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42◆魔物の素材を求めて◆



 俺のカスタムした荷馬車が、ガタガタと街道をゆっくりと進んでいる。御者台に座っているのはクロナで、俺は先頭でパロ(ロバみたいな生き物)の手綱を引いている。


 王都の冒険者ギルドで雇った護衛役の男女2名の冒険者は馬車の後ろを歩きながら雑談している。彼等は次の街までの契約で、腕がたつ印象はなかったが素直そうで性格のいい2人だった。人数がいることで余計なトラブルは抑えられるし、例え何かが襲ってきても最低限動いてくれれば充分だと考えた。


 夏に入り、気温も上がってきているが、今俺達の歩いているあたりは、空気も乾燥してカラッとしているので、汗はかくが心地いい。空の青さと白い雲のコントラストがまぶしく、異世界でも日本でも、空の感じはあまり変わらないんだなと、のんびり考える。


 俺の今回の目的はハーピーだ。前世でハーピーと言えば、女性の顔に鳥の体をした獰猛な魔物だったが、こちらのハーピーは何というか、酷い生き物らしい。


 ヨタカと言う鳥を知っているだろうか?目がぎょろりとして大きく、口も真横に避けているのかと思うほど大きい。頭に対して目と口の大きさの比率がおかしい鳥だが、妙な愛嬌と恐さがある。そのヨタカのくちばしから上を、髪を振り乱した、しわがれた老婆にして、目をひん剥いて、カラスの3倍ほど大きくした姿だと言われている。おまけに鳴き声は大絶叫する女性の悲鳴で遠くまで響くらしい。強くはないが、気持ちの悪さから、積極的に倒す人間もなく、依頼もないそうだ。


 魔物は体内に属性のついた魔石を持っている。俺の集めている魔石は、ほとんどが水か土で他の属性は持っていない。ハーピーは風の魔石を持っていると知り、どうしても欲しくなったのだ。風の魔石で少し試したいことがあったのと、鳥系の素材も手に入れてみたかったからだ。


 王都から1日、北の辺境領へと続く街道を進み、山の方に伸びる道をさらに半日進んだ所に村がある。今回の目的地だ。その近くでハーピーを狩って、素材や魔石を手に入れたら、街道に戻って次の街まで進む。そこで護衛と別れたら、また次を考える予定でいる。そのまま北辺境伯領の領都まで行ってみるのもいいかもしれない。





 今俺達は、街道沿いの草原で野営をしていた。荷馬車に施した俺の改造がなかなか快適だ。行商で使われる安い荷馬車には、普通は幌はつかないが、俺は骨組みを作って幌を設置している。天井部をしっかりと平らに作ったことで、ルーフバルコニーのようになっており、簡易な梯子も横に取り付けてあるのですぐに登れるようになっている。この上で寝るもよし、見張りをするもよし、星を見るのもよしだ。


 何故かロールカーテンの巻き上げ部分の仕組みを覚えていたので、特注で部品を作ってもらい、幌は巻上げ式にして荷馬車内から操作できるようにした。幌自体も、値段は高くついたが、蝋を染み込ませた蝋引きの厚布で耐久性に優れたものを特注した。幌の予備も取り付けており、柱を入れてサイドに出せば、そのままターフにもできる。荷馬車自体に防水・防腐処理を施し、底部には各種ツール類に車輪の予備も取り付けてある。


 荷馬車の中も、いろいろと工夫した。俺の作業机や、食料や資料用の箱は全て統一規格で作ってもらい、ブロックのように積んでいる。サイズを合わせて作ったすのこと組み合わせれば、中でベッドも作れる。すのこを、幌の骨組みに引っかければ、車内で2段ベッドにもなる。


 念のためパロも2頭引きにした。パロは力強い生き物だが、改造した分重くなったため1体当たりの負荷とストレスを軽減させてやりたかった。その方が長持ちするとも飼育の人に勧められたのもある。


 熱く語ってしまったが、この馬車改造はやりたかったことの1つだった。都内暮らしで暇もなかったため夢で終わったが、前世では、キャンピングカーや改造軽トラに憧れていた。当時見たDIYキャンピングカーの動画が、今回の荷馬車改造にも反映されている。ありがとう動画投稿者の皆さん。


「こんなこと、次から次へとよく思いつくものね」


 俺が改造ポイントを自慢するたびに、クロナはあきれていたが、いざ旅が始まると「なかなか素敵じゃない」と終始満足顔だった。





きゃぁぁぁああああああああーーーーーーーー!


いやぁあああああぁぁぁぁああああーーーーーーー!


うきょぅわぁぁあああーーーーーーーーーー!


 ハーピーを狩るのはきつかった。強くはない。かぎ爪で急降下して襲ってくるが、魔法や不可思議な技も使ってこない。攻撃を仕掛けてくるタイミングに合わせて、剣を振ればいい。…のだが、きついのは、この女性の悲鳴そっくりの鳴き声だ。大音量で凄まじくうるさい上に、死ぬまで叫び続ける。しかもくちばしから上が、髪を振り乱して目をひん剥いている老婆だ。


いゃああーーーぎゃっふ!


 俺は眉間に皺を寄せながら止めを刺す。この最後のぎゃふっとかも本当にやめてほしい。ハーピーは増えると家畜や人を襲うこともあるため、近くの村の人は定期的に狩っているそうだ。なので狩ることはしょうがないと思うが、ハーピーの悲鳴のせいで、やたらと罪悪感をかきたてられる。こんなことなら村へと置いてきた護衛の冒険者の2人も少し余計に金を払ってでも連れてくればよかった。


「リュード君、私、もういやっ!気持ち悪い!」


「クロナ、もうこれで最後だ、ストーンアロウッ!」


きょわぁぁぁぁあああああぁあぁぁーーーーーーっ!


「ストーンアロウゥゥゥゥゥ」


 石つぶてを高速で撃ち出す、風と土の複合魔法でハーピーを撃ち落とし、そのまま2射目で仕留める。


「はぁはぁはぁ、なんとか、終わった…」


「私、もう2度とこれ狩りたくないわっ!」


 半泣きのクロナが訴えてくるが俺も同じ気持ちだ。定期的に狩り続けている村人のメンタルは相当やばいと思う。俺とクロナは少し休憩を取った後、ハーピーの足を縄で縛ったのだが、気分的に担ぎたくなかったので、そのまま引きずりながら村への道を戻った。





お読みいただきありがとうございます。

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どうぞよろしくお願いいたします。



今日の/明日の、あなたに、ちょっといいことがありますように。

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