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51◆異世界大迷路『ホワイトラビリンス』◆



「いや、違います、この部分を切り換えることでルートが逆転するようになるんです」


「なるほど…この模型で事前に組み立てて、検証した上で、ブロックごとに上から指示を出せばいいのですね」


「そうです。あ、あと入口と出口も動かせますので、先々慣れてきたら、ご自分の好きに組んでもらっていいと思います。」


「本当に面白いですね。リュード殿はよくこんなものを考えられますね……」


 俺が話しているのは、バルクライ家の執事補佐の人だ。今回の企画の専任ということで、全ての工程に入ってもらっている。企画の内容を教えつつ、実務的な部分でのフォローと進行管理をやってもらっている。最近では、自分から思いついたことを提案してきたりもするので、やり取りをしていて楽しい。


「リュードさんよぉ、壁のつなぎ目はこんな感じでいいのかい?」


「あー、この上からの抑えのパーツは、少しくらいガタガタしてもいいので、もっと深く刺さるようにしてください。とにかく絶対に壁が倒れてはいけませんので」


「わかった。しかしリュードさん。この下の台はどうする?さすがに、これ以上深く刺すのは無理そうだぞ」


「そうですね…じゃあ、壁同士を所々でつなぐ補助具みたいのを作りましょうか。あ、そうですそうです、そのさっきの抑えのパーツを通路の幅の長さにした感じのものです」


「おうわかった。とりあえず50本くらい作っておけばいいか?」


「いや予備も含めて200本作っておきましょう」


「かー、人使いが荒いなぁ、わかった、やってやるよ」


「お願いします、そのかわり職人の皆さんのお子さんはテストプレイということで、事前に遊べるようにしますから」


「リュード殿、それは私ども使用人の子ども達も…」


「大丈夫です、最初から含んでいますよ」


 職人チームとも、ひざを突き合わせて何度も打ち合わせを重ねた。最初は作るもののイメージが湧かなかったようだが、簡単なミニチュア試作を作って、思いのたけを伝えたら、今では彼らもノリノリで作業をしてくれている。また、本体以外に必要な小道具や小物も日々製作していた。クロナにも手伝える作業は手伝ってもらった。


 途中で感謝祭があったりと、とにかく慌ただしい日々が続いたが、秋の85日、ついに俺の企画が完成した。





「バルクライ北辺境伯閣下!ついに完成です!『北の大迷宮ホワイトラビリンス』です!」


 バルクライ北辺境伯、その家族や一族が「おぉ」と声をあげる。今、俺達の眼下に広がっているのは、小規模の舞踏会に使うホールを改造した50メートル四方の迷路だ。迷路の壁や床は全て白で、ニスまで綺麗に塗ったことで光沢も出て、なんとも荘厳な雰囲気すら漂っている。それを俺達は2階のテラス席から見ている。


 まずホールには、パレットのような迷路の床パーツを敷き詰めている。床パーツには1メートルごとに穴が開いており、その穴に柱を刺して、柱と柱の間に壁パーツがセットされている。全てきっちり正方形、方眼状に配置されているため柱と壁を抜き差しすれば、ルート変更も思いのままだ。


 迷路の中には宝箱が幾つもあったり、魔物のお面をかぶった執事やメイドが待ち構えていたりする。魔物に出会ってしまったらバトルだ!バトルは、子ども達が事前に渡されているサイコロで行う。魔物も毒々しい色のサイコロを持っており、掛け声と一緒に同時に転がす。出た目の数の大きい方が勝ちというシンプルなルールだが、基本的には子ども達のサイコロの方が、魔物より大きい数が描かれており、そこそこの確率で勝つようになっている。


 このサイコロは色とりどりで、きれいに作りこんでいる。サイコロはホワイトラビリンスへの入場チケットとなっており持っていない人は、入口の門番が入れてくれない。


 ちなみに魔物に勝つことで、スペシャルコインを1枚もらえる。コインは1枚から使えるようになっており、今日のおやつを豪華にすることもできれば、貯めておいて、ちょっとしたいい小物とかと交換することもできる。ちなみに魔物に負けた場合はコインを持っていれば没収されることもある。


 前世でも迷路系のイベント企画をしたことがあったので、段取り含めてスムーズに手配できたし、執事補佐や屋敷の使用人、職人チームの皆のがんばりが大きかった。そして、なんとか冬に間に合わせることができてホッとしている。


 俺達のいる2階のテラス席は、迷路の4つの角に設置されており、各テラス間は通路で移動できるようになっている。迷路の中央も通路になっているので、下で遊んでいる子ども達にアドバイスもできる。


「母上!母上!右と左!どっちですか?上から見て教えてください!」


「出口どっち~~~」


「宝箱だ!今日のおやつ豪華券!!おぉー!」


「うわぁぁん…迷ったぁーー」


「勝負!よっしゃぁ!勝ったぁ!」


「え、この壁まわる!?こっちいけるの!?」


「あ、秘密の道だ!あ!やったー宝箱!」


 小さい子どもしか通れない、小さな入口のついた壁や、壁が回転する隠しドアもある。その先には高確率で宝箱を仕込んでいるので、発見したときの喜びはさらに上がるだろう。


 遊んでいる子ども達は大興奮だ。皆の目がキラキラと輝いている。やっぱり子ども達の喜ぶ様子は何より嬉しい。作ってよかったと心が満たされる。


「バルクライ北辺境伯閣下、この迷宮は毎日その姿を変えます。日によっては入口と出口すらも変わるでしょう」


「あぁ、なるほど、だからこのようなきっちりとした形をしているのだな」


 子ども達の様子を見ながらバルクライ北辺境伯は嬉しそうに何度もうなずく。


「しかし、迷宮か。私も昔一度潜ったことはあるが、なかなか大変なところだったな。こんな風に、きれいで整然としたものであれば、もっと攻略できたろうな。ハハハッ」


「迷宮があるのですか?」


「あぁ、西と東の辺境に1ヵ所ずつあるな。なんだ、知らなかったのか?」


「はい。迷宮ですか…面白そうな魔物とかもいそうですね。」


「さすがグリフォンバスターだな。面白そうな魔物ときたか。昼や夜属性の魔物が多くいるのも迷宮の特徴だな」


「昼と夜!」


 俺もまだ魔石を持っていない属性だ。これは行くしかないな。


「しかし、本当に貴公に頼んで正解だった。礼を言う」


 キャーキャーと楽しむ子ども達の声をバックに俺とバルクライ北辺境伯はしっかりと握手をした。





お読みいただきありがとうございます。

「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

☆評価、ブックマーク、感想いただけましたら嬉しいです。

どうぞよろしくお願いいたします。



今日の/明日の、あなたに、ちょっといいことがありますように。

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