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異世界おまわりさんの事件簿!  作者: 早川 ゆういち
ポリスのお仕事 ~行方不明~
32/46

こちら花海署〇〇課、〇〇係!

全話読んだことはありません。

 「分かった、それまで暇を潰しておくとするわ。」


 「すまない。部屋にあるものは何使っててもいいから。」


 俺はそう言って押し入れの中から据え置きゲームを取り出した。


 ゲーム、俺に唯一許された娯楽。


 基本、俺には金がなく、生活における様々な部分において我慢を強いられる。


 だが、休みの日をただ眠って過ごすというのも味気がない。


 ゲームはそんな俺を救ってくれている。

 

 コスパの良さがありがたい。


 購入さえしてしまえば、ゲームソフト1本につき200時間くらいは潰すことができた。


 俺は1本のソフトをカスカスになるまで遊び倒す。


 高いソフトを買うのだから当然だ。


 俺はこれから出勤して署長からありがたいお話を聞かなければならない。


 ローラと素子に、俺が帰宅するまでのお留守番のお供を提供したのだった。


 さて、署長は一体なんの要件で俺を呼び出したか。


 俺としても、新ためてムコーについて知ったこと、素子のこと、共有しなければならないことがいくつかできた。


 署長室に行く前に、警務課で桐馬さんに挨拶をする。


 「おはようございます。桐馬さん。」


 「前田さん、おはようございます。

  昨日はありがとうございました。」

 

 今は、内緒にしてもらいたいんですけど、と前置きした上で俺は桐馬さんに真実を明かす。


 「実は、昨日の山ノ中さん、見つかりました。」


 「え!それは早く親御さんにお伝えしなければ!!」


 「なにやら、深い事情があるみたいなんです。

  今から署長にも相談しますが、ひょっとしたら生活安全課の事件になるかもしれません。」


 「虐待ですか…?」


 「まだ何とも。

  また、後でお話しますね。」


 昨日という日を迎えるまでは、署長室に呼ばれるなど、考えてもみなかった。


 こんなところにも異世界の影響は出てきている。


 「よく来てくれたね。

  まあ、座ってよ。」


 言われるがまま、座り心地のよいソファーに腰を下ろす。

  

 「前田クンの話から聞いてもいいかな?

  異世界人の行方不明者の届け出があったことを聞いているよ。」


 さすが、耳が早い。


 魔法の存在。

 

 異世界の文化が想像以上に多岐にわたること。


 そして、山ノ中素子のこと。


 を報告する。


 「うむ。」


 流石、署長様は落ち着いていらっしゃる。


 「山ノ中素子の件については、生活安全課の応援を依頼して、

  保護する流れに乗せてよろしいですか。

  彼女のためには、それが最善と考えるのですが。」


 「その必要はないんだ。」


 この期に及んでこの人は。


 じゃあどうやって素子を守るというのか。


 「教科書通り親に引き渡したところで、

  不幸な少女が生まれるだけではありませんか!」


 「いや、そうは、言っとらん。

  生活安全課の応援の必要がない。

  ということさ。」

 

 署長は続ける。


 「過去にね、居たんだ、1人。

  ムコーに渡ったことのある警察官が。」


 「え!?初耳です!?」


 「そりゃそうだよ。

  今初めて言ったんだから!」


 ニカッと笑う署長。


 おい、まさか。


 「そう、もう40年近く前になるがね、私がたどり着いた国は、

  権力者の圧政もあり、治安も最悪でね、いろいろと骨が折れた。」


 「署長が?

  どうやってコチラに戻られたのですか?」


 「アタシは召喚という方法で呼ばれたんだ。

  召喚にも色んな種類があったみたいだが、私が呼ばれた召喚では、

  使命を果たせば戻れる仕組みとなっていた。」


 「使命、ですか。」


 「アタシを召喚した者は、義憤に駆られた貴族に買われた平民出の娘でね、

  貴族に命じられ、圧政を敷く王族を支配の座から引かせること

  を使命としてアタシを召喚したみたいだね。」


 なんて話だよ…


 一昨日までじゃ、とても信じられなかったな。


 「ま、当時のアタシは、正直圧政なんてものにはあんまり興味が湧かなくてね。

  なんせ話が大きすぎるだろ?

