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23話:謝罪

「それじゃ戸締りお願いねローズ。ベアトリスちゃんまたね」

「はい、お疲れさまでしたエマさん」


 エマさんが手を振って扉を閉じました。

 この時間では空いているお店もないので、以前介抱していただいた休憩室に案内されました。

 ローズさんがお茶の用意をしてくださり、ジーリオ様とわたしが隣り合ってソファーに座っています。


「どうぞ」

「ありがとうございます!」

「すみません。お帰りの所無理やり引き留めてしまって」


 ジーリオ様が頭を下げて謝ります。ジーリオ様の向かいにローズさんが腰を降ろし、「いいえ」と言ってジーリオ様を見ます。

 ローズさんは薄い紅色のワンピースの寝巻でしたが、クローゼットからガウンを取り出して羽織っています。薄い絹なので透けて下着が見えています。ちょっとドキドキします・・・


「・・・それでどのような御用でしょう?」


 気のせいかローズさんが少し怯えているように見えます。わたしが一緒とはいえ見知らぬ男性に緊張されているのでしょうか?


「魔物の蔓延る森の中で一人になるのは危ないですよ。あの時あなたは死んでいたかもしれない」


 !!


 ジーリオ様!?それってローズさんを襲った時のことですか!?

 ローズさんを見ると座ったまま固まってしまい、顔色は真っ青で大量の汗が吹き出しました。


「やっぱり・・・あなたはあの時の・・・」

「おや?バレていましたか?」


 ど、どどどどーしましょー!?わたしはなんでここにいるのでしょうかっ!!

 ジーリオ様は無表情、ローズさんは真っ青、わたしはどんな表情をしてればいいですかっ!?


「・・・何をしに来たの?・・・」

「謝罪に」

「は?」


 ジーリオ様はローズさんに謝りに来たのですか?それって、わたしがローズさんを不幸にしたことを責めたからでしょうか?


「謝罪ですって・・・魔物に襲われて能力を奪われ、その能力を奪った魔物が謝罪?・・・」

「ええ、あなたからレベルを奪ったのは間違いだったようです。申し訳ありません」


 ジーリオ様が立ち上がり深く頭を下げます。立ち上がった瞬間ローズさんがビクッとしていましたが・・・


「あなたは何者なんですか?・・・」

「見た通り、では分かりませんね。わたしはインキュバスと人間のハーフですよ」


 両手を広げ自らを見下ろして苦笑しながらジーリオ様がおっしゃいました。


「ハーフ・・・魔物と人間とのハーフ・・・何の冗談ですかっ!?そんなことあるはずないじゃないですかっ!!」


 ローズさんが立ち上がってジーリオ様に食って掛かります。あああ、ローズさん落ち着いて!!


「一つ訂正しておきましょうか?わたしはインキュバスと人間とのハーフですが、正確にはインキュバスは魔物ではありません。種族です」

「何を言って!・・・」

「ローズさんはこの世界で言葉を話せる生き物は人間だけだと思っていませんか?」


 ジーリオ様がローズさんの言葉を遮って問いかけます。ローズさんが無言になったのを見るとゆっくりとソファーに座り直し、ローズさんにも座る様に促します。


「この世界には人間以外にもエルフ族、ドワーフ族、獣人族、妖精族、そして妖魔族がいるのです」


 エルフやドワーフはお伽噺で聞いたことがあります。あれはお話の中だけの存在なのではないのですか?本当にこの世界にそんなにたくさんの種族がいるのでしょうか?


「わたしはその中の妖魔族のインキュバスを父に持って生まれました。ただの別種族とのハーフに過ぎないのですよ。まあローズさんにとってはただの通り魔、ですかね?」


 立ったままだったローズさんが毒気を抜かれたような顔をしてソファーに崩れ落ちました。


 バンッ!!


「はぁ!なんなのよ!わけがわかんない!あんたは何しに来たのよ!?」

「だから最初に申し上げました。謝罪を、と」


 テーブルを叩いて激昂するローズさんをジーリオ様はそよ風のように受け流します。わざと怒らせてませんか?ジーリオ様・・・


「謝罪・・・謝罪ね・・・じゃああんたはわたしに何してくれるって言うのよっ!!」

「そうですね、金銭で良いならそれでも構いませんが、お望みならわたしの命でもかまいませんよ?」

「「なっ!?」」


 ジーリオ様は何を言っているのでしょう!!命ってそんなっ!


「へ~・・・命を差し出すんだ・・・あんたレベルが高そうだし、殺せばわたしのレベルも戻るかしらね・・・」


 どこから出したのかローズさんがいつの間にかナイフを握っています!!


「ローズさん!やめてください!!さすがに命を奪うなんてやり過ぎです!!」


 わたしは慌ててローズさんとジーリオ様の間に割って入りました。両手を広げてジーリオ様を守ります。


「ベアトリスちゃん、どいてくれる?・・・」

「イヤです!ローズさんを人殺しにしたくありません!!」

「そいつは人間じゃないのよ!ベアトリスちゃんもそいつの味方なのっ!?」


 味方?・・・わたしは誰の味方なんでしょうか・・・

 命を狙われているジーリオ様?レベルを奪われ不幸になったローズさん?・・・

 どちらかの味方をしなければならないのでしょうか?わたしは二人の味方でいたい。そうです。わたしはみんなが幸せになれる道をみつけたいのです。


「ローズさんはジーリオ様を殺して幸せになれるのですか?わたしにはそう思えないのです!例えレベルが戻っても、きっとジーリオ様を殺したことを後悔します!ずっとしこりとなって残ります!残りの人生をそんな重荷を背負って生きるんですか!?」

「何を言って・・・こいつは人間じゃないのよ!後悔なんてするわけないじゃない!」


 ローズさんは頭に血が昇って冷静じゃありません!わたしの円満スキルさん!仕事をしてください!!


「じゃあジーリオ様はどうなんですか!?ローズさんからレベルを奪ったことを後悔して、謝罪に来て、命まで差し出すって言ってるんですよ!ローズさんの言う魔物が後悔しているのに、人間のローズさんは後悔しないんですかっ!?それじゃ魔物以下じゃないですかっ!」


 はぁ、はぁ、わたしも冷静じゃないのかもしれません。ジーリオ様が死ぬ未来はどちらにとっても不幸です!それだけは絶対にダメです!


「・・・ふぅ・・・ベアトリスちゃんはどうしたいのよ?ベアトリスちゃんの提案でわたしを納得させてくれるの?」


 わたしはどうしたいのでしょう?答えを持っていません・・・ローズさんの望みがわからないから・・・


「それなら・・・ローズさんも奴隷商で働きませんか?」

「は?・・・」

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