140◆異世界合コン◆
「はい、皆さん、こんばんはー!」
「「「「こ、こんばんはー……」」」」」
「おや皆さん元気がないですね?今日は楽しい男女飲み会ですよー?」
「リュ、リュードさん!」
「はい、ミュカさんどうぞ!」
「あの…皆、緊張してるんです」
「あぁ、そうか、こういう男女飲み会なんて、なかなかないからね」
「違います、リュードさんにです!」
「俺に?なぜ?」
「伯爵位を持つドラゴンスレイヤー、グリフォンバスター、『スタープレイヤーズ』商会長、第1回武闘大会優勝者…緊張するなって方が無理だと思います…」
ミュカ以外の男女が懸命に首を縦に振り頷いている。
「あぁ、そうか…ごめんね。とりあえず、最初の司会進行はするけど、俺は今日は裏方だし、行き過ぎた行動さえなければ口を出すこともないから…まぁ、徐々に慣れていって。では自己紹介!女性陣ミュカから!」
「は、はい、ミュカです。『スタープレイヤーズ』で冒険者、兼商会役員やってます、よろしくお願いします」
「エリンです。『スタープレイヤーズ』のお屋敷でメイドをしています、よろしくお願いします!」
「サリアンです。『イーストスパランド・ザナドゥ』で受付をしています!」
「では、次男性陣どうぞ!」
「ビリーです。ユーガッズ警ら第5部隊で働いています!よろしくです!」
「アンジーです。モルバ商会にて働いています。よろしくお願いします」
「ジョニィです!冒険者ギルドで受付やっています!よろしくぅ!」
「それでは、今日の出会いに皆で乾杯して!乾杯―!」
「「「「「乾杯―」」」」」
◇
「うーん、緊張も薄れて会話も増えてきたけど、まだ少し盛り上がりに欠けるね…よし!皆、このサイコロを見てくれ」
俺が取りだしたのは数センチ四方のサイコロだ。「今まででビックリしたこと」「最近うれしかったこと」「目の前の人を誉めてみて」とか書いてある。前世で昼のテレビ番組で使われていた話題の書かれたサイコロだ。
「で、もし、喋るのが苦手とか、ネタがないって人がいたら、その人は向かいに座っている人に、おかずをあーんってして上げて。席替えが出たら、男性陣が1つ右にずれる感じで!」
最初は、緊張のためか皆の表情も強張っていたが、そのうちサイコロを使い話題を変えつつ、時々あーんと席替えをしつつ場は盛り上がった。とりあえず異世界初の合コンは成功しそうだった。
前世で合コンを何度かしたことはあるが、あまりいい記憶はない。人づきあいがもともと苦手なのもあるし、こういう場でのノリをどう楽しめいいのか掴めないし、誰が誰を狙っているとか援護にまわるとかもわからないからだ。前世でカード会社のOLさん達と合コンしたらクレジットカードを作らされたこともあった。最終的に申込書を書いて判子押したのは自分だけど、すごく悲しい気持ちになった。
だけど俺にはレイレという奥さんがいて、狙うとか狙われるとか関係ないところで、それぞれの駆け引きを見てるのは、すごく楽しかった。前世では恋愛観察バラエティとか全く興味が無く見ることはなかったが、それを見ている人の楽しさが少しだけわかった気がした。
最終的に合コンは自然にお開きになった。2回目があったら是非お願いします!とミュカ以外の男女全員に言われたのでセッティングしてもいいけど、そのときは、もう俺はいらない気がする。
ちなみに、俺のこの企画は、利用した食堂のおやじが気に入り、広めたことでユーガッズの若者達の間で流行ることになった。食堂のおやじに、「巡遊伯爵様!どうか!どうか、そのサイコロを売ってもらえませんでしょうか!」と懇願されたので、「食事代ただにしてくれるならいいよ」と冗談で答えたら、泣いて飛びあがって喜んでくれた。後日、その食堂は巡遊伯爵お墨付きの男女の出会いの食堂に変わったと後から聞いた。
◇
合コンから数日後、テイカーから話があると言われた俺は、以前のミュカと同じく屋敷の商談室で向かい合っていた。
「で、話って何?」
「えー…リュードは先日男女の出会いの飲み会を行ったと聞きました」
「うん、やったよ。なかなか盛り上がって楽しかった」
「その場に、ミュカもいましたよね?」
「うん、いたよ」
「なぜですか!?ミュカは俺の恋人です!それなのに声を掛けるのは、正直、いくらリュードでも納得がいきません!」
「テイカーは、ミュカと結婚の約束とかしてるの?」
「い、いや…それはまだ、していませんが」
「なら、そこはミュカの自由意思なんじゃないの?俺は強制はしてないし、ミュカだって俺が言って断れない性格でもないでしょ?」
「ですが……!」
「それにミュカだって、年齢的にもそろそろ結婚を考える時期だろうから、テイカーにその気がないなら、候補くらい探すのはしょうがないんじゃない?」
前世で俺は、まさに今のテイカーのように仕事が楽しくて、そして人と深く付き合うのがわずらわしくて結婚もしなかったしできなかった。俺は早々に諦めて、1人の人生をエンジョイしていたと思うが、そんな俺から見てテイカーは今、分かれ道なのではと思えた。
俺にとってのレイレは唯一無二だ。テイカーにとってミュカはどうだろうか?今、仮に別れてしまった場合、ミュカ以上に合う女性が現れるだろうか?たぶん現れないと思う。最終的に判断するのはテイカーだが、何とももどかしい思いがして、俺はテイカーについきつめの言葉を吐いてしまう。
「まぁ、俺がどうこういう問題じゃないし、最終的にテイカーが自分で考えることだと思うけど、今一度ミュカのことをしっかりと考えてもいいかもしれないなとは思うよ」
「……」
◇
それから数日後、再び商談室で俺はミュカと話していた。
「リュードさん、テイカーが!『ミュカ、1年待ってくれ、来年の秋の感謝祭、そこで結婚式を上げよう』って言ってくれたの!!」
ミュカは頬を染めて、本当に嬉しそうに言う。それを聞きながら俺は、テイカーめ1年延ばしやがったなと心の中で軽くため息をつきつつ、その決断の仕方もテイカーらしいと思った。ちなみにこの世界では貴族でもない限り、結婚に半年とか1年もかけることはほとんどない。
テイカーは根が商人だからか頭の中でいつも算盤を弾いている。合コンで俺に文句を言いにくるくらい、ミュカをちゃんと好きなのだが、結婚に関してはまだまだ猶予があると思っていたのだろう。この世界の結婚適齢期とされているのは19~21歳で、テイカーは今年で22、ミュカは20だ。一般的な考え方すれば、まだ時間はあると思うのだろうが個人によって事情は変わるし、ミュカも将来の約束を言ってくれないことで不安に思っていたのだろう。
テイカーは今回の出来事で、実は猶予はなくて真剣に考えなくてはならないと思い計算をし直した。出した答えがミュカに伝えたセリフだ。
「ミュカもさ、言いにくかったりするかもだけど、もうちょっとテイカーと話したほうがいいかもね。もしアドバイスするなら、テイカーは商人だから、計算とか比較するように伝えると、真剣に捉えやすいと思うよ。」
「うん、わかった!ありがとう、リュードさん!じゃあ、あたし行くね!」
たぶんわかってないなーと思いつつ、俺はミュカが出ていった扉を見ていた。
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