122◆国策と反発◆
元々は『スタープレイヤーズ』の商品をどのように流通させていくかを考えていた。技術秘匿の面から、核となる商品の生産工場は拠点にしか置きたくない。そうすると俺達の拠点から、まず東のユーガッズ、王都、北のバルクアクス、西のエリスリ、南のカプラードと商品を送らなくてはならない。
前世のように宅急便や郵便などはない。大商人は隊商を組んで様々な商品を積み、
各都市間をつないで商売していく。中堅以下の商人も集まって隊商を作る。本来であれば、俺達は製品を商人に卸して売ってもらうのが、効率的にも商売的に正しいのだと思う。
だが、俺達の商品は特殊だ。おそらく商人達は馬鹿みたいに高い値段をつけて売りつけていくだろう。俺達は冒険者だが商会を営む商人なので、他の商人を富ませるために生産するわけではない。そしてなるべく俺達が思う対象に、商品を届けたい。
なので、俺は『スタープレイヤーズ』の自前の輸送方法を作れないかと考えていた。東のユーガッズから、生産品を積んで他の街で下ろしつつ、原料の魔石などを買って戻ってくる…、そういう俺達だけの輸送商隊だ。
そしてそこまで考えたときに、思いついてしまった。『スタープレイヤーズ』の知名度は高いので、俺達の馬車だとわかるようにしておけば、早々馬車を襲う馬鹿もいないだろう。もし襲われたとしても、屈強な冒険者を常につけて返り討ちにした上で、1~2人だけ死なない程度に斬っておいて、わざと逃して恐ろしさを伝えさせればいい。
実は、武闘大会で俺と決勝戦を争った、超熟練冒険者のモロクが引退したいと言っていたので、俺はすかさず勧誘し『スタープレイヤーズ』商会の警備主任として雇うことが決まっている。なので、そのあたりは人員を含めてモロクに任せられるだろう。
そして俺の作ったカスタム馬車は、居住性を含めて女性陣にも非常に好評だったし、我ながら良いものだと思っている。もう少し改良を加えれば、荷物も積める動くカプセルホテルのようなものにできそうだ。
つまり俺達の隊商に、金持ちの観光旅行という要素をセットにするのもおもしろいと考えていたのだ。旅の特典として、俺達の商品をお土産につけてもいい。そして行く先々で名物の施設があれば存分に楽しめるだろう。ついでに言えば、金持ちがお金を出してくれるので輸送のコストも一部下がるだろうという計算もある。
そんな感じで考えていたことを、国王達に話した。企画書、企画スケッチもないので
頭の中でまとめながらだが、話しているうちにどんどん楽しくなって、のりのりで説明した。
「…ということで、魔物が少なくなって安定した国内の主要地をお金持ちが回ることで、お金も各地域に落ちますし、話題にもなると思います。あー、隊商に『スタープレイヤーズ』のおもちゃを売る馬車をつけてもおもしろいかもですね。そうすれば、途中の町の人達も観光馬車隊が来るのを待ち遠しく思ってもらえるかも!」
「待て、待て!情報量が多い、1回整理させろ」
勢いに任せて喋りすぎたと思い、俺は口をつぐんだ。3辺境伯と国王は、俺の構想に関して話し始める。
「なるほど、リュードの発想、着想は面白い」
「たしかに、金持ちが街を巡って旅するようになれば経済効果も高くなるだろう。」
「だが、数台の馬車が来ただけでは、そこまで潤わんだろう。もっと規模を大きくしなければならないのでは?」
「確かにな。どのくらいかは見積もりさせてみないとわからんが、少なくとも、馬車30台、数十人の金持ちが一気に動くくらいでないと効果はないのではないか?」
「時期と頻度にもよるな。年に1回なのか、季節に1回なのかでもずいぶん変わってくるぞ」
「う~む…、これは国策として詰めていく方が良さそうだな。リュードの言うように、皆が辺境で魔物を抑えてくれて国内も安定してきた。今後はいかに国内を発展させるかだ。各地域に金を落とす仕組みとして非常に魅力的だ」
「安定したとはいえ魔物もまだ出る。街道の整備に、緊急時の対応なども検討が必要だ」
