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43◆おもちゃの原理試作◆

本日2話更新しています。この後にもう1話ありますので、よろしくお願いします。



 ハーピーを倒して、骨や羽、魔石などの素材を無事に入手した俺達は、ハーピー狩りの憂鬱な気分を振り払うかのように早々に村を去った。


 街道に戻り、半日進むと目的地としていた町コエラントが見えてきた。この地を治めるコエラ男爵の領都だ。盛り上げた土壁で外周を囲ったコエラントは、小さかった町だったが、街道沿いにあることもあり活気があった。


 入り口で俺は商人ギルドの、他の皆は冒険者ギルドのプレートを見せて中へと入る。相変わらずのざる警備だ。少しの金を門番に渡して、町の中で荷馬車ごと泊まれるお薦めの宿屋を教えてもらう。門番の情報は正確で、少しのお金を払うだけで格段に安全度が増すとクロナに教えてもらったからだ。


 宿屋に荷馬車を預けて、俺達は冒険者ギルドへと移動する。依頼主の商人として、冒険者達の護衛依頼が無事に終了したことを報告するためだ。依頼は町のギルドに手数料と冒険者達に報酬を払って終了となる。護衛の2人は、こんなに気楽で楽しめた依頼は他にないと別れを惜しんでくれた。俺とクロナの方が強いので、道中の魔物は何の危なげもなかったし、飯もたっぷり食べさせた。彼等にとってはラッキーな依頼だったと思う。


 宿に戻って部屋で少しくつろいでから、俺とクロナは宿屋の食堂でと落ち合って食事をとる。もちろん俺達の部屋は別だ。


「リュード君、コエラント着いたけどどうするの?」


「あぁ、そうか、来るまでの話しかしてなかったな」


「なんか、私に対する扱いがちょっと雑に感じるんだけど?」


「ごめん、ごめん。そもそもあまり考えていなかったんだ。とりあえずハーピーの素材とか魔石とかいろいろ触りたいし試してみたいこともあるから、俺は数日ここに籠るよ」


「籠る?宿屋に?私はどうすればいいのかしら?」


「とりあえず、のんびりしてて」


「え、いいの!?」


「うん、ていうか、つまんないとか退屈とか、もっとごねると思ってたんだけど」


「子どもじゃないし、ごねなんてしないわよ!初めての町で面白そうだし。私、ここ3年くらいは王宮内でメイドの悪口、愚痴だけを、ずーっと聞き続けてきたのよ、今が最高に楽しくてたまらないわ!」


「それならよかった。ちょっと2~3日ご飯もタイミングずれるから悪いけど食べててね」


「わかったわ。1日出かける時は教えてね」


「了解」


「じゃあ、王宮のメイドのお話でも、お酒のお共に話してあげようかしら。1人のメイドの激しい嫉妬から始まった…」


「ごめん、その話題はいいや」


 俺達は適度なところで切り上げると、それぞれの部屋に戻って体を休めた。





 翌日になり、午前中に基礎訓練や買い物をすませた俺は、ハーピーの素材を机の上に並べた。親指ほどの大きさの緑色の魔石や、まだ乾燥もしていない骨、体の各部の羽などだ。


 緑色の魔石を手に取る。触れた瞬間に魔石全体から、緩く風が放出される。人間が軽く息を吹いたくらいの風量だ。俺はすぐに手を離して机に戻す。


 魔石は人間が手に触れると、それぞれの属性に応じた現象を起こす。火の魔石なら熱くなったり、土の魔石なら砂がさらさらと出てきたり、水の魔法なら水滴がしたたり落ちる。触れ続けていると最終的には、魔力を全て使いきって、ただの石になる。厚布などに包んで持てば平気だ。


 今までは、土と水の魔石しかいじっていなかったが、水の魔石を手に入れたことで、ぜひとも試してみたいことがあった。


 俺は乾燥したスライムの外膜を粉にした『スライム粉』を取り出した。トレカや『マギクロニクル』の原料の一部になっている大事な素材だ。その『スライム粉』を魔力水で溶かしたスライム液を作り、そこに午前中に木工職人からもらってきた木の粉を入れてかき混ぜていく。できあがった薄茶色の溶液を、風の魔石に塗って複合魔法のホットウィンドで乾かしていく。


 その作業を何回か繰り返し行うと、完全に溶液でコーティングされた魔石が出来上がった。うっすらと中の魔石の緑色が透けており、なんとも味のある不思議な物体になった。素手で持っても魔石から風は出ていない。魔力遮断コーティングの完成だ。スライム液だけでも魔力は遮断できそうだったが、木の粉を混ぜることで、厚みを持たせてしっかりと遮断することができたし、魔石の凹凸がなくなって、滑らかな触り心地になっている。


 俺は、そのコーティングに、直径1センチほどの穴を開けた。そして穴に指をあて魔石に触れる。すると今まで全体から放出されていた風は、指で抑えられ行き場をなくした、ピーと細い音を上げながら指との隙間から漏れ出てくる。さらに指を押し込んでしっかりと抑え込むと、魔石の中に圧力が高まっていくのがわかる。このまま触り続けたら爆発したりするかもしれず、恐いのですぐ指を離す。


 さらに続けて反対側にも同じような穴を開けて、再び魔石に触れた。すると、反対側のその穴から風がいい感じで噴き出していく。何もせずに魔石を触ったときは全体から風が緩く吹きあがるが、魔力遮断コーティングをして風の噴き出し口を限定してあげると、風量も強くなった。


 自分の試みがうまく進んでいることに俺は確かな満足感を得る。ここまで来たらあともう一歩だ。雑貨屋で買ってきた横笛の音が鳴る部分を加工して魔石の穴に取り付けた。


プピィ~~~~ッ


「やった!鳴った!おっしゃっ!」


 俺は嬉しさのあまり1人で手を打ち鳴らした。今回の実験は大成功だ。





 おもちゃの代表的な機能に“鳴る!”“光る!”がある。戦隊や変身ヒーローのなりきり武器などはその代表だ。女児玩具でも“鳴る!”“光る!”は多い。この世界でおもちゃを作るのなら、この2つの機能は避けて通れない、いずれ取り組まなければならない命題だった。だが俺はLEDやスピーカーの原理や作り方がわからない。なので、魔石を使って再現する方法をずっと考えていたのだ。


 原理試作の出来に満足した俺は、そこから、あれこれと考えを巡らせて、今の状態でも作れるおもちゃを試作してみることにした。






お読みいただきありがとうございます。

「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

☆評価、ブックマーク、感想いただけましたら嬉しいです。

どうぞよろしくお願いいたします。



今日の/明日の、あなたに、ちょっといいことがありますように。

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