隣の芝は青い
どこが最善なんて、他人に決められる筋合いはない。
「桐馬さん、行方不明の子、
僕でどうにかすることになりました。」
「それは良かったです。」
桐馬さんは、普段のクールな印象とは違う、優しい笑顔を見せる。
「前田さんのことを、色々言う人も多くいますが、
私は、すごい人だと思っています。」
桐馬さん、ありがとう。
でも俺、陰で色々言われてるんだね?
それも大勢なんだね?
今、初めて知っちゃった!
「桐馬さんからそう言ってもらえると
励みになりますよ。
ありがとうございます。」
心は号泣していたが、平静を装って応答する。
でも、本心だ。
警務課というのは、警察業務全体の管理、来客の窓口対応といった業務を行っている。
よって、刑事課、生活安全課、俺達地域課など、他課に指示、命令とまではいかなくとも、業務上の依頼などを他に回す必要のある場所だ。
当然、嫌な奴、変な奴から仕事が回ってくれば、嫌な気持ちになるのは、どんな仕事でも一緒な訳であって。
そんな理由なのかは知らないが、警務課勤務をする人は、一般的に評価の良い人であると、俺は端から見ていてそう思っている。
現に桐馬さんは仕事は出来るし人格も素晴らしい。
桐馬さんは俺の1年先輩だが、その先輩からそう言う言葉をかけられるのは素直に嬉しい。
「私、交番のお巡りさんになりたくて
警察官になったんです。
でも、希望してもさせてもらえなくって。」
へー、不思議なこともあるものだ。
警務課で勤務する方が難しいのになぁ。
「前田さんは、誰よりも熱心に交番のお仕事をされてます。
私、前田さんを尊敬してます。」
「尊敬なんてそんな…」
「もし、いつか私が交番で働ける日が来たら、
お仕事、教えて下さいね。」
「桐馬さんなら、俺なんてすぐ
追い抜かされちゃいますよ!」
桐馬さんに別れを告げて帰宅する。
何はともあれ、俺に全権が託された。
素子のために、出来ることをやらなければ。
決意を新たに、月影荘に戻る。
いつも出迎えてくれていた大家さんは、もう俺を出迎えてくれはしない。
正確には、チラチラ大家さんちのドアが開いたり閉まったりを繰り返してこちらを警戒しているが、出てくる気配はない。
「辛いよぉ…引っ越そうかなぁ…」
新たにした決意はもう揺らぎつつある。
いかんいかん、気合いを入れろ!
自宅ドア前でカギを探していると、家の中が騒がしい。
「やめて!誰か助けてー!!(◎_◎;)
どうしてそんなことが出来るの!?
アナタには人の心が無いの!?」
ゼンジロウがドアをすり抜けて助けを求めている。
なんてこった、向こうから攫いに来たってのか!?
ごめん大家さん。
ドアをぶち破って助けに入る。
ローラも無事だろうか、間に合え!
「フハハハハハ!
悔しければワタシに追いつけばいいのよ?
リニアカードで逃げるけれど!」
「あ、あぁ…
またボンビラス星に行っちゃう…」
「アラ、おかえりなさいハジメさん。」
「お兄さんお帰りなさい。(=゜ω゜)ノ
コチラでは、ドアを壊して帰宅するのが流行りなの?
どんなに変わった文化でもウチは対応してみせるの!
だからもう1度結婚考えて?」
「もう、やめてよ君たち…」
「ド、ドア壊しちゃったんですか!?
ど、どうして…?
私がペドロイアなんて言ったから…!?」
「違いますから!!
話を紛らわしくしないで!!
ドアは俺が直しますから!」
このアパートどんだけ壁薄いんだ…
こないで欲しいなって時、必ず大家さんが現れるじゃないか…
ひょっとして、わざと来てません?
とりあえず色々共有しなければ、もう俺達に、法律も、常識も関係ない。
ゲームでも貧乏神に愛された少女を救うために、最善の一手を。
他人にはきっと、分かりませんがね。




