40◆からまれるクロナ◆
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冒険者達は、俺達を囲もうとするが、俺はその前に数歩下がる。クロナを前に押し出した形だ。
「おい、兄ちゃん本当にいいのかい?おめえの女じゃねえのか?」
「大丈夫。そのまま連れてってもらっていいから」
「はん、腰抜けめ。おい姉ちゃん、場所変えんぞ。たっぷり可愛がってやる」
クロナは一瞬こっちを見てため息をつくと、小さな声で「サービスよ」と呟いた。そのまま、リーダー格の大柄な男に向き直ると、男の伸ばした手に軽く触れる。
「んあ?あ、なんだ!これ!?」
男の目のあたりに、黒い靄みたいなものがかかっていた。
「な、なんだ、み、見えねえ!」
男はもやに視界を奪われているようだった。俺の体にぶるりと震えが走る。衝撃的だった。そして興奮した。クロナは魔法使いだ!実戦で、自分以外に魔法を使う人間を見るのは初めてだった。
クロナは、男の手首を取って合気道のように振り回すと、頭から床に落として男を気絶させた。続いて隣にいたもう1人に軽く手を触れる。2人目も目の周りに薄く黒い靄がかかっているが、少し様子が違っていた。男は全然違う方を見て、殴りかかろうと振りかぶっている。あれは、幻覚とかを見せられているのだろうか?
殴る勢いを、クロナの手であらぬ方向に誘導されて、2人目も派手な音を立てて頭から地面に突っ込んで気絶する。
「どうする?まだやるの?」
「いや、いい、すまなかった!からんで悪かった!」
「いいのよ。でもそこの2人は片づけてね。こんな所で寝られても邪魔だから」
完全に腰が引けた残りの3人は、気絶した仲間と共に去っていく。俺は興奮した勢いのままクロナに詰め寄った。
「クロナ!今すぐ、エルソン邸にもどろう!」
「え?は?」
◇
エルソン邸の部屋で、俺はクロナに詰め寄っていた。
「クロナ、あれは夜属性の魔法だね!?」
「ええ、そうよ。リュード君にやっぱり信用してもらわないとと思ったから、手の内見せたのよ。私は夜属性の魔法を使うわ」
「すごい!すごい!すごい!クロナ仲間になってくれてありがとう!」
「えぇ…何なの、その態度の変わり具合。まぁいいけど。で、リュード君はどうしてそんなに魔法に執心なの?あなたも使うの?」
「ホットウィンド」
俺が手から出した温風をクロナの手にあてる。
「!?」
「ライトウォーター」
飲み終えたカップにぼんやりと発光する水を注ぐ。
「これは…何?…え?」
クロナは目を見開いて驚く。
「……信じられないけど、リュード君は魔法を混ぜてるの!?」
細い顎に指をあてて少し考え込んだあと、クロナは正解を口にした。
「正解、俺は、魔法を混ぜて合成できるんだ」
「魔法の合成ね…。リュード君すごいわね。こんなの誰も考えたこともないわ……」
「クロナは、夜属性が『ある』?『たくさん』?夜のみ?」
「私は『たくさん』よ。もちろん夜のみ。リュード君は?」
「俺は癒し以外全部で、量は『少し』。だけど全部混ぜられる」
目を見開いて再びクロナが驚く。ここで改めておさらいをしておきたい。世の中には、およそ3人に1人が魔法の才能をもつ。火、水、土、風、昼、夜、癒しの7属性にわけられ、5歳になって調べてみるまで、才能があるかどうかはわからない。
厳密には調べる人によって変わってしまうが、魔法の才能は、魔力の量に応じて『少し』『ある』『たくさん』と3段階にわけられる。火で例えるなら『少し』は指先に火を灯せる、『ある』で火の玉を飛ばせる、『たくさん』で火の柱を作りだしたりできる。
ほとんどの人は、属性は1つで『少し』の人が最も多い。『少し』の場合では人生が変わったりすることもない。『ある』にまでなると、属性によっては働き口の選択肢も増え重宝される。『たくさん』だと、貴族や金持ちに雇われることも多い。
そして2属性以上持つ人は、魔法自体の出力が弱くなったり、出そうと思ったものを出せなくなる。俺は赤ん坊の頃から、魔力を引き出す器官、イメージとしては柔らかい蛇口をずっといじって自分の思うように出す訓練をしてきたので、2つ以上の属性を混ぜることができる。
◇
俺は常々、クロナのような人間に会いたいと思っていた。魔力が『たくさん』の人が威力のある魔法を使おうとすると発動に時間がかかる。戦いの中で火の魔法使いが『火柱』を使おうとすると溜めや集中を必要とするため実戦的ではない。かといって火の玉を飛ばして攻撃したとして、その辺の雑魚ならともかく、例えば父親や近衛騎士団長みたいな猛者に対しては仕留めることはおろか、止めることもできない。つまり罠にはめるような戦い方でもない限りは、魔法は実戦では使えない。
俺の複合魔法は、想像外の使い方、バリエーションの多さ、そして異様な発動の早さがあるので、実戦では使える。とはいえ父親には一度も勝てたことがないが。
そしてクロナだ。発動も早く、実戦での使い方も素晴らしかった。夜属性と言うのも素晴らしい。昼と夜は、イメージが掴めずに俺も使いあぐねて悩んでいた属性だった。前世のファンタジーであったような技、例えば光線を撃つとか、光を操って姿を消すとか、影の中にもぐるとか、そういったことは何もできなかったためだ。
どうやったんだろう?どのくらいの出力で魔法を出すんだろう?他に何ができるんだろう?かけられるとどうなるんだろう?俺の中で、知りたい欲がどんどん高まっていく。
「クロナ、お願い、夜魔法、俺にかけて!」
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