106◆武闘大会・その1◆
武闘大会が始まった。参加する16人は、各地で知名度や予選により決定された精鋭達だ。トーナメント形式で組み合わせは既に決まっている。
俺はゴウザの代わりとなったので、トーナメント1回戦、第1試合で、なんとミュカと闘うことになった。
「いや~、リュードさんと1回本気でやってみたかったんだよねー。がんばるね!」
ミュカは、『スターズ』の頃は、レイレの補佐的な立ち位置で戦うことがほとんどだったようだが、『スタープレイヤーズ』になってからは、わりと前に出る戦い方に変わったと本人が言っていた。理由は、楽しいからだそうで、それを聞くとやはりミュカも東部の女性なんだなと思う。
「リュードさんに教わったからねー。武器も魔法も、同時に扱えるようにもなったんだよー!」
審判の開始の声が響くと同時に、ミュカは5つの火球を空中に浮かべて、なおかつ弓も構えた。闘い方が凶悪な方向に進化を遂げている。
俺は剣を構えてミュカにむけて走った。一切の遠慮がなく火球が俺を襲う。まずは様子見の1つ目が俺の真正面から突っ込んでくる。俺は剣の腹で、ソフトボール大の火球の中央を叩く。すると火球は火花を散らして霧散した。
「え!うそっ!」
「これ、圧縮じゃないでしょ?なら斬れはしないけど、つぶせるよ、っと!」
火球4つが別々の軌道で襲い掛かり、さらにその中を矢が飛んでくる。っていうか容赦なさすぎだろ!火球は無視する。圧縮じゃなければ着弾しても炎上はしても爆発はほとんどしない。踏み込む足に力をこめ、さらにスピードを上げて、正面の矢だけ剣で弾く。
火球の1つが、すねに直撃して脚が炎に覆われるが、ブーツと服の表面が燃え始めたただけで問題はない。次の矢をつがえようとするミュカの喉元に剣を突きつける。同時に、手から水を出して燃え始めたズボンを濡らしておく。
「勝負あり!勝者、リュード!」
「く~、くやしいっ!」
「ミュカ、次を火の玉にするか、矢にするか一瞬迷ったでしょ?あの間に、後ろに下がりながら矢を射ってたら危なかったかも。後は最初から圧縮にしてつぶされないようにするとか」
「う~そうしたら、そうしたで対処されそうだけど。精進しますー」
「とりあえず、お疲れ」
俺とミュカは握手をして試合を終えた。
◇
俺の次の試合は、冒険者と兵士だった。この勝者と俺が戦うことになる。勝ったのは兵士で小柄な青年だった。小剣と小盾で、堅実な戦い方をしていた。次の試合が楽しみだ。
第4試合で、ハイマンが貴族の青年に勝利した。ハイマンの武器は、長柄のついたメイスで、柄のしなりを利用した戦い方をする。対戦相手の貴族が気の毒になるくらいボコボコにされていた。試合後、その場でハイマンが癒しの魔法で治し、対戦相手は目を潤ませながら何度もお礼を言っていた。冷静に考えたらボコボコにしておいて、癒して感謝されるってちょっと恐いなと思った。
試合は続き、第6試合でテイカーが冒険者に勝利した。テイカーは普通のメイスだが、上背があり力もあるので、かするだけでもアウトだ。おまけにテイカーは狙いが正確で
相手の末端、手足の先を叩く。開始早々、つま先を潰された冒険者が早々に降参した。
その後もレイレに憧れて女性冒険者になった低位貴族のお嬢様や、ハイマンと同じような放浪助祭、長い槍を使う冒険者、冒険者を引退した現鍛冶屋、兵士などの試合が続いた。東辺境伯が自慢するだけのことはあり、東部の戦う人間の実力は非常に高かった。
こうして1回戦が終わり、8人が翌日の第2回戦へと進んだ。
◇
翌日、闘技エリアには8人の人間が並んでいた。
俺VS小剣と小盾を使う兵士、
