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128◆異世界メディア商材『精霊合体アニスライザー』◆




『精霊合体アニスライザー!~すれちがう2人~』


~第1話公演~


 劇場の幕が上がった。中央にはイケメンだが、ぱっと見は冴えない冒険者風の男がいる。彼が身振り手振りを大きく交えながら声を上げる。芝居が始まった。



「俺はユド!万年星1の冒険者だ!親父は警らの兵士だったが悪の魔物にやられちまった。それ以来母ちゃんと妹を守りながら、今日も町の平和を守るため、周囲の魔物を狩る日々が続くぜ!」


「おう、ユド!」


「あ、ギルドの受付のおやっさん!」


「ユド、そろそろスライムに勝てるようになったか?」


「いや、まだだ。だってあいつら強いじゃん!でも、俺は今日もがんばるぜ!いってきますー!」


「おうがんばってこい…って、もう行っちまった。スライムに負けることができるってのも、凄げえよな……」





「きゃあああーーーーっ!」


「む、あっちから悲鳴が!!」


「ゲシャシャシャ!おいは悪の魔物、イビルオーガ!この娘を今日の夕食にしてやるぜぇーー!都合のいいことに気を失いやがったー。お持ち帰りだー。」


「待てぇ!その町娘さんに近づくなー!」


「ゲシャシャ?なんだ不味そうな肉が来た。よし、この男はお前達が食べていいぞ。いでよ!戦闘魔物、ダークゴブリン共!」


「ギョイー!」「ギョイー!」


「くそっ!この黒いゴブリン、強い!強すぎる!スライムにすら勝てない俺ではっ!?」



「む!正義の心の波動を感じるポ!今にも消えそうだが、波動の強さは並じゃないポ!」


「くそう、このままでは、町娘さんが食べられてしまう…お、俺に力があればっ!!」


「力が欲しいかポ?」


「かポ?」


「目の前の悪を倒す力が欲しいかポ?」


「誰だ!?」


「力が欲しいかポ?」


「誰だかわからないが…力が…欲しい!助けを求める人を救える力が欲しい!」


「ならば僕と契約するポ!僕の名前はアニスというポ。精霊合体アニスライザーと叫ぶポ!」


「わかった…変身…!」


舞台中央、一段高くなった場所で、ボロボロの冒険者の格好をした役者が、ポーズを決める。その瞬間、舞台は薄暗くなり、舞台上部に青く輝く光の輪が出現する。光の輪は、そのまま地面に落下するが、その輪の中に、いつの間にか変身したヒーローがいる。


