120◆国王と3辺境伯◆
「よくきた、まぁそこに座れ。」
宰相であるヴァルド侯爵と国王がいる執務室に通された俺は、応対用のソファで座るように言われた。
「ヴァルド侯爵、例の話をしてやれ」
「御意。ではサプライザー巡遊男爵、こちらの書類をご確認ください」
渡された書類に目を通す。
「以前、私と貴方で『スライム粉』の活用方法を検討した折にでた、溶液を浸した木を乾燥させて盾にするというものでしたが、検証が終わりました」
「どうでしたか?」
「乾燥までに時間はかかりますが、木の盾でありながら分厚い鉄の盾並みの強度が出ました。製造手順、コスト、軽さ…素晴らしい結果がでました。」
「おぉ、それはよかったです!」
「この技術を王国の兵士の盾に導入します。そして、この技術は、無償で3辺境伯に譲ります。巡遊男爵には、技術譲渡も込みで、対価を支払います」
「3辺境伯に無償というのは…?」
「おう、それは国の政策としてだ」
書類仕事を終えた国王が俺の前に座る。
「魔物から国を守っているのは3辺境伯だ。軽く、強くなった盾を1番必要とするのは、
1番よく使うあいつらのとこだ。そこに無償で技術提供をするのは、当たり前だろう?」
俺は国王はやっぱり為政者なのだなと感心した。そして兵士達が少しでも怪我をする可能性が減るのであれば俺に否はない。
「納得しました。もとより異論もありません」
「まぁ、その分、お前への対価にも色をつけておいた。足りないなら言え。足してやる」
書類を見ると、俺への支払いは、200万リムと書かれていた。前世での価値で無理やり計算するなら10億くらいだと思う。商会を興して工場や寮を作り始めたら、各地で稼いできた金が、やばい勢いで減っていたので、正直ありがたい。
工場を稼働し続けるには、安定した流通や入手方法も構築せねばならない。拠点のある東だけでなく、主要都市にも支店を出したい。スパ銭の建設費は東辺境伯が出してくれたが、何かのエンタメ施設を作りたくなったときのために、資金は充分以上にプールしておきたい。やりたいことが増え、そのやりたいことの規模もどんどん大きくなっていく。疲れきるまで走りたいが、そのためにももらえるものは余さずいただいておきたい。
金額は交渉すればもう少しもらえるとは思うがものがおもちゃ、つまり生活を潤すようなものではなく、命に直結するものなので、野暮を言いたくないという思いもあって、俺は「ありがとうございます。有難く頂戴いたします」と返事をした。
◇
「それでだ。リュード。」
「はい。」
「お前、東辺境伯に、なぜ作った!?」
「作った……光る大剣ですか?」
「そうだ!あぁ思い出しただけで腹が立ってくる。俺の前でぶんぶん振り回しおって!嬉しそうに!あのでかさ!極めつけはあの紋章だ!…かっこよすぎるだろう…・・くそうっ!」
昨日辺境伯が言っていた「火をつけすぎた」はこのことか、と俺は納得した。そして西と北の両辺境伯、明日会うことになっているが同じような用件だろうと推測がついた。
「しかもだ、お前!東におもしろい施設を作ったそうじゃないか!温泉を中心にいろいろと楽しめる施設だと?これも散々自慢しやがった!『王国のどこにもない、最高!最新!それが『イーストスパランド・ザナドゥ』です!いかがですか陛下、是非一度視察にいらしてください』じゃ、ねえんだよ!おまけに毎年武闘大会もやるだとぉ!?」
激高する国王に困って、その後ろに立つヴァルド宰相に目をむけたら、なんと、お前が悪いという顔をされた。
「お前、何か王都にも作れ!最新で最高のやつだ!」
本気で困った。それと同時に、ちょっとイライラしてきた。しかも明日、両辺境伯にも同じように言われるのだろう。
「あの、国王様」
「なんだ!何か思いついたのか!」
「いや、言いたいことはわかりますが。明日ですが、北辺境伯と西辺境伯にも呼ばれていまして」
「それがどうした?」
「今国王様に言われたようなことを言われる気がします」
「だから、どうした、俺は国王だぞ!」
「もしよければですが、東辺境伯も含めて全員まとめてお話をさせていただくわけにはいきませんでしょうか?私が、国王様に、最高のものを作れと言われたから、お2人のところでは作れませんとは答えられません」
「ぬぅ…。……ちっ。わかった。明日王宮に呼んでやる。今日は下がっていい、後ほど使いを出す」
「お願いします」
◇
翌日の午後、俺の前に国王と宰相、3辺境伯がいた。西と北の辺境伯は、俺と話す予定だったのが急に国王からの呼び出しに変わってしまったので、すごく怪訝なというか不機嫌な顔をして俺を見ている。東辺境伯も、どことなくばつの悪そうな顔をして俺と目を合わせない。
「それで?全員集まったが、どうすればいいんだ?」
「国王様、ありがとうございます。西辺境伯と北辺境伯お呼び立てすることになってしまい申し訳ありません。」
「妾達を呼び出したのは国王陛下であるし、それはしょうがないが…で、何を話したいのだ?」
「西辺境伯、北辺境伯、お2人が私と今日話したかったのは鳴る光る武器に関してでしょうか?」
「あぁ、そうだ、貴公の作った剣と大剣を、そこの2人にさんざん自慢されてな。率直に言えば、腹立たしいことこの上なかったのだ!」
「妾も北のと同じくだ!なればこそ、妾達にも、そこの2人よりも良い物を作ってもらわねばと思ったのだ」
「えー国王陛下、私がお2人に鳴る光る武器を作るのはよろしいですよね?」
「む、この流れで駄目だとは言えないだろうが……」
「む、待て、私のこの大剣は、リュードからの、花嫁の父役の私への感謝として“特別”に作ってくれたのではないのか!?」
「えぇい!東の!それはあまりにも、ずるいであろう!」
「そうだ、東の。ただでさえ、『スタープレイヤーズ』の店もあればザナドゥだったか、とてつもない名物施設を作らせて不公平にも極まりがある」
「ぬ、施設で言うなら、北にだって大迷宮にランタン祭りをリュードに作ってもらっただろうが!」
「いや、そもそも王都に何の名物もないのが問題だ!そういう名物施設は王都にまずあるべきだろ!」
「待て待て待て!それでいうなら、妾達、西には何も作ってもらっておらん!まずは、こちらが優先されるべきではないのか!王都には、リュードの描いたエヨン神の壁画があるではないか!」
「あれはエヨン教のであって、王都の、王家のではない!対象外だ!」
「それよりも、西は、ご息女の光のドレスがあっただろう?今では服飾産業が、かなり潤っていると聞いたぞ?」
「領地の発展を考えるなら、それとこれとでは話は別だ!」
「それでいうなら、光る武器はまた別の話だろう!」
「それはどういうことだ?貴公らが自慢しているのをずっと聞き続けろというのか!?」
「えーい!うるさい!静まれ!」
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