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第3節 『すべてを奪われた日々』

最期主人公が無双します!!

よろしくお願いします!!

実験のモルモットに成り下がってからどれだけ経っただろうか。

薄暗い牢屋でボロボロの手術着を身に着けた美少女・・・・いや、美少女が横倒しになって、ギュッと手足を縮めて、まるで胎児のように丸まっていた。


白波しらなみ 刹羅せつら』。

クラスの風紀委員長。

170cmと女子にしては高い身長と茶髪のロングヘアそして、やや吊り気味な瞳が特徴的な美少女である。しっかり者の性格が災いして、抜群なプロポーションとルックスを持っているのに男子からは『口うるさい』と言われ男子からは其処まで人気がない美少女。


だが、実験用モルモットとして過ごした一週間が刹羅から、以前の様な勝気さと人間・・らしさを奪っていた。


「ひっ!?」


牢の外から響いた悲鳴に刹羅がさらに体を丸め、青白い魚類のようなエラに変質した両耳を、白蛙の手に爪が生えたような奇怪な両手で防ぐ。

その際、刹羅の両耳にジメっとした不快さが伝わり、改めて自分が人間ではなくなったことを伝える。


(どうして、私がこんな目に?)


一週間何度も頭を巡った疑問が、今日もまた呼び起こされる。

そこから、拷問のような日々を思い出す。


【折角の上物だ!!モルモットになる前に味わせてもらうぜ】


【いや、やめてーーー!!】


【そう怯えるな。実験に耐えられるように、しっかり可愛がってやるからよ】


見も知らずの男たちに純潔を無理やり奪われた日を。


【うぐっ】


【ほう。これだけの劇薬に耐えるとは・・・流石は異世界人なだけはあるな】


【これなら、古の魔獣にも耐えられるぞ】


【モルモットになる為に、生まれてきた女だ】


身体の耐久性を調べると称して、あらゆる毒物や劇薬を注入された日を。


【嫌!こないで!!】


【そういうなよ!】


【実験のご褒美に、今日もちゃんと可愛がってやるよ!】


【いやー!!】


実験という名の拷問によって疲れ果てた自分に容赦なく欲望をぶちまけられた日を。


【では、海王『リヴァイアサン』の細胞を注入します】


【んー!んー!】


【注入開始】


自分の体内に白い液体を埋め込まれ、体を作り替えられた日を。


【うえ、なんだよ。あの手と耳。蛙なのか魚なのかもわからねーよ】


【いや、それより肌だろ。なんだよ。あの白い鱗】


【まさに蛇だな】


【あぁ、上物だったのに勿体ねーことしたな】


意識が飛ぶくらいの痛みに耐えたのに、好きかって罵詈雑言を放たれた日を。


【はー、はー】


【仮にも『海王』と恐れられていた古代魔獣。こんなものではないはずだ!!】


【まだ、力を使いこなせていないようだな。次の魔獣を入れろ!!】


【はっ!】


【おい!いつまで休んでいる!さっさと起きろ!】


【うぐっ!!】


首に着けられた『従属の首輪』によって、無理やり魔獣と戦わせられる日を。


【オプ!?】


【おら、洗浄の時間だ!】


能力実験で疲れ果てた自分に冷水を掛けられた日を。


蛇のような割れた青瞳から自然と涙が溢れ出た。

その時、鉄格子が乱暴に叩かれる。


「ひっ!?」


「おい!蛇モドキ!!餌の時間だ!!とっと食え!!」


かつて自分を犯した粗暴な兵士が牢屋の中にドロッとした物体が盛られた皿だけ(・・)を置く。

刹羅が恐怖に震えながらノソノソと四つ這いで皿に近づき、慣れたように皿に盛られた物体を食べ始める。

犬のように餌を頬張る刹羅の姿に兵士が気持ち悪い笑みを浮かべる。


「・・・そうそう。それが、オマエ等『スカ』の正しい態度だ。だというのに、あの餓鬼。最後まで俺たちに抵抗しやがって」


忌々しそうに放たれた兵士の言葉に刹羅がピクッと反応する。


(・・・・・・・・・・まだ、抵抗してるんだ。雨宮の奴。無駄なのに)