ハイマンVS元冒険者の鍛冶屋、
テイカーVS槍を使う冒険者、
細剣を使う女性冒険者VS長剣を使う放浪助祭
という組み合わせで試合が組まれている。
進行役が名前と特徴を改めて読み上るたびに、観客から歓声が上がる。そして観客から俺への反応も少し変わってきた。
「ひっこめ、このやろー!」
「リュード、応援してやるぞー!」
「早くぶっ飛ばされろー!」
「負けたら10日分の賃金がパァだ!勝ってくれぇ!」
「レイレ様を迎えたきゃ、最後まできっちりがんばんなー!」
どうやら、昨日の2回の闘いで、俺も実力を持っていると認識されたようで応援する声も増えていた。10日分の賃金はどうかと思うが。そして俺は第2回戦へと挑む。
「サルバ子爵領の辺境警備兵、リントです。高名なグリフォンバスター殿との手合わせ、光栄です!よろしくお願いします!」
兵士リントは頭を下げて礼をすると、小剣と小盾を胸の前で構えた。
「1回戦を見たよ。堅実で隙のない闘いで勉強になった。よろしくお願いします」
俺も礼を返すと剣を構える。
そこから十数回、剣を交わした。リントは非常に隙が少なく、動きにもほとんど無駄がなかった。自分からは積極的に動かない。こちらが攻撃をしかけると盾で弾き、いなしつつ、密着するくらいの間合いに、するりと踏み込んできて、小剣を振るう。わざと隙をさらしても、簡単には飛びついてこない。
巧みだった。踏み込む度胸もあり、機会をうかがう慎重さもある。だが、俺はリントの弱点に気づいた。リントは魔法を使える人間との対戦経験とはほとんどないように見えた。
俺は以前までは、自分の魔法はここ一番の隠し玉であり、容易に見せるものではないと考えていた。また俺の魔法は、この世界で唯一の複合魔法なので、それを見せることは、余計なトラブルを引き起こすとも考えていた。だから近衛騎士団長と闘ったときも魔法は出さなかったし、出すときも極力見せる人を選んできたつもりだ。
だが、父親と勝負して少し経ったぐらいから心境に変化が起きていた。複合魔法を含めて俺の戦い方だ。隠し玉ではない、それが俺の普通の戦い方なのだ。手の内がばれても構わない。堅実に積み上げてきた剣技は、揺らがない。俺の複合魔法も一緒だ。
また今の俺ならトラブルも起きないと思う。旅をし、面白いものを作り、多くの人々と関わり合ってきた。幸いなことに俺に好意を寄せてくれる人や味方となってくれる人達がいる。なら、何か起きて、それが俺の手に余る場合は、遠慮なくすがらせてもらおう。
もちろん、逆に俺の力が必要なときがあれば、俺もその人の助けになろう。
ともかくそんな経緯もあって、俺は魔法を隠さないことにした。
「リント、魔法使う人間と闘ったことないでしょ!?」
「そう!ですね!お手柔らかに!お願いします!」
俺はあえて大振りで、剣を振り下ろす。リントが小盾でガードせざるを得ない軌道と勢いだ。
「スタンフラッシュ!」
ガードした瞬間に、その盾の裏側からリントに向けて強烈な光をあてる。
「う!?」
目がくらんだリントの隙をついて、後ろ側へと回り剣を突き付ける。
「勝負ありっ!勝者、リュードォ!!!」
「おおおーーーっ!!!」
大歓声が会場を震わせる。
「リュードさん、ありがとうございました!あの魔法…まだ少し目がくらんでいますよ…」
「リントさん、手強かったからね。でも慎重だったから、あえてそこに付け込ませてもらったよ」
視力の戻ったリントと互いに礼を言い合って握手した。東部の猛者達との闘いはとても楽しかった。
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