126◆社交◆
冬は貴族の社交のシーズンだ。冬の間に貴族達はパーティやお茶会を通じて、貴族間の関係性の確認や、翌年の取引などを行う。貴族のほとんどは新しいもの好きで、パーティを開くときは、目新しい要素を加えたがる。
巡遊男爵というおもしろ爵位の俺に貴族達は興味津々らしい。おまけに、俺達の作ってきたものや携わってきたことから、俺を領地に呼んで何か作ってもらえれば発展確実という福の神的な位置づけでもあるそうだ。この冬の初め、国王と3辺境伯と会ったときに、そう聞かされた。
だが国王のお気に入りで、3辺境伯とも縁がある俺を、パーティに招待していいか悩んでしまった各貴族は、それぞれの派閥のボスに、俺を招待していいか、以前から聞いていたらしい。「リュード、お前社交できるか?」と聞かれて、思わず素で「会いたい人となら会いたいです」と答えて、皆にため息をつかれてしまった。
俺の意を組んでもらえて、個別の貴族からは俺は招待されなくなった。ただし、派閥のボスである国王と3辺境伯、宰相の招待するパーティには参加することになった。ちなみに派閥は、東、西、北の3つの辺境派閥、南部を含む王族と領地を持たない官僚貴族を仕切る国王の中央派、そのどれにも属さない辺境と中央部の間に幾つか存在する、宰相の独立派だ。
ということで俺は幾つかのパーティに参加することとなった。
◇
俺とレイレの前には、大勢の貴族がいる。年配の人から若者、男性から女性まで。今日、俺達が参加しているのは北辺境伯派のパーティだ。しかも俺と北辺境伯以外は全員仮面付き。そう、また仮面なのだ。
「たくさんお会いしても顔と名前を一致できません」「社交は苦手です。」「せっかくやるなら、仮面でもつけたらおもしろくなりませんかね?」「パーティというなら、ビンゴでもやりませんか?」などと提案したら、全て採用されてしまった。
仮面をつけていることで、貴族は必要以上に俺に売り込みが出来なくなっている。もともと才腕御免状も持っているので、無理も言えない。なので俺は気兼ねなく、皆と談笑できる。それでも、なんとかアピールしてくる貴族には、ぶっちゃけ適当に答えている。
「うちは街道が通っている以外に何もないのです。領地の発展を願うばかりに夜も眠れず……」
「ほうほう、それなら奇妙なオブジェでも街道沿いにたくさん作ったらおもしろいかもですね」
「領内の川で取れるカニが美味しいのですよ!」
「へぇーそれはいいですね。養殖して、蟹釣り体験とかできたら面白いですね。その場で釣ったまま鍋にいれましょう。ワハハ」
…という具合だ。皆の目が真剣すぎる気もするが、あくまで仮面パーティ。どこの誰にどんな発言したのかは、俺は知らない。知らないったら知らない。
ビンゴも好評だった。ビンゴとは何かと聞かれたので、細かく説明し、ボスである北辺境伯からのプレゼント大会をすることになった。会場に入るときに、A5サイズのビンゴシートを、来場者全員に渡してある。1段高くなった舞台で、数字付きの木球を入れた箱をガラガラと振って混ぜながら、司会者が取り出しては発表していく。数字が発表されるたびに、歓声が飛び交い賑やかだ。前世で結婚パーティや大きなプロジェクトの打上げで盛り上がったのを、ふと思い出した。
ちなみに賞品の中で俺の関わっているのは、『マギクロニクル』のカードや関連グッズ、披露宴で配った特別バージョンではない『ポケットファイア』なんかも出ている。特に『ポケットファイア』は披露宴参加者が方々で自慢するものだから、当たった人が出た時はかなり盛り上がった。
そんな感じで俺達の冬の社交シーズンは過ぎていった。
◇
冬が終わり、何もない5日間も過ぎて春になった。俺達『スタープレイヤーズ』は、ここで結成以来初めての長期の別行動をとることにした。
まず、俺とレイレは西辺境伯と一緒に西の領都エリスリに一緒に向かう。そこで劇場企画、支店の開設、人員の手配と育成、魔石購入の仕組み作りを行う。
クロナとハイマンは、北辺境伯と共に北の領都バルクアクスに行き、同じように支店を開いたり、冒険者ギルドと連携した魔石の納品・仕入れの仕組みを立ち上げる。その後は一度王都に戻って、俺やテイカーからの指示を受けて俺達の製品と魔石などの材料の輸送関連の作業を行う。
テイカーとミュカは、南へ向かい、『スモールラック』のチェリオと話しながらカプラードでの支店を開設し、その後はすぐに東に戻って、拠点で『ポケットファイア』の量産や、まだ終わっていないであろう拠点の整備を行う。
国王に言われた「お前も自分達の体を大きくしておけ」という言葉を受けて、俺達は商会を大きく育てていかなければならない。テイカーの実家や『スモールラック』、その他の各地で知り合った信用のおける商会と提携しつつ、『スタープレイヤーズ』商会を大きくしていく。こういうとき志を共にした、気心の知れた仲間いるというのは本当にありがたい。
春の5日、俺達はそれぞれの役目を全うすべく、それぞれの街道を出発した。次に俺達が揃うのは、半年以上先の秋の45日、東の領都の俺達の拠点に予定だ。
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