をした漁師の元締め、国王陛下が入室するなり俺に親しげに声をかける。
「は、国王陛下におかれましても、ご健勝…」
「よいよい、堅苦しい挨拶などいらん。リュードよ、どうだ、面白いものは作れておるか?」
「は、少しずついろいろと試しています」
「北のバルクライのところでも、なにやらやっておったようだな。あのクマが、嬉しそうにほうぼうで自慢しておるぞ」
国王様には全て筒抜けだ。王国調査室のクロナが、俺の基本的な動向は報告をあげているためだ。
「国王様、才腕御免状の件、誠にありがとうございます。王国調査室のクロナをつけていただきましたことも、旅の道行きでとても助かっております」
「そう思うなら、リュード、何か俺にも持ってこい。ずっと待っておるのだ。そこにある包みは?」
「えー、一応これも試作として作ったものですが、クロナには不評でした。国王様に見せるのは、どうかと思ったのですがご意見を伺えればと…」
「よし見せろ。どんなものでも、お前の作るものに興味がある」
「はい、ではこれにございます」
包みの中から出したのは、高さ30センチほどの3頭身のぬいぐるみだ。大きな頭の下半分はくちばしになっていて、上半分は可愛くデザインしたお婆ちゃんの顔。そう、『キモカワ!ハーピィちゃん。』だ。
国王は目を丸くして驚いている。少し口元がにやけているのは気のせいだろうか?
「これはなんだ?なぜゆえ、こんなものを作った?」
「これは『キモカワ!ハーピィちゃん。』です。私が名付けました。国王様、このぬいぐるみの頭の部分に触れていただいて、よろしいでしょうか?」
「よし、こうか?」
ヒィィィイイイイイイイィィーーーーーーッ
ぬいぐるみが鳴いた。
「おう!…フ…フハハッ…ブハハハハハッ!」
国王様が大爆笑してくれている。キモカワ狙いだったのだが、その様子を見るとギャグ商品として捉えられている気がする。あれだろうか、『笑い袋』のようなものに捉えられているのか?『笑い袋』とは、小さめの巾着袋にピエロとか笑い顔とかがプリントされていて、袋を押すと中の機械のスイッチが入って笑うという、シュールなジョークグッズだ。手に持った人のおよそ半分は笑い、残り半分は気味悪がる。でも、そういうことならと、俺は国王様にダメ押しをする。
「実はですね、背中にも触るところがありまして、触り方を工夫するとですね、こんな風に…」
ピュ!ピュピュ!ピュゥォォォオオオオオォォーーーーッ
「ヒー…ヒー…ゲッフゲッホ…ウヒィ―…」
王様が落ち着くまでたっぷり10分はかかった。
「いやぁ、笑わせてもらった。リュード、俺に売らぬか?」
「はい、お買い上げいただけるなら喜んで。ただ中に魔石が入っておりまして
ずっといじっているといずれは鳴かなくなると思います」
「ふむ…やはり魔石か」
国王様は急に真面目な顔つきになる。
「リュード、お前の発想と、作り出すものは素晴らしいの一言に尽きる。この試作の魔石の仕組みも、今までにない技術が使われているのだろう」
「はい」
「うむ。その技術を売れとは言わん。無理にでも買い上げて研究させたいというのが本音ではあるがな。だがな、お前は自分の特異性をわかっておらん。わかっていたら、グリフォンバスターにはならん」
「……」
「お前が死んだら、お前の技術は失われる。国としては保険をかけておきたい。そのための王国調査室だ」
「はい」
「すぐにとは言わん。だが、お前の技術をどう残すか、それを考えておけ。そのために国ができることがあるのならいくらでも相談にのろう」
「わかりました」
「あまりに答えを出さないようであれば、最終的には強制せざるを得ない。そうさせるな」
「承知しました」
俺は国王のこの発言にいたく感じ入った。強制的に技術の提供をさせることもできるだろうに、正面からきちんと話をしてくれ、俺と言う個人をきちんと立ててくれている。王様の器ってこういうことなのかとちょっと思ったりもした。
「まぁあれだ、まだまだお前からはいろいろ出てきそうだしな。出なくなってきたら言え。その時に刈り入れてやる。」
もしかすると食べごろになるまで、保護するという方針なのかもしれない。
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