「主街道沿いの貴族家の調整に、泊まる街の受け入れ態勢もある」
「辺境伯であるお前らにまかせることになるが、主街道以外の貴族のやっかみも増えるだろうから、そっちにも金をまわしてやる必要も出てくるぞ?」
「まぁ、そのあたりはなんとでもできよう」
「しかしこれを進めるとなると忙しくなるな。うむ、おもしろいな。」
「あぁ、おもしろいな」
真剣に議論を重ねる4人の目は、おもちゃで遊ぶときとは異なる輝きを放っていた。その目に覚えがある。前世で見た、俺がすごいと思った各業界の社長達の目だ。俺達の腕で、頭で、でかいのを作っていくぞ、広げていくぞという未来の輝きに満ちた目だ。
「しかし、そうなるとだな。知名度はあっても、出来上がったばかりの商会にまかせるには、規模が大きい。反発も相当強くなるだろう。いっそ国で主導するのではどうか?」
「国、貴族が主体になると、金持ちと言えど平民が率先して動くようにはならないだろう」
「ふむ、辺境伯達の言う通りだな。いぜれにせよ、すぐに始められる案件ではないな。最近、御用商人や大商人の一部から、『スタープレイヤーズ』をどうにかできんかという声も上がってきているしな」
「すみません、それはどういうことですか?」
さすがに気になったので、俺は聞いてみる。
「『スタープレイヤーズ』の商品や発想を、俺や辺境伯達が高額で買い上げることをやっかむ商人達だ。俺達の予算も無限にあるわけじゃないからな、お前のものを買えば、当然、よそから買っていたものを買い控える。で、商人によっては、『スタープレイヤーズ』に商機をつぶされたと思うだろう」
「それで、その商会達はどうしろと?」
「ポッと出の歴史の浅い商会では信用ができないだろうから、『スタープレイヤーズ』の商品は、自分達の商会を通すようにしてくれないかと言ってきている。冒険者出の貴族だから商売にも不慣れであろうし、慣習にも明るくないのであれば、手助けさせていたもらいたい、とな」
俺はあきれると同時に、ひどくむかついた。以前にも、成人前に感謝祭で作ったトレカをみた商人が、領主であるエルソン男爵にトレカの製法を取り上げて、自分に売らせろとか売り込んでいた。
また通常、貴族自身は商売をしないという慣習がある。実際にはエルソン男爵が『マギクロニクル』を売っているように、主体は貴族で、物品のやりとりにだけ商人が絡むような場合もあるので厳密なものではない。ただ今回のその大商人達とやらは、その慣習とかも理由づけに使ってくるあたり、いやらしい。
「そんな顔をするな。お前のやる気を削ぐようなことはせん。それではつまらん」
「国王陛下、まずは東から進めるのはどうでしょうか?」
「どういうことだ、ユリーズ東辺境伯?」
「リュードは、我が一族のレイレの夫です。巡遊男爵に叙爵されましたが、元は平民であり、星5の冒険者、武闘大会や『イーストスパランド・ザナドゥ』の実績もある。東であれば人気も高く、やっかみもほとんどないでしょう。そこで、私が目をかけている商会だと喧伝していけば、少し通りやすくなるでしょう」
「なるほど。貴公、それはいい考えだ。では、しばらくしたら、北からも目をかけていると広めていきましょう」
「ふむ、その次は妾の西じゃな」
「で、最後に王都で、俺か。確かに3辺境伯が目をかけている商会という箔が付けば、進めやすいな。よしそれでいこう」
いつの間にか、国の権力者が全員で俺を推してくれる流れになってしまった。
「ということでだ、リュード、お前の計画は面白いが、すぐには無理だ。そうだな…3年で、その構想を形にしていく。こちらで、やらねばならんこともある。それまでは、名物施設や、おもしろいものを作りながら待っておけ。いや、待つな、お前らも自分達の体をでかくしておけ」
「了解しました。ありがとうございます」
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