魔法使い知りませんか?
野菜は八百屋、お肉は肉屋。
まず、素子の故郷、魔法使いの集落で聞き込みを行うこととした。
俺1人で回復術師を探すと言ったのだが、ローラ、素子も一緒に聞き込みをしてくれることになった。
本当にありがたいことだ。
「元はと言えば、ワタシが守っていれば
雫ちゃんはこんな目に遭わなくて済んだのよ。
気にしないで。」
「将来の妹のためなの!(。-`ω-)」
初めてローラの方がまともに見えちゃう!
2人の協力も空しく、朝から昼まで聞き込みを行った成果は芳しいものではなかった。
ふと、目の前の喫茶店が目に入った。
「あそこで休憩しようか?」
「おぉ!(≧◇≦)
カフェデートなの!」
「丁度冷たくておいしい飲み物が飲みたかったのよ。」
魔法使いの集落で喫茶店に入るのは初めてだが、入ってみた感じ、地球コチラのお店と雰囲気は変わらない。
今回は、異世界ムコーのお金をいくらか手に入れている。
素子のお父さんの紹介のおかげで、ボールペンだの、鉛筆だの、不要な私物が割と高値で買い取ってもらえたのだ。
この分なら、あの金塊も売却することは簡単かもしれない。
ここは1つ、普段お世話になっている2人に奢ってあげるとしましょうか。
席に座ると、注文を取りに来た店員さんに、俺はホットカフェオレ、素子はコーラフロート、ローラはミックスジュースを注文する。
「なんで異世界ムコーにコーラがあるの?」
「始祖様が色々なものを子孫に命じて地球コチラのものを再現させたの(*'▽')」
なるほど、気持ちは分かる。
地球コチラから異世界ムコーに急に放り出され、帰れないともなると、地球の文化が恋しく感じるのは仕方がない。
まず、カフェオレが届いた。
魔法使いのコーヒーは苦みが少なく、俺は好んでいるが、アクリル絵の具を溶かしたような濃いグレー色をしている。
その見た目にも、もう慣れたもので1口。
うまい、コーヒーはこっちの方が好きだな、なんて思う。
次に素子のコーラフロートが届く。
しっかり見た目は地球のコーラだ。
コップの内側についた泡が炭酸飲料であることを主張している。
まっしろなアイスクリームが溶けかけていておいしそうだ。
「一口欲しい?(*´ω`*)
あーんってしてあげようか?」
「い、いや、やめろって、恥ずかしいだろ。」
「そろそろイチャつくのやめてもらっていいかしら?
通報しちゃうわよ?」
婚期を逃したことを理由に世界の融合を図った悪神は大層ご立腹だ。
そして、ローラの注文したミックスジュースがテーブルに置かれる。
「やっと来たわ!
怒ってのど乾いちゃっ…?」
ミックスジュース。
果たして、その定義とは?
桃、イチゴ、バナナ…様々な果物を混ぜて合わせたモノ、それがミックスジュースと呼ばれることは明白である。
では、この目の前のモノは?
茶色、黒、赤、青、黄色、緑、白、紫…まるでこの世にある色彩が全て1杯のコップ内に存在しているようだ。
その色達は決して互いに混ざり合う事無く、それぞれがその個性を主張し、悪魔が内容物を無尽に引っ掻き回したようにマーブル状に混沌としている。
時折泡立つし、ほんのり暖かい。
「これは…?」
「ミックスジュースです。お客様。」
質問するローラに店員さんはそれが当然とばかりに淡々と答える。
「ううん、聞き方が悪かったみたい。
何がミックスされているのかしら?」
「くだものとかです。お客様。」
無表情の店員さんに恐怖すら覚える。
「ワタシはと・か・が知りたいの!!」
「他のお客様に迷惑です。お客様。」
「ワタシら以外誰も居ないじゃないのよ!!」
昼食時を少し過ぎた現時刻、客は俺達以外には居ない。
この店員さん、接客業でやっていけているのだろうか。
とりあえず、天職ではなさそうだ。
「申し訳ありませんお客様!
娘が何か気に障ることを
しでかしましたでしょうか!?」
カウンターからマスターが飛び出してくる。
この店は親子でやっているらしい。
「どーしたもこーしたもないわよ!!
質問にくらい答えなさいよ!!」
「申し訳ありません…!
娘は少し人とのコミュニケーションが苦手でして…!」
「経営者なら適材適所に努めなさいよ!!」
正論だ、あの女神が正論を言っている。
「アレには何がミックスされてんのって聞いてんのよ!!」
「それは…その…企業秘密で…」
「この期に及んで濁してんじゃないわよ!!
余計に気になるじゃない!」
女神の怒りはもっともだが、企業秘密と言われれば仕方がない。
仲裁しようとしたその時。
「珍しい、客がいるのか?」
来客。
マスターや、店員さんの表情から、その客が歓迎すべきものでないことは明白だ。
「そうなのです。
お客様がいらっしゃるので、またの機会に来ていただいてよろしいでしょうか。」
「逆だろう。
そいつらを帰して、
私を迎えなければならないのだろうが?」
「お客様である以上、平等に接させていただきます。」
「平等と言うのなら、居させてもらってかまわんな。」
小太りの男は、カウンター席にドカッと座る。
店員さんは、無表情で男の注文を取る。
「ご注文は何にいたしましょうか。お客様。」
「回復魔法の使い手を。」
下卑た笑いが欲するものは、奇しくも俺達と同じもの。
魔法使いなら?




