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25話:女伯爵ナターレの使者

 森の中を必死に走って逃げる!後ろからは巨大な魔物、マンティコアが迫って来る。距離があったので見つかっていないと思っていたのに、突然振り返ったマンティコアと目があった。あれは何かスキルを持ってるわね・・・

 マンティコアはライオンの身体に蝙蝠の羽を持ち、尻尾が毒蛇の魔物。そして顔は人間だ。噂でしか聞いたことはなかったけど性別もあり、人間と同じように顔も年を取る。目の前のマンティコアの顔は壮年の男性の物だ。最悪ね、一番強い時期のマンティコアなんて・・・

 わたしが狩りに連れてきたベルナデットとファイエットは何としても逃がさなければ・・・


「ベルナデット!剣を貸して!わたしが足止めするからあなたたちは真っすぐ奴隷商まで走りなさい!!」

「それならわたしがやります!これでも剣士のスキルを持ってるんです!」


 そういう問題じゃない!マンティコアは超A級の魔物。10年前に隣のフリージア王国でゴブリンロードとコカトリスが暴れて多くの被害が出たそうだけど、マンティコアはそれ以上の脅威!雷撃や炎の魔法を使う上に接近戦も強く尻尾には毒まで持っている。

 走って息が上がり始めた。説明をする余裕もないのでベルナデットの腰から剣を引き抜き、前を走るファイエットに声をかける。


「ファイエット!ベルナデットを頼むわ!」

「そんな!ローズさん!!」


 わたしは足を止めて剣を構える。剣はあまり得意じゃないけど動きの素早いマンティコアに矢を当てるのは至難の業だ。


「商会長に伝えなさい!超A級の魔物が現れたと!すぐに全員避難するようにって!」

「わ・・・わかりました!すぐ助けを呼んできます!」


 助けなんて来るわけがない。マンティコアを倒すならA級の冒険者チームが必要だわ。本来こんな所にいる魔物じゃないのよ・・・わたしに出来ることは1秒でも長くマンティコアの足止めをすることだけ。剣がないベルナデットは渋々ファイエットと一緒に森の中に消えた。

 わたしが足を止めて剣を構えたからかマンティコアも足を止めわたしを凝視している。わたしの強さを計っているのかもしれない。いいわよ、そのまま時間をかけてちょうだい。そう思った瞬間人間の顔が言葉を発した。


「【爆炎(ランチャフィアンマ)4】」





「突然の訪問で申し訳ない。女伯爵カウンテスからは先ぶれを送ったと聞いていたのですが」

「いえ、歓迎いたしますよ御使者殿。どうぞおかけください」



 先ほど突然のお客様の来訪がありました。門の魔道具が反応をして屋敷内にベルが鳴ります。


「おや?今日はお客様の予定はなかったはずですが、ベアトリス見てきてくださいますか?」

「わかりましたジーリオ様」


 ジーリオ様が魔道具を操作して門が自動で開いていきます。わたしが扉を開けると玄関口に1台の馬車が止まったところでした。馬車は人を運ぶ用の馬車ではなく、荷運びようの馬車でした。何かお届け物でしょうか?御者をしていた男性がひらりと馬車を降りると優雅に一礼をして挨拶してくださいます。


「初めましてお嬢さん。女伯爵カウンテスナターレの遣いの者ですが、商会長様は御在宅ですかな?」


 ただの御者の方ではなく、この方が遣いの方でした!しかも、女伯爵カウンテスナターレ様の遣いですって!?


「あ、はい!えっと、ど、どうぞお入りください。ご案内します」


 ちょっとしどろもどろになりましたが、なんとか冷静さを取り戻して扉を大きく開き頭を下げます。すると遣いの方は馬車の後ろに回り幌の隙間から子供を降ろしました。フードをかぶっているのでハッキリとは分かりませんが背格好からすると7、8歳くらいでしょうか?うちに連れてくると言うことはこの子を奴隷に?子供を観察しているとフードの奥の目がわたしを捕らえました。あら?男の子?目が合った男の子はちょっと恥ずかしそうに遣いの方の影に隠れます。男の子なら普通にこの方のお子様なのでしょう。子供を見ると奴隷なのかな?っと考える悪い癖がついていたようです・・・


「よいしょっと」


 馬車から聞こえた声に顔を上げると、薄紅色のドレスを着てベールをかぶった女性が馬車から飛び降りてきました!?ドレスがふわりと舞い上がり一瞬下着が見えていました・・・え?え?え?ドレスを着た女性が馬車から飛び降りるとか、あまりに衝撃的すぎて頭が真っ白になりました。


「お恥ずかしい所を見せてしまい申し訳ない。案内をお願いしますお嬢さん」

「あ、ひゃいっ!」


 ぼーっとしてしまい思わず舌を噛んでしまいました・・・





「ベルナデット急いで!」

「わたしはいいから・・・ファイエットは商会長様にこのことを!」


 わたしは昔から足だけは速く、特に森の中ではだれにも負けたことがない。走りやすい道、木の影の障害物など不思議と手に取る様に分かった。かなり走ったため魔物の気配は感じられない。ベルナデットを置いていくことは躊躇われたけど、一刻も早く助けを呼ばないとローズさんが死んでしまいます!


「ごめん!助けを呼んでくるから待ってて!」


 わたしは更に速度を上げて森の中を疾走した。木の枝を利用して空中を走り、蔦をロープ代わりにして小川を越える。しばらく走ると街道に出た。あともう少しだ!





「なるほど、そういうことでしたか」

「ええ、私たちは正式な使者と言うわけではありません。私たちは行商を生業としていまして、女伯爵カウンテスナターレとは個人的な付き合いです。言うなれば女伯爵カウンテスナターレの使者ではなく、ジプソフィーラ・ディ・ナターレ様個人の使者ですね」


 驚きました。ジーリオ様がインキュバスとのハーフと言うことは伺っていました。この世界は広く、人間以外の言葉を話せる種族がいることも知っています。でも、純粋な別種族の方に会うのは初めてです。小さな男の子がフードを取るとその頭には猫耳が生えていました。獣人!?いえ、父親と思われる御使者の方は人間に見えます。ということはこの子もハーフなのでしょうか?すると?・・・薄紅色のドレスを着た女性が頭のベールを取りました。その頭には・・・


「はじめましてニャ。ソフィー、ジプソフィーラ様の義姉のプルーニャと申しますニャ」

更新が遅くなりました。本編と新作に時間が取られて中々執筆する時間が取れず申し訳ありません。

これで3作品の年内の更新は最後です。皆さま良いお年を!

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