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101◆狂戦士◆



「リュード!!」


 両目に受けた衝撃が俺の起点だ。


「スタンフラッシュ!」


 俺の新しい、昼と夜の複合魔法だ。昼属性で作りだした光球の7割を、夜属性のもやで覆うことで、指向性を持たせた強い光だ。魔力量の関係でほんの一瞬しか強く光らせられないが、それで充分だ。光は正面にいたラッセルの目に充分に当たっているはずだ。


「…ぬぐ!」


「ストーンアロウ!クアッド!」


 並行起動した4つのストーンアロウを、見えないまま前方に叩き込む。感覚的に、そのうち2つはラッセルのどこかに当たっている。目から噴き出していた血がいつの間にか止まり、潰された眼球が異様な熱を発してる。


 唐突に視界が戻る。俺は目を見開いてラッセルの状態を確認し、追撃をかける。ラッセルは、肩と腿にストーンアロウを受けているが動けなくなるダメージではない。しかも、目がやられて見えないにも関わらず、刺突剣を高速で前方へ繰り出している。


 ラッセルの突きが、俺の肩を、胸を、腹を、腕を、腿を抉り、穴を開けていくが心臓と頭だけをガードし、俺は進んでいく。


 俺の体は、穴が開くそばから回復をしていく。そのままラッセルを押し込むように進み、体を密着させる。


「ぬ、な、なぜ…」


 俺はラッセルの喉元に剣をあてて切り裂いた。


「ぐぅ…」


 地面に倒れたラッセルの喉から血と命がこぼれていく。ひゅーひゅーと音を鳴らしながら、ラッセルは視力が回復した目で、俺を見て、そして俺はしっかりと見返した。お互いの視線がぶつかって数秒、ラッセルの目から光が消える。俺は大きく息を吐き出した。


「リュード!リュード!リュード!よかった…よかったぁ…」


 俺の胸にレイレが飛び込んでくる。しばらくレイレが泣くのにまかせる。本当に今回ばかりは死ぬかと思った。落ち着いたレイレを1度強く抱き返した後、俺はレイレにキスをした。


 目から1度流れた血が、レイレの頬につくがそれを気にする余裕はなかった。

生きていられた実感、レイレが腕の中にいる幸福感が俺の胸を満たしていた。





「ハイマン、本当にありがとう。おかげで死なずに済んだ。」


 げっそりとやつれた顔のハイマンに俺は礼を伝えた。月明かりの下で、ほとんど死人のような顔に見える。それだけ無理をさせたのだとわかった。


「これっきりにして欲しいものです……。致命傷は治せません。こんな戦い方は二度としないでください……」


「そうだね、もう…しないよ」


 以前に魔法の可能性についてハイマンと実験をしたことがある。怪我の治療をするにあたって、教会の人間が手をかざしていることから、患部に触れていなくても治せるのではと考えた俺が、自分の腕を斬って、離れたところからハイマンに治療をお願いしてみたのだ。結果、癒しの魔法は数メートル離れたところからでも使えた。


 それを今回も行ってもらい、穴を開けられるそばから治してもらった。ハイマンの癒しの腕はかなり高い。魔力量も『たくさん』だったはずだ。事前に相談をした訳ではなかったが、闘う前に腕を指さした俺の意図を組んでくれて本当に助かった。


 月明かりの下、俺達が胸を撫でおろしていると周囲に気配がした。見るとチンピラ冒険者30人ほどを引き連れたヘイゼルが月明かりの下、松明を持ってこちらに近づいてくるところだった。





「ちっ。やっぱり負けやがったか。」


 ヘイゼルはこと切れたラッセルを睨みながら吐き捨てるように唾を吐き、俺を睨む。


「貴様のせいで、父上にも怒られた。しばらく出歩くなと言われたが、どうしても許せない。あんな茶番で貴族である私を馬鹿にしやがって」


「逆恨みもはなはだしいな」


「貴様らは、ここで盗賊どもに襲われて行方不明となる。レイレ姫は、俺がどこにも出さずに一生飼ってやる」


「ヘイゼルの旦那、もうやっちまっていいんですか?女もですか?」


「銀髪の女は俺のものだ。他はお前らの好きにしていい。男は好きなだけ切り刻め」


「ひゃっはー、最高の仕事だ、ぎゃばっ!!」


 俺は無言でストーンアロウを、そいつの眉間に叩き込んだ。


「今俺が何したか分かったやつはいるか?次に動いたやつから同じにしていく」


 チンピラ達の動きが止まった。月明かりはあるが暗い中で、俺のストーンアロウは見えないだろう。そう思っていたら、周囲が明るくなった。後ろを見たらミュカがソフトボール大の火球を数個浮かべている。


「動いたら、これも撃つよー」


「ひ…ひぃ」


 ミュカの火球の方が、チンピラ達の恐怖をより煽ったようだ。


「ヘイゼル、剣を抜きなさい。抜かないなら、そのまま斬ります」


 双剣を抜いたレイレがヘイゼルの前に進みでる。


「き、貴族の私を斬るというのか?」


「さすがに容赦できません。ヘイゼル、あなたは自分が斬られる覚悟もないのに、この場にいるのですか?」


「う、うるさい!わ、私は貴族だぞ!」


「それが遺言でいいのですか?」


「う、うわぁああ!」


ヘイゼルが剣を抜いた瞬間、レイレの双剣が煌めいた。


「あぁぁーー、い、痛いー、痛い―っ!!」


 手足の腱と顔を十字に斬られたヘイゼルが、崩れ落ちて芋虫のように地面をもぞもぞと転がる。


「おい、お前ら、こいつを連れて帰れ。早いうちなら助かるかもな。あと、ラッセルをどこかに埋めてやってくれ」


「あ、あぁ……」


 チンピラ達に後始末を任せて俺達は街へと戻った。宿に帰ると、食事もとらず俺は深く深く眠りについた。 





お読みいただきありがとうございます。

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