  目の前の理不尽をどうにかしようとしてただけだったんだ。

  そうするためには、その国の法律、常識、

  そんなもの守ってちゃあ守れないものばかりだった。」


 「結局さ、目の前のことに抗い続けていたら、いつの間にか

  王様までたどり着いて引退させちゃったんだよ。」


 それ、なんか「アレ、俺また何かやっちゃいました?」っていうのに近いものを感じるな。


 「実は、まだムコーに仲間が何人か居てね、コチラとムコーが

  1つになるかもしれないなんて絵空事を、アタシは聞いていたんだ。

  そして、その中心地があのライブ会場になることも知っていた。

  責任者があの笹井であることも…」


 「アタシは、それを知っていながら、キミを会場応援に向かわせた。」


 「…なぜです?」


 俺の悪い癖だ。


 今、怒りが顔に出てるだろうな。


 「本当に申し訳ない。

  でも、世界のことを考えれば、キミを向かわせるのが

  最善だとしか思えなかった。

  現にキミは、Kinoさんを異世界の危険から守り切り、

  さらに、異世界の少女を守ろうと考えを巡らせている。

  そんなことは万人にはできない。」


 それを踏まえて聞いて欲しいんだ。


 署長の声が少し、低くなる。


 「先ほどまでアタシは、ちょっとした会議に参加していた。

  その際、花海署に現状、最も世界について情報を持った

  警察官が居ることを報告した。

  前田クン、君のことだよ。」


 「はぁ、それが?」


 「会議の参加者で交わされた情報から、想像以上に世界中、

  大混乱であることが判明した。

  この混乱を治めるためには、教科書通りのことをやっていては間に合わない。」


 そんなこと、さっきから言っているじゃないか。


 「国だの、法律だの、そんなしがらみに縛られない、

  独立の遊撃治安維持部隊を設立すべきだ。

  それをアタシは進言した。」

 

 警察官が法律に縛られないなんてありえない話だ。


 通る訳がない。

 

 「複数の国が新たに地球に増え、領地も隣合い、

  お互いの生活の常識を押し付けあっている現状。

  様々な事案について、どちらの法を、どちらの常識を、

  どちらの文化を、どちらの人間を信じるべきか、

  守るべきか、即座に判断する必要が出てきている。

  そこに、地球だけの、日本だけの、そんな事情なんて

  人を救うのに関係ないとは思わないか。」

  

 正論だ。


 事情を理解していれば、なおさら。


 「なら、テストケースをお宅でやってみてはいかがかなどと言われたよ。」


 きっと、問題ごとの責任を誰も負いたくなかったのだ。


 「だから、アタシはそれを、快く了承してやったんだよ。」


 あぁ、そう来ますか署長、俺にだって、心の準備が…


 「前田クン。責任は全て私がとる。」

 

 あぁ、なんだってこんな規格外の話の真ん中に俺が居るはめになったんだろう。


 今まで、俺の悩みと言えば、どうやったら上司が働いてくれるか。


 どうやったら切符切るときに文句言われないか。


 どうやったらけんかの仲裁をうまくできるか。

 

 そんなことだった。


 そんな交番のお巡りに、何をそんなに期待するというのか。 


 「君には、花海署異世界治安維持課遊撃係として、勤務を命ずる!

  

  異世界がらみの事案については、君が正しいと思うことをしなさい。」


 「了解!」


 上司への返事には、了解しか、応答する言葉は存在しない。


 その相手が、かつて異世界を救った勇者であろうとも。

でも、読んだことのある話は全部面白かったです。

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