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107◆武闘大会・その2◆



 無事に俺の2回戦が終わり、次はハイマンと、元冒険者の鍛冶屋の勝負だった。鍛冶屋が武闘大会に出てくるのも面白いと思っていたが、それは司会も同じだったようで試合前に本人に出場理由を聞いていた。その動機は、自らが鍛えた武器を試すことだと試合前に紹介があった。


 この鍛冶屋、元は有名な冒険者だったらしく強かった。戦い方も冒険者らしい、何でも使ってとにかく勝てばいいというスタイルだ。会場に落ちている石だたみの欠片を拾って投げつけたり、目つぶしを用意していたり、何かが付着したナイフを投げたりする一方で、きちんと剣でも闘うというスタイルだった。


 だがどれもハイマンには通用しなかった。ハイマンのしなるロングメイスが、鈍い金属音を上げて、鍛冶屋の剣をはたき落とす。地面に落ちた剣は、衝撃でくの字に曲がっていた。鍛冶屋はがっくりとひざを着くと、「精進しなおしだ……」と呟いて闘技エリアを降りて行った。





 続いての試合は、テイカーと槍を使う冒険者だった。名前をモロクと言うこの冒険者は、3メートルはある長槍を巧みに操り、テイカーを寄せ付けない。


 聞けば、東部においては、この道30年以上の超凄腕冒険者で、長槍のモロクと言う二つ名もあるそうだ。年齢は60近くらしいが頭に白髪が混じるくらいで、足腰はしっかりとしていて機敏によく動く。


「ふーむ、よく粘り、よく動いたが残念だったなぁ」


「くぅ…ありがとうございました……」


 テイカーは善戦したが、槍の間合いに踏み込ませてもらえずに、太腿を貫かれて負けてしまった。リーチの差、そして何よりも経験の差が勝負に出た感じだ。





 さらに試合は続く。2回戦の最終試合は、細剣を使う女性冒険者と長剣を使う放浪助祭の勝負だった。低位貴族のお嬢様はレイレに憧れて女性冒険者になったそうで、細剣の腕前もかなりのものだった。


 対するのは各地をまわるエヨン教の助祭、放浪助祭と呼ばれる若者だった。濃紺の長髪を後ろでまとめた、かなりのイケメンで観客の女性陣から黄色い声援が飛ぶ。


 青年の長剣と女性冒険者の細剣が銀色の軌跡を何度も描く。だが交差することはない。細剣は、相手の剣を防ぐと折れてしまうためだ。青年の剣が何度か相手を追い詰めるが、勝負に勝ったのは女性冒険者の方だった。


 勝因は、女性の体の柔軟さと狙いの正確さだった。青年の突き出した長剣を、足を180度に開いて、バレエのポーズのような形で避けながらも、真上に突き出して細剣が青年の腕を刺し貫いたのだった。利き腕を突かれた青年は降参した。大会に出る腕前だけあって、これも見応えのあるいい試合だった。





 第3回戦、準決勝だ。対戦カードは、俺とハイマン、女性冒険者と槍使いモロクとなる。



「さて、リュード殿、手加減なしでいきますよ」


「それは俺のセリフだよ、ハイマン」


「それでは第3回戦、準決勝1戦目、はじめっ!」


 審判の掛け声と同時に、ハイマンのロングメイスの先端が俺のいた場所を通過する。ハイマンとは俺の魔法も含め、互いに技を見せあって何度も闘っている。正直手の内がほとんどバレているのでやりにくい。


 ハイメンのメイスが、うねる生き物が如く様々な角度から俺を襲う。地面に叩きつけたメイスの先が長柄のしなりを利用して跳ねあがってくる。頭の上を過ぎたと思ったら、急降下して腿を狙ってくる。どの攻撃も、少しでも受けたら、その瞬間に骨まで砕かれる。


 上背があり、力が強いうえに天才的な戦闘センスを持つハイマンだからこそ扱える武器だと言える。


「どうしました!リュード殿!避け続けるだけでは!勝てませんよっ!」


「わかってるっ!」


 メイスを避け続け、ある攻撃が来るのを待つ。少しして、待ち望んだ攻撃が来た!


 ここだ!


 振り下ろされたメイスが地面を叩くとの同時に、俺はその上に飛び込むように倒れ込み、メイスが跳ねあがってくる前に両手で柄を掴みにいく。傍から見たら格好悪いがしょうがない。跳ねあがりの直前は威力もまだ上がっておらず、俺はメイスを押さえることに成功するが、それ見たハイマンの反応も早かった。


 ハイマンはあっさりとロングメイスを手放すと、そのままノータイムで踏み込み、俺の顔面へと蹴りを放ってきた。それを掴んだメイスごと転がりながら俺は避けて立ち上がる。


 ハイマンのこの判断の早さと思いきりは、『スタープレイヤーズ』の中でも群を抜く。

そして徒手格闘でもハイマンは強い。だが俺の戦い方は、何でもありだ。


「マッドシールド!」


 俺の出した泥の盾がハイマンの右フックを受け止める。パシンッと泥を散らしながら、

拳の威力の大半を奪うことに成功し、俺の体にはダメージはない。


「また、発動が早くなりましたかっ!?」


「いくぞっ!内臓のやつ!!」


 俺はハイマンの体に手を触れると、レイレとの勝負で使った、体内の臓器を移動する魔法をかけた。この魔法の名前はつけていない。


「ぐぬぉ!?」


 内臓を強制的に移動されて湧き上がる強烈な不快感にハイマンの顔がゆがむ。その隙をついて、俺はハイマンの懐に深く入り込むと一本背負いで地面に叩きつけた。叩きつけると同時にストーンアロウを2つ出し、狙っておく。


「ぐぅっ…、参りました。降参です」


 俺の左右に浮かぶストーンアロウを見てハイマンは寝ころんだまま両手をあげた。俺はハイマンに手を差し出し立ち上がらせる。


「内臓を動かす魔法ですか……これはきついですね。しかも、また魔法の発動が早くなりましたか?」


「徒手格闘のときに、より使えそうだと思ってね。盾のサイズを小さくして、発動をより早くするようにしてみたんだ」


「ハハハッなるほど。これだからリュード殿と闘うのはおもしろいのです。ありがとうございました」


「いや、こちらこそ、ありがとう」



 こうして俺は決勝へと勝ち上がった。





 準決勝、第2回戦は女性冒険者と槍使いモロクだ。こちらは、あっさりと勝負がついた。どちらも突きが主体の武器だが、リーチの差は天地ほどもある。


 女性冒険者は奮闘したが、柄を回転させながら突く、巻き上げで細剣をはじかれて勝敗が決した。その試合を見ながら、俺はどうすれば、この長槍に勝てるかを考え続けていたが、なかなか答えは出なかった。






お読みいただきありがとうございます。

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今日の/明日の、あなたに、ちょっといいことがありますように。

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