104◆告知◆
「っしゃら~、て、っけんなよ。イレッさ、ケッコダ、オガァ、ッデをタッシメるぅ!」
「兄貴はな、こう言ってるんだ!てめーふざけんなよ。レイレ様と結婚するだぁ?俺が
てめぇの腕を確かめてやるっ!とな!」
「っていうか、子分の君の翻訳力すごくないっ!?」
舌を巻きまくって威嚇してくるモヒカン冒険者兄貴とその子分に、俺はギルドで因縁をつけられていた。ちなみに、兄貴の冒険者は少し前までは普通に職員と話してた。隣の受付にいたのが俺だとわかった瞬間、こうなった。ギルドの職員もヒューとか口笛吹いて止める気は微塵もない。
いや、東部に入って薄々感じていたが、領都のユーガッズに入って俺はよく理解した。レイレは、この東部の人全員のアイドルなのだと。強い上に、辺境伯に連なる姫で、美しく、人柄もいい。憧れ、崇拝しちゃう気持ちもよくわかる。だがそこに、正式な発表こそまだだが、俺と言う相手が現れた。風の噂で領都にもきている、どいつだ!?という感じで道や商店でもさりげなく、もしくは直接名前を聞かれ、ギルドに来たらこの状態だ。
「おっの!デ!しゃったら~、ぶったっ!ス!」
おい、通訳やめるな、子分。殴りかかってきたモヒカン兄貴の手を絡めとって、半円をえがきながら、壁に叩きつける。
「ぶぎゃっ!っしゃ、お、みて、たやら…」
「ぎゃあ、しょうがねえ、俺が認めてやらぁ、と言っています!くぅ!」
何か依頼でもあったら受けようと思っていたが、止めて俺達は宿屋に戻った。ちなみに、レイレは辺境伯邸で、ミュカとハイマンは実家に戻っているため、今日ギルドに来ていたのは旧『プレイヤーズ』の3人、俺とクロナとテイカーだった。
「しかし、レイレはすごいですね。」
「本当にね。この皆の暑苦しさにちょっと疲れてきたよ。」
「リュードは、辺境伯の城でも、全く落ち着く暇がなかったわね。」
東辺境伯の城には数日滞在させてもらったが、子息兄弟ばかりか、騎士団の連中にも実力を確かめさせてほしいと手合わせを要求されたり、使用人達からもレイレ様をよろしくと何度も念押しされたりが続いたので、俺達は早々に領都ユーガッズのハイクラス宿屋に移っていたのだ。テイカーとクロナも、それぞれで似たような感じだったため、それで少しホッとしたようだ。
「うーん、なんか、落ち着くまでこの調子が続くのもしんどいなぁ、嫌いではないんだけどねー」
「そうね。少しゆっくりもしたいわ」
「リュード、東には温泉もあるんでしたね」
「あー温泉もいいかもな。ちょっと調べておくよ」
◇
翌日、俺はユリーズ東辺境伯に呼ばれて、お茶を飲んでいた。
「どうだ、リュード、東部は?」
「いたるところで腕試しを挑まれています」
「フハハッそうだろう。だが1回叩きのめせば、その後は認めてくれる。そういうところだ」
確かにユリーズ東辺境伯の息子2人も今では俺に懐いてくれていて、たまに手合わせしたり『マギクロニクル』で遊んだりしている。
「リュードとレイレのお披露目をせねばならん。普段であれば、3日ほど街の通りを馬車でゆっくりと進むのだがな。それではつまらん。リュードは、北でも西でも、いろいろとやったのだろう?東でも何かやれんか?」
「それをもって俺のお披露目にするということですか?」
「あぁ、そうだ。新郎自らお披露目会を開いた、となれば皆の見る目もさらに変わってくるかもしれんと考えてな」
ここ数日の腕試しやら、住民の気質、傾向を見て俺の頭に閃くものがあった。しかも、若干めんどくさい、今の状況をまとめて解決できるかもしれない。
「そうですね…。ユリーズ東辺境伯、俺に考えがあります」
「なんだ?」
「大会を開きましょう!」
◇
~~告知~~
秋の45日、東の領民であれば、誰でも参加できる『第1回・東の大武闘大会』を開催する。
この大会は、レイレ姫の伴侶となる冒険者リュードにより発案されたものである。
大武闘大会においては、エヨン教会の総支援の下、魔法、剣、弓あらゆる攻撃を行ってもよい。ただし相手を死にいたらしめたものは負けとなる。また審判が付き、その指示に従い勝敗は定められる。異論は認めない。
優勝したものは、賞金と、『スタープレイヤーズ』が作った特別賞品、そして冒険者リュードとの対戦が与えられる。
~発案者、冒険者リュードのからの言葉~
「俺がリュードだ。悪いがレイレは俺様がいただく。文句は言わせねえ。悔しい、なんとかして俺をぶん殴りてぇ!ってやつのためにこの大会を用意した。俺達『スタープレイヤーズ』が作った、この世に1つしかない素敵な商品も用意した。賞金もかなりの額だ。
もっとも、東部のひよっこ共じゃ無理かもしれないがな。じゃあ待ってるぜ!」
詳細は以下……
~~~~
◇
「ユリーズ東辺境伯!あの告知はどういうことですか!街中、今まで以上に俺のことが噂になってますよ!」
「ふん、いい出来だったろ?」
「いや、俺、ものすごく悪者になってるじゃないですか!」
「いや、執務官がな、こうしたら盛り上がりませんかって言ってきて、おもしろいから許可した」
「あぁぁー」
俺は前世で、テレビ、雑誌、新聞などの各メディアに出たことがある。番組のジャンルや雑誌の傾向にもよるが、基本どのメディアも多少の演出、味付けはされるものだ。
でも、その演出がひどいときもある。例えばパソコンソフトを出したときの雑誌の取材で、1人称は“私”、語尾は“~です”と丁寧に、内容も謙虚に答えていたのに、発売された記事を読んだら“俺”“だぜ”と全て変えられていた上に、頭のいい俺様がお前達でも遊びやすいように作ったやったぜ、みたいな方向で、答えた内容の選り抜き・改変が行われていたこともある。雑誌社に文句を言ったら、あなたの上司にOKもらってますって言われて……くそっ、今回も同じ感じじゃないか。
ともかく、今、この告知が東部の各街、各町の掲示板、冒険者ギルドに貼られ、おまけに掲示物の内容を読み上げる役人が、特に俺のセリフの部分を、思いっきり気持ちを込めて何度も読み上げているそうだ。ひどくないか?
あの野郎ぶっ飛ばす!賞金が欲しい!賞品を手に入れたい!(『スタープレイヤーズ』の名前は、おもしろいモノを作っているパーティとしても一部で通り始めている)そんな感じで反応がすごいらしく、東部の猛者と呼ばれる人物は、ほとんど参加することになっているそうだ。もう俺がどうこう言える状態じゃなくなってしまった。
…大丈夫かな、俺は勝てるのかな。
俺はもう諦めて、レイレに膝枕してもらって過ごしたり優勝賞品をパーティの皆と一緒に作ったりして大会当日まで日々を重ねていった。
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