華々しい楽器の音と同時に、ヒーローがシュババッとポーズを決める。


「精霊合体!アニスライザァーーッ!!」



「説明しよう!アニスライザーとは、女神の遣わした正義の精霊アニスが、正義の心にあふれた青年ユドと合体することで生まれた正義の戦士だ!」


 やたら正義を連呼するナレーションがどこからともなく流れる。光の輪が消え、舞台が明るくなると、戦闘魔物ダークゴブリンとの乱闘が始まる。


「ギョイイイーーッ!」「ギョイイイーーッ!」


重々しい打撃音や炸裂音と共に、ダークゴブリンが1匹、1匹とやられて、舞台から消えていく。その後、イビルオーガとアニスライザーの死闘が続く。


「これで!最後だ!いくぞ!イビルオーガ!」


「こしゃくなぁ!返り討ちにしてやる!」


「ライザァァーーーキィックゥーーーー!!!」


「ぐはぁああああーーーっ」


「はぁ、はぁ…なんとか…倒すことができた…。でも俺はいったいどうなってしまったんだ!?」


「倒せてよかったポ!これから、よろしくだポ!ユドポ!」


「ユドだっ!」


 ちなみにポポポと語尾のうるさいマスコットキャラは大きめのぬいぐるみを黒子衣装を着込んだ役者が動かしている。





『精霊合体アニスライザー!~すれちがう2人~』

~第2話公演~



「おいユド!ユド!どうした!?」


「…あ、おやっさん!」


「お前、いったい何を見て、そんなボーっと…あぁ。」


「おやっさん、あの人誰か知ってるの?」


「あれは、2つ隣の街を治める、ハルメニア子爵のご息女、リリア姫様だ。」


「きれいだ…美しい……」


「惚れるだけ無駄だ、諦めろ。お姫様だぞ」



「おかしいですわね、この町で悪の波動を感じたのですけれど…。精霊イネス、どうかしら?」


「不思議ピ。悪の波動が消えているピ。」


「この町でさらわれた人もいないようですわね」


「町のどこにも何か被害があった話はなかったピ」


「もしかして…私たち以外に、悪の魔物を倒した人がいる?」


「まさか、それはありえないピ!邪神の波動を受けた悪の魔物は通常の魔物とは比べられないくらい強くて頑丈ピ」


「ではどうして……」





「ゲヒャヒャヒャッ!1度はお前にやられたが、邪神様のお力によって、両腕をムチに変えて、おいは生まれ変わった!おいの名前は、イビルムチオーガ!」


「ぐ!以前よりも!さらに強く!ライザーキックも通じないとは…!」


「これで最後だ!アニスライザーー!」


「お待ちなさい」


「ゲヒョ!?なんだお前は!」


「人々の美しき心に暗い影を差す邪神、そしてその手先の魔物どもよ。お前達を女神の慈愛をもって打ち砕く一振りの剣!我が名はイネスライザー!」


「なんだとぉ!」


「ムチオーガよ、今すぐこの世からお消えなさい!」


「なめるなぁ、おいの力は以前の3倍!消えるのはお前だ!」


「召喚!女神剣カフレ!必殺!イネススラッシュ!!」


「ぎゃぁあああああーーーっ!」


「あ、ありがとう…き、君はいったい?」


「ふん。弱いわね。そんなことで人々を守れて?」


「え……」


「さようなら」


「くそぉー!俺は…俺は強くならなくてはっ!」





 という感じで、芝居は進んでいく。第3話以降は、冒険者として強くなっていくユドが、その中でリリア姫と接点が増えていく、だがお互いの正体は知らない。そして、アニスライザーとイネスライザーはときに反目し、ときに協力しあいながら戦いの中で互いを認めていく。2人は邪神の幹部を倒すことができるのだろうか!?…という感じだ。


 邪神の幹部を倒すまでで全5回公演。3、4話目は主人公がリリア姫に切り替わる。主人公を切り替えながら全部で5話をやって1区切りとなっている。この5回ワンセットを繰り返して上演する。一応どの話から見ても、それなりに楽しめるようには作ってあるが、可能なら1話から見た方が、より盛り上がる。この話が好評だったら2年目以降で、続きを公演するかもしれない。


 この世界発の変身ヒーローものだが、アレンジも多々加えている。まず西辺境領の人々は、トップのエリザリス西辺境伯が女性と言うこともあって、他の領よりも冒険者や兵士の中に女性が入っている割合が多い。またエリザリス西辺境伯に対して皆が憧れを持っている。前世におけるライダーや戦隊ものは、未就学の男児がターゲットなため女性はメインでは活躍しないが、今回は女性主人公を加えた。


 さらに単なるヒーローショーにならないように、お互いの存在が謎のまま、話が少しずつ絡まっていく構成にしており、恋の甘酸っぱさも少し香る程度に入れてある。


 大歓声を上げる観客の様子に、俺は大きく息を吐きだした。いけると思って進めてきたが、やっぱり不安は抱えていた。成功して本当によかった。


「フィギュア!10個ください!」


「申し訳ありません、お1人様1個のみの販売となっております!」


「やったーー!イネスライダーでた!お父さん!見て!」


「ああああーーーーっ、ゴブリンなんかいらないーーーっ!」


「どうして、ゴブリンなんか入れているんですかっ!うちの子が泣いているんですよ!」


「お、お、お母さんのアニ、アニスライザーと取り換えてーっ!」


「こ、これはだめよ!」


「ユドだー!冒険者ユドが入ってた!」


「おっしぁぁああ!リリア姫!家宝ゲット!!!」


「え、なにこれ?キラキラした、すごいアニスライザーがでてきた!?」


「なにそれ、かっこいい!」


「あぁぁぁーーーイビルオーガとかいやだー!」


「でも、このオーガ、取り換えパーツのムチついてるよ!?」


「いやだーーー!」


「精霊アニスだ!かわいいー!」



 売り場は大混雑だった。基本的に、大人ばっかりが楽しむのはいやだったので、子ども1名まで無料にしてある。そしてその子どももフィギュアを買える頭数に入れてある。開封するごとに悲喜こもごもドラマが生まれていた。一応、ゴブリンとイビルオウガは数を少なくしてある。


 ちなみに、一番のレアフィギュアはアニスライザーとイネスライザーの覚醒モードだ。川にいる魚の魔物の透明な鱗を乾燥させて粉にしたものを素材に練りこんでいるので、キラキラ光っている。覚醒モードは5話目の公演の後でその真価がわかる。あのフィギュアを手に入れた子どもがどのような顔をするのか、想像すると楽しい。


 こうして、西の劇場計画は無事に成功した。俺とレイレが、春に王都を出発してから150日以上が経った夏の終わりのことだった。




お読みいただきありがとうございます。

「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

☆評価、ブックマーク、感想いただけましたら嬉しいです。


※別サイト(カクヨム)になりますが、新作始め、完結いたしました。

自信作です。10万字くらいなので、わりとサクッと読めると思います。

お時間ある時にでもお試しくださいませ。


何があっても平気な拳法くんも、美少女白ギャルにはかなわない♡ (完結)

https://kakuyomu.jp/works/16817330652297354333


どうぞよろしくお願いいたします。

今日の/明日の、あなたに、ちょっといいことがありますように。

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