127◆西の劇場◆
「なんて、破廉恥な!!」
「いや、そんな破廉恥って……」
「こ、これは、その、よ、夜の女性の、その男性相手の……いえ、これ以上言えませんわっ!」
思わずレイレの方を見ると、「だから言ったじゃないですか」と呆れたように首を左右に振られる。
俺の前で声を荒げているのは、西の辺境伯の領都エリスリの、貴族お抱えの服飾デザイナーのご婦人だ。西辺境伯の次女カタリナ姫の婚礼の際に、俺達と光るドレスのデザインを担当した人だ。
「うーん、ミニスカートはやっぱりだめかー」
「当たり前ですわ!あなたは子どもを破廉恥にしたいのですか!?」
「いや、確かにそんなことはしたくない。わかったごめんね、じゃあこっちではどう?」
「…エリザリス西辺境伯閣下のお衣装に近いイメージですわね。腿まで少し広がって脛から下を絞ったパンツ…ええ、これなら、わかります。いえ、とてもいいと思いますわ!アデーラ様は皆の憧れでありますから!」
「よかった。じゃあ、これベースに話を詰めていこうか」
「リュード様、この肩から腕、胸から腰に流れるボタンとラインは、光る部分となるのですの?あとはこのパンツの前側とブーツの先まで?」
「うん、2色の使い分けにしようと思ってる。あれから光る仕組み更に改良を加えているから、この細身のラインは崩さずにできると思う。」
「いいですね、夢が広がりますわね。それで、こちらの被り物は必要ですの?」
「これは絶対必要だよ。お話の内容からも、お互いの正体がわからないことが大事なんだ。」
「その辺がいまいち分かりませんけど、それでしたら、私としましては、この被り物の右側にハルメの花の意匠でも入れたらどうかと思いますの。左右非対称の方が見え方も変わって舞台では、さらには目を引きますわ」
「なるほど、さすがだね。じゃあ、ちょっとそれで考えてみよう。また連絡するよ」
「わかりましたわ。こちらでも、その敵兵士戦闘体というのですの?それの衣装の生地と型紙を作り始めておきますわ。」
◇
「変身―!」
「あー、ちょっと違うな。語尾は伸ばさないで、変身!って。で、強めには言うけど、強く言いすぎないで。変身ってところには、覚悟を決めたって感じが込められているんだ。それと右手を斜め前に突き出す速さはいいんだけど、そのあと円を描くときはもう少しゆっくりにして。ちょっと遅いかなくらいでもいいかも。」
「変身!」
「そうそうそう、いい感じ!」
「リュード様、女性の方はどうでしょうか?変身!♪」
「待って、待って、そういうアレンジは加えないで。えっと、エリザリス西辺境伯見たことある?」
「あります!」
「西辺境伯、かわいらしい?」
「え。あ…かわいらしいと言うか、凛々しくてかっこよくて!」
「はい、それでやって!」
「変身!」
「そう!すごくいい感じ、凛々しさがポイント!」
「わかりました!」
俺は今、劇団員の指導をしている。今回の芝居の台本を書いたの俺だし、何より変身という要素がこの世界にはない。さすがに前世では演技指導をしたことはなかったが、今まで見てきた特撮番組、特に仮面的なライダーのシリーズを思い出して、とにかく指導に当たる。
◇
「そうそう、その光の輪を真上で、まず光らせる!輪が上空で光ったときには、人間役は階段の上から奥に飛び降りて!変身した精霊合体仮面は、輪が落ちる前に階段の上に!落とされた輪の中を立っている感じにするよ。タイミング合わせて!はい!」
バタバタと劇団員が俺の指示に従って動く。
「精霊合体仮面!遅い、いや輪を落とすのが早すぎるのかな?輪を落とすとき、1、2って数えてから落とすようにしてみて!もう1回合わせてみよう!」
俺の作った光る舞台の仕掛けを、劇団員が何度も練習を重ねてタイミングを合わせていく。舞台の仕掛けを作った経験も初めてだ。手探りで進めている感じだが、何かを掴んで、1つずつ次につなげていく感覚がとても楽しい。
◇
「ほう、これを売るか、なかなかよい出来よな」
そう言いながら西辺境伯が手に取るのは、10センチくらいの半透明のミニフィギュアだ。男主人公、女主人公、精霊合体仮面の男、精霊合体仮面の女、精霊1、精霊2、精霊合体仮面の覚醒モード男、精霊合体仮面の覚醒モード女、敵兵士戦闘体、敵のボスの全10種類だ。東辺境伯の大剣のときに初めて採用した、土属性魔石から出る砂を溶け込ませたスライム液樹脂を型に流し込んで作ったものだ。このスライム液樹脂は固まると、ほとんどプラスチックのようになる。
「本当にようできておる。妾は全種類もらえるのだろうな?」
「中に何が入っているかわからない方式で売りますが、もちろん西辺境伯は全種類お渡しします。ただ、今西辺境伯が手にしているのは平民用のものです。貴族向けは、こちらです。一見同じですが、手前の穴に指を触れていただくと……」
「おぉ!光った!ほほう…、こういうものが光るのもまたおもしろいな。武器とはまた違う趣がある。うむ、実に良い。我が屋敷に並べて飾ろう」
「貴族用のものも全種類、後でお届けします。そして、このミニフィギュアですが、これは私達では作りません。製法も含めて西辺境伯の信頼のおける工房に任せたいと思っています。型による短時間での量産が可能ですので、数にもよりますが毎日でも公演時に売ることができます」
「よいのか?リュード達の秘匿技術ではないのか?」
「私達が大きくなるためにです。自分達の工房でのみ作る商品と、それ以外の信用できるところで作る商品を分けることにしました。」
「ふむ、考えておるならよい、信用のできる工房にまかせよう。併せて妾の名の下で、その技術が漏れないための対策もしよう」
「ありがとうございます」
「リュードよ、このミニフィギュアには、『スタープレイヤーズ』のマークが入っておらぬが?妾の槍にもだが、そなたらの作るものには全ていれておるのだろう?」
「今回西辺境伯のところで作る施設です。私達が作っている商品とはいえ、マークを付けていいのか悩んだので今は入れていません」
「構わぬ、この台座の底の部分にでも大きくつければ良い。そなたらの商品だと宣言した方が、さらに価値が付く。劇場は妾が確かに作るが、商品は勿論、劇の台本、演出は『スタープレイヤーズ』だ。そのあたりも遠慮なく押し出せ」
「ありがとうございます。甘えさせていただきます」
「王都や東、北でも、このフィギュアを作って売ってはどうか?売れるごとに、こちらにも売上が入るのだ。領地以外で収入があるのは魅力的だ」
「なるほど!そうですね。では、『スタープレイヤーズ』の各支店で、これを売らせていただいて……」
「どうした?」
「あぁ、そうか!それも全部やってしまいましょう!王都でも北でも東でも、違う感じのフィギュアシリーズを出します。それらを俺達の支店でだけ買えるようにすれば、相互に儲かりますし、あこぎな商人に馬鹿みたいに高い金額をつけられにくくできます!西辺境伯ありがとうございます!」
このような形で、俺はどんどん劇場、演目、商品、仕掛けをどんどん構築していった。また決まった内容は、手紙にして北にいるクロナ達や、南にいるミュカ達にも送る。具体的な商品の発売、連携に関してはまだ先でも、少しでも早く情報を伝えて、下準備だけでもしておきたい。
この世界で情報は手紙や人間でしか伝えることができないので、前世での電話やメールを、こういう時こそ欲しいと思ってしまう。何かしらの手段などをいずれ考えていったほうがいいのかもしれない。
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