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24話:メイドローズと接敵

「それなら・・・ローズさんも奴隷商で働きませんか?」

「は?・・・」


 ローズさんのことを何も知らないのです。知っているのはロズリーヌさんたちのお仲間だったことだけです。ローズさんのことがもっと知りたい。そのためには!


「ジーリオ様を殺すことはいつでもできます!結論を急がないでください!わたしはローズさんのことをもっと知りたいです!知らないとどうすることが一番いいのかが分かりません!だから・・・一緒に働きませんか?ジーリオ様がなぜローズさんのレベルを奪ったのか、それを確認してからでも遅くはないんじゃないでしょうか?・・・」


 はぁはぁ・・・わたしはダメですね・・・ジーリオ様を殺されたくない。ローズさんを人殺しにしたくない。その一心でわたしの考えをまくしたてましたが、ローズさんがそれを良しとはしてくれないでしょう。わたしの勝手な希望なのです。


「・・・ふぅ・・・まあ、どうせレベル1のわたしじゃ勝ち目はないわよ・・・」


 ローズさんがポイッと放り投げたナイフが、ジーリオ様の目の前のテーブルに突き刺さります。ジーリオ様は微動だにしません。

 ローズさん、それじゃ奴隷商に?


「ベアトリスちゃんの顔を立ててこの場は見逃してあげるわ。さっさと帰って・・・」


 ローズさんはジーリオ様の目の前に立つと睨みつけながらそう言い、背を向けて扉の向こうに消えました。

 やっぱりダメですか・・・とりあえずジーリオ様が殺されなかっただけ良しとするしかありませんね。


「ベアトリス、帰るよ」

「はい・・・」


 わたしの円満スキルの限界ですね。ほんとに役に立ちません。





 わたしの円満スキルさん、ごめんなさい。あなたは最高です。


「給金は弾んでくれるんでしょうね?」


 数日後、奴隷商の応接室にローズさんの姿がありました。娼館街で見かけた妖艶な姿ではなく、シックなロングドレスのメイド服を着たローズさんです。


「ひと月当たり銀貨20枚。食事は日に3度。仕事振り次第で能力給もつけましょう。貴女の能力次第ですがね」

「いいわ。しっかり面倒を見てもらおうかしらね。ジーリオ様」


 ソファーに座っているローズさんは足を組んでふんぞり返っています・・・ジーリオ様はそれを特に咎めることもなく淡々と条件面の話をします。

 はたから見ているとどちらが主人なのか分かりません・・・

 これからローズさんと一緒に働けるのはうれしいですが、何も問題を起こさないといいのですけど・・・


「あの、ローズさん。これからよろしくお願いしますね」

「よろしくね、ベアトリス先輩」


 気のせいでしょうか?ローズさんの声が弾んでいるような気します。決してジーリオ様を許したわけではないみたいですけど、嫌ってるわけでもなさそうです。


「ベアトリス。今日から君の後輩です。しっかり面倒をみてください」

「え?あ、はい!」


 奴隷商に誘っておいてなんですが、ジーリオ様の問題を丸投げされた気分です・・・

 ですがうちには小さな子もたくさんいますし、働いてもらえるならとっても助かります!初日はわたしの仕事を見てもらい、小さな子の面倒は手伝ってもらいました。意外と言っては失礼ですが冒険者をしていたのに子供の扱いがとてもお上手です。食事の時にはすでに懐いた子たちに囲まれて、まるでお母さんのように楽しく過ごしていました。

 夜になり、最後にジーリオ様に挨拶して自室に戻ります。隣を歩くローズさんは疲れの色も見えず、奴隷商のことについてアレコレと質問をしてきます。


「ローズさん、一日終わりましたけどいかがでしたか?」

「なんとかなりそうかな。ただ、ここには足りないものがあるわ。わたしの仕事はそれかな?」


 どれでしょう?ローズさんは一人で納得して小さくガッツポーズをされてお部屋に入っていきました。



 二日目の朝、ローズさんのお部屋に呼びに行くとすでにお部屋にいませんでした。朝食にも姿を見せずジーリオ様の執務室にもいません。


「あの、ジーリオ様?ローズさんが見当たらないんですけど・・・」

「ああ、彼女なら冒険者ギルドに行ったよ。何をしに行ったのかわからないけどね」


 え~~~~~・・・二日目から何をやっているんですかローズさん・・・奴隷商で働かずに何をしてるんでしょう?・・・夕方になってようやく戻って来たローズさんはウサギとキジを4羽づつ狩ってきました。


「ここのご飯はおいしいけど、育ち盛りの子供はお肉も食べないとね」


 奴隷商では基本自給自足で賄っていますがお肉は手に入りません。


「レベルは1のままだけど、意外に身体が覚えてるものだね。それなりに外しちゃったけどね」


 スキルは能力の補正にすぎません。わたしも3ヵ国語のスキルを持っていますがスキルを得る前だって一般会話程度はできました。スキルを得ると母国語と同じレベルで会話が出来るようになりますが。

 ローズさんも弓術のスキルを持っていたのでしょう。無くなっても当たらないわけではないのです。

 あれ?今何か気づいたような・・・う~ん・・・もやもやしてちょっと気持ち悪いですね。一体何に気づいたのでしょう?


 次の日もローズさんは早朝から出かけていきました。ベルナデットとファイエットを連れて・・・

 ベルナデットは剣士のスキルを得ている11歳の子で、ファイエットは修道院からやってきた4人組の一人で12歳です。ジーリオ様が許可したようですけどなんであの二人なんでしょう?





「なんでわたしがこんなことを・・・」


 わたしはファイエットと申します。以前は修道院でお世話になっていましたが、一日3食の食事の誘惑に負けて奴隷商の奴隷見習いになりました。修道院にいた頃は毎日1食だけの食事でいつもひもじい思いをしていました。ところが奴隷商にやってくると毎日3食の食事にありつけ、色々なお勉強もできます。文字の読み書きから簡単な計算、それにメイクの仕方まで。そして様々なスキル習得に向けてやりたいこともやらせていただけます。わたしが目指していたのは魔法使い。まだ体内の魔力も感じることができないので先は長いですが、頑張っている矢先に新しくやって来たローズさんに「あなた、見込みがありそうね。一緒に来なさい」と言われて早朝から森の中にいます・・・手に持っているのは練習用の小さな弓。一緒に連れてこられたベルナデットは細身の剣を持っています。獲物はウサギやキジなどの食べられる動物。100人ほどいる奴隷見習いみんなのご飯を取って帰らないといけないようです。


「二人とも止まって!」


 先頭を行くローズさんが身を伏せて先を見つめます。獲物がいたのでしょうか?


「なぜこんな所に・・・」


 ローズさんが小さく呟きます。一体何が?・・・


「二人とも静かに下がって・・・逃げるよ」


 ローズさんの肩越しに遠くにいる巨大な生き物が見えました。


 あれはまさか!?


 そこにいたのは巨大な魔物、有名ですが決して出会うはずのない魔物、マンティコアでした。

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