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129◆ドラゴン◆



「リュード!ドラゴンはっ、やっぱり強いのでしょうか!?」


「強いんだろうけど、どういうのなんだろうねっ!…正直!会いたくないよね!」


 俺は前世の記憶にあるゲームの様々なドラゴンを思い出しながら答える。


今、俺達は、西の領都エリスリと北の領都バルクアクスをつなぐ辺境街道の途中にいる。馬に乗るレイレの後ろに、馬に乗れない俺がしがみついている。俺達以外にも、騎士と従士、兵士数人、冒険者2名がそれぞれ馬に乗って並走している。領都と王都をつなぐ主街道は、道幅も広く整備されているが、この辺境街道は魔物も多い上に、人手は足らないので整備もあまりされていない。どんよりとした雲のかかった空を見上げて、俺はため息をついた。





 2日前、劇場計画を含め、エリスリでのやるべきことを全て終えた俺とレイレは、王都を経由し東へと戻る準備を進めていた。秋も近いため早めに経ち、今年の冬は本拠地の屋敷で、レイレと一緒に温泉に浸かりたい。スパ銭は完成したが、俺達の屋敷にはまだ温泉が引き込めていないのだ。恥ずかしさと温かさで、白い肌を赤く染めるレイレを眺めながら、お湯に浸かりたい。早く帰りたい。そんなことを考えながら準備していたら、急ぎの用件ですと西辺境伯からの使いが来た。


「すまんな。東に帰る準備をしていたのはわかっているが、急ぎ冒険者としてのそなたらに依頼をしたいことが起きた。北への辺境街道でドラゴンが出たという知らせが入ったのだ。」


「ドラゴン!?」


 ファンタジーなこの世界なので当然ドラゴンもいて不思議ではないのだろうが、俺の知る限りドラゴンが出てきた話など聞いたこともなかった。西辺境伯いわく、200年程前に北辺境で出現したことがあるらしく、そのときは騎士や兵士が150人で討伐にあたり3分の1を失いながらも、大怪我を負わせて追い払ったという記録があるという。


「さすがにそんなのは倒せませんよ!?」


「グリフォンバスターであり、オーガを倒したリュードであれば…と思わなくもないが、そこまではさすがに期待しておらん。人間にどうこうするのは無理な代物だろう。だが妾は西を統べるもの。領民に危機が迫るなら、なんとかせねばならぬ…とはいえ、無策でもおれん。まずは、そなたに先遣隊として見てもらい、そなたの見識を聞きたい」


「民のためです、行きましょう、リュード。リュードなら何か気づいたり思いつくこともあるかもしれません」


「そうだね。危険なことは絶対にしないということであれば、です。ではドラゴンを見てきます」


「すまぬな。だが決して無理はするな。馬と騎士、兵士、優れた冒険者をつける。頼んだぞ」



 こうして、俺達は馬を乗り継いで、辺境街道を進んでいるのだった。





「いつ出てくるかわからない?」


「はい、最初にドラゴンが出てきたのは、この町よりも街道を西に半日進んだところです。隊商の馬が襲われました。それが7日前です。次は、そこよりも少し先、もう半日進んだあたりで、3日前です。このときは、行商のパロが襲われました。それから今まで出ていません」


 パロはこの世界でのロバみたいな生き物だ。


「人に被害は?」


「最初の隊商の護衛の冒険者が火を吹かれて大火傷で1名。パロがさらわれた際に近くでで出くわした兵士が8名、尻尾で吹き飛ばされています。大怪我はいましたが、誰も死んではいません」


「馬やパロは食べてるの?」


「わかりません、荷馬車を炎で焼き払って、馬を掴んで飛び去っています。」


「参ったな……、話聞く限りものすごくでかいし、炎吐くし、かなりまずい気がする」


 ドラゴンの出現地点の最寄りの町を治める西辺境派の子爵に、俺達は状況を聞いていた。この子爵は俺達が到着して、俺の名を聞くなり涙を流して喜び、これで解決したと喜んだ。俺は、必死に先遣隊でどういうものか見に来ただけだと説明したのだが、話を聞いてくれない。


 あまり長居はしたくないのだが、出てこないのなら待つしかない。子爵と会っていたのは俺とレイレ、騎士だけだったので、俺は宿に戻って一緒に来た兵士や冒険者達に情報を共有していく。


