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139◆スタンピードとミュカの相談◆



「ストーンアロウ!」


ぷぎゃぁあっ


 俺の撃ち出した石つぶてが、オークの眉間を打ち抜く。前のめりに倒れるオークの横を通り抜け、その後ろにいたゴブリンを斬り捨てる。俺の隣にいたレイレがさらに先に進み、飛び掛かろうと身をかがめたナイトウルフの首に細剣を突き込んで絶命させる。


「ふん!」


 少し後方ではハイマンの振り回す長い棍棒が、1回転するごとに魔物を1体ずつ屠っていき、クロナがハイマンの取りこぼした魔物を短剣で仕留め、止めを刺していく。


「てやっ!」


 テイカーがメイスで亀形魔物の甲羅を割り、頭を砕く横では、ミュカが特大の火の玉を目の前に浮かべ、圧縮して威力を高めている。


「喰らいなさい!」


「ミュカ!それはだめーっ!」


俺の叫びもむなしく、数十メートル先へとすっ飛んでいった火の玉は、大爆発を起こして、周囲の魔物を粉にした。


「あぁー、魔石がーっ!」


「ごめん、リュードさん、あまりに量がいて、ちょっとうざくなっちゃって…えへっ」


「リュード、しょうがありません。とにかく数がいるのです!ミュカには、集まった所を積極的につぶしてもらいましょう!」


「テイカーがそんなことを言うなんて!!」


 俺達『スタープレイヤーズ』は、ただいま魔物大繁殖大暴走、いわゆるスタンピードの処理の真っ最中だった。10年くらいに1度、東と西をつなぐ辺境街道では、山脈から雑多な種類の、大量の魔物が湧き出てくるらしい。数日前、東辺境伯に呼ばれて、スタンピードの対応に行くように依頼された俺達は、領都ユーガッズから2日かけてきた辺境街道の防衛陣地近くで、大量の魔物をさばいてた。


「波が過ぎたらフィーバータイムだ!魔石採り放題だ!」


「リュードさん!何系の魔石から集めた方がいですか?」


「もう片っ端からでいいよ。何でも必要だから!」


「リュードよ、魔石の買取は商会メンバーの私でもしてくれるのか?」


「当たり前でしょ!小遣い稼いで帰って!孫が可愛いんでしょ!?」


 商会メンバーで警備担当の元冒険者モロクや、研究開発担当のモービィも参加している。スタンピードがあると聞いて、魔石を商売の全ての基としている俺達は喜び勇んでやってきたのだ。


「ミュカ!最後に穴掘って魔物焼くから、魔法使える分くらい、体力、気力残しておいて!」


「リュードさん、大丈夫!まだまだ余裕!」


「なら良かった!ストーンアロウ!」


ギャインッ!


 15メートルほど先で、冒険者に後ろから噛みつこうとしたナイトウルフを、石つぶてで撃ちぬく。俺は全体を見ながら、50メートルほど後方で待機している兵士の一団を見やる。スタンピードは長く続くので、チームを入れ変えて交替しながら、魔物がいなくなるまで行う。


「巡遊伯爵ーっ!交替しますかっ!?」


ぎょえええええーーーーーーーーっ!!!


 兵士の先頭にいる東辺境伯の騎士長から声をかけられる。それに答えようと首を振った時、上空に烏を3倍ほどの大きさにした空飛ぶシルエットが複数見えた。



「ハーピーだ!ミュカ、弓!モロクも叩き落して!俺もアロウで落とす!モービィ、クロナ止めをお願い!騎士長!ハーピー終わったら交替します!」


「「「了解!」」」





 スタンピードが終わって俺達は拠点に戻ってきていた。自分達で回収もしたが、東辺境伯の兵士達や冒険者達からも魔石を大量に買い占めたので、当分困らないほどのストックができた。スパ銭でスタンピードの打ち上げを行った後は、商品を開発したり、商会の事務仕事や計画作り、工場や寮などの整備や打合せ…と忙しい日常に戻ってきていた。


「で…相談ってのは何?ミュカ」


 ミュカに折り入って相談があると言われたので、俺は時間をとっていた。レイレや他のメンバーにも、あまり聞かれたくないとうことだったので、商談室に2人でいる。


「えっと…なんというか、あー…」


 ミュカにしてはずいぶん歯切れが悪い。そうなると、おそらくテイカーのことだろうと予想がつく。


「テイカーのことでしょ?」


「そ、そうなんです!あの実は……」


 そこからのミュカの話を要約すると男女間ではまぁよくある話だった。まず、ミュカはだいぶ前にテイカーに想いを告げたそうだ。それを聞いたテイカーも「嬉しいよ、私もミュカが好きです」と返事をくれたらしい。ただ、そこまでで結婚の約束とかそういう話も出てはいなかった。でも俺とレイレに続いてハイマンとクロナも結婚したものだから、さすがに自分も次はと思ったが、何もリアクションがなく困っているそうだ。


「テイカーは好きなんですけど、あたしはこのままでもいいのでしょうか?待てば言ってくれると思いますか?リュードさん、テイカーと付き合い長いし、テイカーの考えていることわかるのかも知れないって思って……」


 さて困った。前世では人づきあいが得意でないのもあって、たまにされるこういう相談をされると、とても困ったものだった。


 前世で趣味でダーツを始めたことがある。少し経って、男女グループの飲み仲間達もできたころ、そのうちの1人の女のこが俺に相談があると言ってきた。お、これは俺に春でも来ちゃうのかなと思って、少しウキウキしながら待ち合わせてバーに行って話を聞いたら、「飲み友の1人に手を出されている。私のことを好きだ、結婚しようと言ってくれた。でもその人には婚約者がいる、どうすればいいと思いますか?」と相談された。正直言わせてもらうと「知らんがなっ…」って返したくなった。結局俺は、うんうん頷きながら、深刻な顔をして愚痴を聞いて終わった。いまだに何が正解だったのかわからない。


 と、そこまでは前世の話だ。今はミュカとテイカーだ。さすがに「知らんがな」とは言えない。


 テイカーの考えていることは、なんとなくわかる。おそらく仕事が楽しすぎて、自分のリソースを他に回したくなく、少し落ち着いたら向き合おうとか考えているのだと思う。だが断言できる。その落ち着いた日は来ない。ずっと忙しいままだ。何かを1つこなせば、できることが少し増えて、そうなると次の課題が自然と目の前に出てくる。その繰り返しだ。


 この状態だと、俺やハイマンが何を言っても、「そうですね、考えます」とか言って、何も進展しない感じになると思う。本人からのやる気を出させないと駄目なのだろう。そういったことを、ミュカが傷つかないように、説明した。


「そんな考えだったなんて……」


「いや、ミュカ誤解しないで?俺がそう思うってだけだし、テイカーもミュカのことを、ないがしろにしてる訳じゃないからね?」


「リュードさん、もうあたしどうしていいか…わからないんです!あたしから言えばいいんですか!?結婚してくださいって!レイレも言ったのだから、それもありなんですか?」


 ミュカもちょっと思いつめてしまっている。レイレが俺に逆プロポーズしたのは、貴族の決闘が絡んでいたという必然があり、かつそれまでに俺とレイレで関係性を築いてきたから、向こうも逆に申し込んでもよしとしてくれたと経緯がある。もし、これでミュカが迫って、テイカーがOKしても、たぶんしぶしぶ感も出て、余計にこじれる可能性もある。



「あー、そしたら…合コンでもやってみるか…」






お読みいただきありがとうございます。

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どうぞよろしくお願いいたします。



今日の/明日の、あなたに、ちょっといいことがありますように。

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