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2◆魔法の適正◆

「リュード、どこだー?そろそろ行くぞ」


 イケメンヒゲの父親が家のどこかから俺に声をかけた。


「父上ー、もう玄関にいます!」


 俺は玄関から大きな声で答える。何しろ今日は特別な日なのだ。


「あらあら、リュードは今日ばかりは普通の子どもみたいね。いつものようにむっすりした顔はしていないのかしら?」


 隣にいるのは母親のアウラだ。薄紫の髪を陽光に光らせるその姿は、今日も超絶美人で、とても素晴らしい。


「母上、私は今日をずっと楽しみにしていたのです。しょうがありません。あと、普段もむっすりとはしていません」


「あまり楽しみにしすぎないでね。どんな結果が出てもリュードはリュードよ」


 そういって母親はフフフと笑いながら俺の頭をなでる。俺は気恥ずかしさを感じながらも、なすがままにされる。俺のこの世での名前はリュードだった。前世の記憶はあるが、自分の名前や家族などは憶えていなかったため、すんなりとその名前を受けいれることができた。というか、毎日毎日呼ばれ続けたら、普通に慣れる。



 赤ん坊の頃から続けていた体の中のビー玉を磨く行為は、実は今も癖のように続いている。ビー玉は輝きが少しだけ増して、柔らかくなったが、大きさは変わっていない。一時期、飽きて止めようとしたら、せっかく輝いて柔らかかったのが、暗くなって小さくなっていく感じがしたので悔しくてやめられなかった。


 ビー玉を磨いているときは、俺は眉間にしわを寄せて、むっすりした顔をしているようだ。それに加えて前世の記憶があることを知られないように、やたらと慎重でいようとした結果、家族は俺のことを「考え事ばかりしている、むっすり顔の変なやつ」というと認識している。


 イケメンヒゲの父親はパスガン・ラーモットと言い、この地方を治める男爵に仕える騎士だということが判明した。男爵は、貴族の爵位としては一番下で、仕える騎士の人数も少ないそうで、父親は3人いる騎士のうちの1人らしい。だが父親の強さは相当なものらしく、その名声ははるか遠くにまで響いているのだと誰かが言っていた。俺の住んでいるこの国はアムリリア王国といい、国王と貴族諸侯が国を治めている。


「リュード、おいで、手をつなごう」


「兄上、恥ずかしいので遠慮します」


 そう声をかけてきたのは、父親譲りの金髪に、母親譲りの緑色の瞳をした1番上の兄貴アストだ。13歳というまだ少年と呼ぶべき年齢なのに、体格は大人に近く父親と一緒に剣やその他の訓練を行っている。将来は父の跡を継ぎ騎士になるのが決まっている上に、顔も振る舞いもイケメンなので、町で少女達の噂に上らない日はないそうだ。


「リュード、そういう時は、せめて少しは恥ずかしそうな素振りをするんだ」


 そう被せてくるのは9歳になる次兄のセンドだ。こちらは逆に、母親譲りの紫髪に父親譲りの碧眼をしている。やっぱり美形で、長兄と同じく町の少女達の噂の的だ。


 ちなみに俺は、瞳は青緑、髪は淡く青みがかった金という両親の特徴を混ぜこんだ色をしている。遺伝的にそうなるものなのかはわからないが、俺が存在しているのなら、ありなのだろう。





 そして俺達は現在、町の教会に向かっている。この世界の宗教は、エヨン教と言い、最高神エヨンを頂点とする、何柱かの神々が信仰されている。一般の信徒は、戒律もほとんどなく、その上となる助祭や神父でも多少縛りがある程度、司教以上となるとそれなりに厳しいようだ。我が家も信者ではあるが、家でたまにお祈りの言葉を唱えるくらいだ。


 今回教会に向かう理由は、お祈りなどではない。子どもが5歳を迎えると、なんと教会で魔法の適性の有無を調べてくれるのだ。


 この世界に魔法はあった。最初にそれを知ったのは3歳の時に、俺が庭でつまずいて怪我をしたときだった。転んだ先にあった尖った石が、俺の額を大きく割った。焼けつくような痛みと、大量に流れ続ける真っ赤な血に焦りまくった俺は、自分ではどうにもできずに大声で泣きじゃくった。駆け付けた母親は、俺を抱えると教会へと運び込んだ。すぐに奥から現れた中年のおっさんが、俺の頭に手をかざすと、見る見るうちに血は止まり、傷はふさがり、痛みも引いた。そのおっさんは神父さんだった。その後、それなりの額の治療費を母親が神父に渡していたが、あれだけ血が出ていた怪我が5分とかからぬうちに治るのであれば格安だろう。


 その時以降、俺は魔法をいろいろと調べてみようと努力したが、何一つわからなかった。家族は魔法の話になると口を閉ざすし、家に手がかりになるものが何もなかったからだ。


 だがそれも今日で終わりだ。ついに今日、俺は魔法デビューする…かもしれない。赤ん坊の頃から触り続けてきたビー玉の正体も判明するかもしれないし、ワクワクがとまらない。さぁ、開け!我がチート人生よ!鼻息を粗くしながら、俺は教会へと向かった。






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