「すみません、リュード様、お伺いしてもいいですか?」


 今回の先遣隊の中で一番の年少の冒険者、モービィが手を上げた。モービィは16歳と成人してからまだ間もなく、容姿はほとんど少年だ。今回は父親で、同じく冒険者のラバルと一緒に参加している。


 元兵士で斥候職を務めていたラバルは、病気で体を壊してからは、冒険者に転職し自分のペースで依頼を受けながら、息子を鍛えているということだった。ゆえに、モービィは年は若くても、既に冒険者としての活動は数年近くは行っている


「様はいらないよ。モービィだったよね、何か気づいたの?」


「いえ!気づいたというのではないのですが、ド、ドラゴンは1匹だったのか、どの方角から来たのか、が気になりました」


「ドラゴンは2回の目撃者に共通した人間がいないけど、特徴からおそらくは一緒だと思われるって。方角は山脈の方から見たいだね」


「なるほど、わかりました!」


 このモービィは、素晴らしいことに、メモをとる習慣を持っている。今の俺が伝えた内容もチマチマと書き込んでいる。そもそも識字率の低い世界なのでメモをとるような人間はほとんどいない。また、特に冒険者は、経験は自分の中で貯めるもので、人に知られると優位性がなくなるので教えない、残さないという風潮もある。文字は元兵士である父親が教えたのだろう。


 気になって道の途中で見せてもらったが、今まであった魔物の名前や姿、足跡、特徴などが稚拙ではあるが絵と一緒にみっちり書かれていた。こんなメモを描いている人間は、俺以外に見たことがない。俺はおもちゃ道の素材研究やアイディアを書きとめるためにやっているが、モービィは冒険者活動をするためにやっていた。


「それで、リュード、どうしましょうか?」


「可哀そうだけど、街道に馬かパロを止めて俺達は隠れて様子を見る…ってのを1度やってみよう」





「…ダメでしたね。いい作戦だと思ったんですが」


「なわばりから、外れていて滅多に来ない場所とかなのかな。というか、気になるのが馬を持ち去るってあたりなんだよね」


「なぜですか?」


「全部がそうだとは言えないけど、一般的に、強い生き物って獲物を持ち帰らずにその場で食べるんだ。他の生き物に獲物を奪われないから。さすがにドラゴンより強いのもなかなかいないでしょ」


「そうするとなぜ、持ち帰るのでしょう?」


「言いたくないけど…。巣にメスがいて卵を産んでいるか、子育てをしているときとか」


「あ……。それは、まずいかもしれませんね」


「とにかく、姿を見てみないことには、何ともならないんだけどね」


 モービィが手を上げる。


「リュードさん、生き物で番がいるとき、縄張りに侵入者が入ってくると追い払おうとして出てきますよね。私達が大勢で音を鳴らしながら山の方に向かって歩いていくとかどうでしょうか?」


「おー、モービィいいね。でも、それだと、俺達めっちゃ危険になるし、たぶん人間は脅威に思われていないから、難しいかもね。ドラゴンの行動範囲もどのくらいかわからないから」


「あー、そうですね……」


「でも、縄張りの侵入者って、いい目の付け所してるよ。そんなのいたら、すごい怒り狂って飛んでき…あ…」


「何か思いついたんですね」


「うーん、ダメもとでやってみるかな?」





「子爵すみません、館のカーテン。ちょうどいい色だったので……」


「いやいやいや、なんの、巡遊男爵に使ってもらえるのであれば、カーテンも喜んでいるに違いない!」


 よくわからないコメントに対して丁重にお礼を言いながら、俺は子爵屋敷にかかっていた赤いカーテンを何枚も引っぺがす。それを広げて縫い合わせ、薄めに溶いた『スライム粉』溶液に浸してから干して乾燥させる。


 続いて、俺の腕位の太さの木材を組み合わせて骨組みを作り、それにカーテンを縫い付けていく。最後に骨組みの中央に、ロープを結べば完成だ。乾燥も含めて10日もかかったが、幸いなことに、その間にドラゴンは出てこなかった。



お読みいただきありがとうございます。

「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

☆評価、ブックマーク、感想いただけましたら嬉しいです。


※別サイト(カクヨム)になりますが、新作始め、完結いたしました。

自信作です。10万字くらいなので、わりとサクッと読めると思います。

お時間ある時にでもお試しくださいませ。


何があっても平気な拳法くんも、美少女白ギャルにはかなわない♡ (完結)

https://kakuyomu.jp/works/16817330652297354333


どうぞよろしくお願いいたします。

今日の/明日の、あなたに、ちょっといいことがありますように。

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