異世界コミュニケーション
僕もよく慣れてるって言われてました。
景色がころころ変わるためか、道のりが伸びたことがあまり気にならない。
少し進んでは、見知った建物を見つけ、進んでいる方角が間違いではないことを確かめる。
すると、大きな川に出た。
川幅は1km以上ありそうで、流れも速く、自力では渡れそうにない。
周辺を見渡すが、向こう岸に渡れる橋が見当たらない。
川は澄み渡っているが、水底は確認できない。
かなり深そうだ。
ワゴンを止めて相談する。
「どうやら地球の川じゃないな。」
「あ、あれ!」
Kinoが指さした先には木桶を抱えた少女が見えた。
近所に住んでいる人かもしれない。
警察官が道を聞くなど言語同断かもしれないが、今回ばかりは許してほしい。
どうやら生活用水をこの川から組んでいるようだ。
警戒させないよう、ゆっくりと近づく。
3mくらいの距離に近づいたとき、目線を合わせるために地面に片膝を着き、笑顔で優しく声をかける。
「こんにちは、聞きたいことがあるんだけど。」
こちらを振り返った少女は少し後ずさりして、警戒する。
と、俺達も少し驚く。
少女の東部には2つの大きな犬のような耳がついていた。
黒色のふわっとしたボブヘアー、茶色い編み紐にグレーの石が括りつけられた簡素なペンダント、黄緑色の麻みたいな素材のワンピースを着ている。
歳は7,8歳くらいか。
少しの間を置いて少女はオロオロし始める。
表情なんかを見て、恐らく俺達が困っていることを察してくれたのかもしれない。
言葉が通じない。
しまった、困らせてしまった。
近ずくまでムコーの人だと思っていなかったからな…考えていなかった。
「ハジメ君、あれ使ったらどうかな?
マタンゴのチカラ!」
「なるほど!」
擬似テレパシーを使えば、俺たちが川を渡れずに困っていることを伝えることが出来るかもしれない。
他人の思考をいたずらに読み取ることはもうごめんだが、こっちの気持ちを伝えることには大いに活用させてもらおう。
…細心の注意を払いながら。
胞子でさっとお互いを包み、簡単に要点だけを伝える。
すると、少女は笑顔で北側に渡しの船を営んでいる店があると教えてくれた。
「お兄ちゃんはハジメっていうんだけど、お名前はなんて
いうのかな?」
「ロコっていうの!」
「ロコちゃん、ありがとう、助かったよ!
これはお礼の飴玉だよ。」
イチゴ味の大きい飴玉を手渡す。
飴玉がなにかよくわかっていなかったようだが、やがて口に含んで嬉しそうにしている。
ロコと別れた俺達は北側に向かう、船にワゴンも乗ればいいけどなぁ…
なんて考えるが、おそらく、無理だろう。
あくまで単純計算だが、この辺りからだと、おそらく徒歩で20分ほど歩けばキングホテルには辿り着けるだろう。
ワゴンを持っていかなくてもなんとかなるはずだ。
「ハジメさん慣れてたわね。」
「なにがだよ?」
「小さい子供への声のかけ方よ!」
「あぁ、妹がいるからかな、それに、警察官になる前は結
構近所の小さな子の面倒見てたんだ。」
「そうじゃなくって、しっかり名前まで聞いちゃって、ハ
ジメさんああいう小さな子がタイプだったのね!」
「え…?」
ズズッとKinoはドア側に距離をとる。
「オイ!その疑いをかけることを辞めないか!」
「おかしいと思ってたのよ!!
ワタシ達に好意を持てとは言わないわ!
けれどもね、ワタシやKINOちゃんって客観的に見て
もやっぱり美しいもの。
そんなワタシ達に何の興味も示さずにあんないたいけな
子供にだけナンパするなんて、絶対におかしいわ!!
ワタシ達飴玉1つ貰ってないもの!!
そこから導き出される答えは1つなのよ!」
「ナンパなんてしてねぇだろが!言いがかりはよせ!」
「警察官になる前は…
近所の幼女の…
面倒を見ていた…?」
「疑問を持つな!!そのままの意味で受け取ってくれ!!
男の子もおったわ!!!」
「男の子もイケるの!?」
「うわぁあん!!」
騒がしいワゴンは北へと向かう。
この程度の日常の変化であれば、異世界交流も悪くはない。
やっぱり慣れてるなんて言われたことありません。




