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1◆転生、チートチャレンジ◆

「おぎゃあぁー!!」


 始まりはネット小説によくある転生だった。トラックに引かれたり、神様にあってチートをもらったなどの記憶は一切ない。産声を上げた瞬間に、前世の記憶と同時に自我が宿ったというか蘇ったのを覚えている。


 最初は何が何だかわからずに混乱しまくって、ひたすら泣きじゃくった。丸1日が経って、ようやく自分がどういう状況なのかが分かってきた。


 背の高い金髪碧眼でナイスなひげを生やしたイケメンが父親、淡い紫色の髪に、緑色の瞳を持った美女が母親。地味目な色のワンピースを着た中年の女性が俺の乳母役のようで、こまめに世話をやいていくれる。


 上には兄が2人いて、小学生3~4年生くらいの男の子と幼稚園児くらいの男の子が時折顔を出しては、俺の頬をつついて笑って去っていく。2人とも、すさまじく可愛い顔をしており、イケメン確実だ。できれば、俺もそうであることを願う。


 家の壁は石造りで、使っているものもずいぶんと年季の入った家具類のようだ。乳母役の女性以外に使用人はいないようで、その彼女も夕方には帰ってしまい、夜は母親が俺の面倒を見てくれている。俺は、ある程度の地位というか経済基盤、つまりすぐに死の危険が訪れるようなひどい家庭には生まれずに済んだようだ。奴隷とかスラムとか貧乏農家とか、そういうところでなくてよかったと心からほっとした。おそらく富農か商家だと思われるが、それにしては父親の体格が良すぎる。


 言葉は、最初何を言っているのかわからなかったが、そのうち英語に酷似しているものだと気づいた。前世では、片言で話せる程度の語学力しかなかったが、似ているため学習しやすい。ラッキーだった。





 転生した赤ん坊ということは、やらなければならないことがある。それは異世界転生もののお約束ともいえる、“赤ん坊のうちにこっそり魔力を爆上げ”に挑戦することだ。俺が前世で読んでいたネット小説では、転生主人公は、赤ん坊のうちに魔力を使っては枯渇させ…を繰り返し、魔力を爆上げし、その後特別な人生を過ごす。パターンの違いはあれど、赤ん坊の間はチート能力の入手、育成タイムだ。


 ただ、今までに家族や乳母が魔法を使ったり、魔法の道具を使ったりはしていなかった。だから本当に魔力がある世界かどうかはわからない。それでも、あるに違いないと信じて、必死に体の中に何か感じられないかを探った。これだけでも3日かかった。あまりにも何も感じられないのでやめようかと思ったが、赤ん坊は暇すぎたので続けた。


「あっあ!」


 結果…なんかあった。おへその奥の方に、6つの小さなビー玉のように煌めく光の玉のようなものがある。もちろん物理的なものでなく、感覚的なものだ。


 俺はイメージの手でそのビー玉に触れる。6つのビー玉はそれぞれに印象が異なる。熱っぽい、ヒンヤリする、少し重い、すごく軽い、じんわり、モヤモヤという感じだ。それぞれに特徴はあるのだが、どれも小さくて今にも消えてしまいそうだ。このビー玉以外に体の中に感じるようなものはないため、俺はひたすら、そのビー玉を、イメージの手で触り、磨き続けた。何日経っても、どれだけ触っても何の変化もない。それでも俺は止めなかった。赤ん坊はとにかく暇だったからだ。


 この世界の暦はわからないが、300日以上が経ち、両親が嬉しそうな顔で俺を抱き上げ、おそらく誕生日を迎えたであろう頃には、そのビー玉はほんの少しだけ、輝きが強くなっているように感じた。大きさはほとんど変わっていない。


 俺はビー玉を磨くことに熱中していたため、普通の赤ん坊よりも泣いたり、何かを訴えたりすることが少なかった。父親と母親も、非常に大人しい俺の様子に最初はかなり心配していたが、そのうち、そういう子なのだと納得してくれたようだ。イケメンの兄弟達は毎日に来ては、俺の顔を見て「また、むずかしい顔をしてる!」と笑いあう。


 そんな感じで俺の赤ん坊時代は過ぎていった。






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