性善説
じゃあ、どこまでが善い人で、どこからが悪い人なのか。
「管理官、本当は、僕らが穴に落ちた後、
どうしたんです?
きっと探してなんかないんですよね?」
「失敬だな、君は!
署長に報告したとおりですよ。
部下とともに捜索したのです。」
会話して、引き出したい事象に意識を向かせた。
準備は整った。
無慈悲に俺と、Kinoを見捨てた姿を晒すか、懸命に使命を全うする警察官の姿が現れるか。
さあ、吐き出せ!!
ふわっと舞う無数の胞子は、瞬く間に管理官の姿を包み隠す。
今俺達に見えている管理官は、胞子が形作った幻。
俺達の知らない真実の再現が始まる。
次震が収まった後、1人現場を訪れた管理官。
チラリと穴を見やった後、穴周辺の瓦礫を穴に押し入れて、穴の中にいるはずの俺達にトドメを刺す姿。
「このために私は体を鍛えてきたのかもしれないなぁ!」
という醜いセリフ。
それらは確かに彼の心を材料に再現されたもの。
「「「エェ、、・・・・?なにこれぇ・・・?」」」
大誤算だった。
おかげでこっちはドン引きだ。
想像の1億倍はエグイことをされていた。
実行前の作戦会議において、
『一目散に逃げ出すところが映ったらいいなぁ!!』
『いやいや、そんなうまく行かないわよ!』
『そうだよ、初めて使う力だし、それに、案外捜索とか、
救助とかしてくれてるかもしれないよ?』
『『『だよね~!!!』』』
なんて俺達の会話は平和そのものであった。
大体これについては、俺の復讐計画においてサブプランもいいところだ。
そりゃそうだろう?
自分の目の前でこれが起こったと想像して欲しい。
いきなり目の前で本人出演の再現ドラマが始まったとしても意味も理由も分からない。
それが何なのかも理解できないでしょ?
俺達は、ただちょっとおじさんに恥をかいて欲しかっただけだったのだ。
身に覚えのある醜い行動が周りに晒されるだけで良かった。
「こんなもの!事実無根だ!」
と否定するだけで事足りる、なんの証拠も、根拠もないもの。
それを狙っていた。
そしたらこんな人の醜いところを1か月寝ずに煮込んだような結果が現れてしまった。
怖くて今夜は眠れそうにない。
管理官には睡眠不足の責任を取って欲しい。
場面は猛スピードの車中に移る。
部下が管理官に、現場に戻って捜索を続けるように進言する。
「死にたいならお前だけ戻れ!!
私を殺そうとするな!!!
お前1人で死ね!!!」
と抑えつけたのだった。
「「「「えぇ~・・・・?」」」」
今度は署長も唸っている。
早く、早く胞子を止めないと!!!
アンタちょっと吐き出し過ぎだから!!
シュッと胞子が消えたあと、管理官本人は泡を吹き、白目を剥き、具体的には言えないけれど、いろんなところから液体と固体が漏れ出していた。
やりすぎた。
自業自得なんだろうけれど、なんてこった。
目を覚まさない管理官は、一時的に休憩室で寝かせている。
ベッドを汚さないようにブルーシートで包んで床に寝かせることにした。
創造力、思っていたより威力が高い。
使い道を誤らないようにせねば。
疑似テレパシーのこんな使い方はもうしないけれど。
数舜の後、我を取り戻した署長は、
「ほ、報告は以上かな?
とりあえず、君には休んでもらいたいところじゃけど
も、他に人がおらん。
申し訳ないけれど、体に余裕があれば、署の車を使って
Kinoさんを送ってあげてもらいたい。
どうかな?」
「了解!行って参ります!」
署長は喜んだように、2度、3度頷く。
「そういえば、そちらの女性も被災者かな?」
「ワタシにはお気遣い結構です。
自分で帰れますので。」
「そうですか、では、前田クン、よろしく頼むよ。
今は時間がないけれど、話したいことがいくつかあるん
だよ。
ワタシは嫌われているとは思うけれど、
明日の昼にでも、所長室に来てほしいな。」
「了解!」
上司への返事は了解しかないのだ。
どんなに憎い相手でも。
警務課のお姉さんから変わってしまった地理について説明をもらう。
〇 距離はどの目的地に向かうにも2倍ほど伸びている
〇 目的地に向かうについてその方角は変わっていない
〇 無線の類は使用できない
〇 襲って来ることは今のところないが、新種の生物が
多数見受けられるようになった
とのことであった。
お礼を言って出発する。
キングホテルには車で30分くらいだったから、1時間はかかるかな。
皆様、シートベルトは忘れずに。
点数1点、反則金なし。




