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前夜
物思いに耽る。
前田には本当に悪いことをした。
しかし、これが最善手であることは間違いない。
他の誰にも任せられない。
彼ほど真摯に人々のことを考えられる人間はいないのだ。
さあ、世界はどう転ぶだろうか、決して今まで通りにはいられない。
良くなることもあるだろう。
悪くなることもあるだろう。
そうなれば、悪くなることを減らすこと。
誰かに悪いことがあった時、それをできるだけ減らしてあげること。
即ち人の悲しみを減らすこと。
それが警察官の職務。
しかし、それができる者がどれだけいるだろうか。
誰しも他人の身よりも自分が大切。
それは真理。
でも彼は違う。
自分の身が傷つこうとも、人の悲しみを減らすことを第一に警察官として勤めている。
世界は大いに揺れるが、そんな彼に託したい。
「前田クン、ゴメンねぇ。」
ま、アタシも大丈夫だったしなんとかなるよ。
世界は揺れる。