クラスメイトの無駄な抵抗に呆れつつも、その反骨精神に感心してしまう。


(でも、アンタらしいといえばアンタらしいわね。私がいくら注意しても、バカやって自分の想いのままに行動していた。だから、私はーーーー)


そんな刹羅の心情を他所に、兵士は暗い廊下の奥を見る。


「だが、それも今日で終わりだろうな」


「え・・・・」


兵士の言葉に刹羅が皿から顔を上げる。

その刹羅の反応に、兵士がニヤリと笑みを浮かべる。


「なんだ、気になるのか。だったら、教えてやる。あのクソガキはあの反抗的な態度と同じく身体の耐久力もお前ら『スカ』の中でも群を抜いていてな。どの魔獣を移植させるか迷っていたんだが、今日、決定した」


「・・・・・・・・何を移植する気なの」


恐怖に震えながら刹羅が兵士に問いかける。


「悪王『アジ・ダカーハ』だ」


「悪王『アジ・ダカーハ』・・・・」


「悪王『アジ・ダカーハ』。世界の3分の1を焼き尽くした三頭の邪竜だ。神話の時代・・・・この国が建国される前の時代、多くの異能者たちが総力を挙げて討伐しようとしたが、敗れた。死後、奴の死体から湧き出た厄災さえ俺たちは消し去ることができなかった。紛う事なく、魔獣の王だ」


「・・・・雨宮」


刹羅が不安げな表情で兵士が見ていた方向を見る。


「魔獣は強ければ強い程、移植された時に発生させる負荷と激痛は大きくなるというからな。あの餓鬼もこれで心が折れて大人しくなるだろうよ。いや、それとも一部のクラスメイトのように正気を失うかな・・・」


兵士が歪な笑みを浮かべたその時


「ギャー―――――!!」


「お、おい!よせ!やめろー!!」


「ば、バカな!!なぜ、『従属の首輪』が、ギャー!!」


廊下の奥から響き渡る怒声と悲鳴に兵士が戸惑いながらも、素早く腰から剣を抜く。


「な、なんだ!?」


やがて悲鳴と怒号がやみ、ペタペタと此方に近づく足音が響き渡る。


「な、何が起こってるんだ」


そして・・・・・


暗がりから、全身に三匹の赤蛇が這い廻ったような歪な紋様を施した筋肉質の青年が現れる。

暗闇から現れたその青年と目があった瞬間、刹羅の口が勝手に動く。


「・・・雨宮?」


記憶の中にある雨宮魁人とは大きく異なった外見だ。


モジャモジャ天然パーマではなく、黒髪ストレートだ。

目つきもおっとりとした目ではなく、鷹の様な鋭い眼だ。

バカ騒ぎを起こしていた和気あいあいとした雰囲気ではなく、何処か冷たい雰囲気を放っている。


だが、刹羅には確信めいたものがあった。

この青年は、阿保な高校生 雨宮魁人だと。


「・・・・・・・・」


そんな刹羅の呟きには答えず、魁人がゆっくりと右手ーーー黒鱗に覆われ、鋭利な光を放つ爪を生やした奇怪な右手を持ち上げる。

その拍子に爪から返り血が零れ落ちる。


「この糞餓鬼、俺の仲間に何しやがった!!」


兵士が斬りかかろうとしたその時


「・・・・・ترور」


魁人の口から聞きなれない言葉が紡がれ


「・・・・え」


兵士の首が宙を舞った。


(な、何が起こったの!?)


戸惑う刹羅を他所に、頭部を失った兵士の身体が床に倒れる。

その有様に


「・・・・・弱い癖に向かってくるなよ。めんどくさい」


魁人が退屈そうに呟き、刹羅の牢の前に立つ。

感情豊かに馬鹿騒ぎしていた姿からは想像できないほど、冷徹な瞳が刹羅を射抜く。


「雨宮・・・・」


その変わり様に恐怖する刹羅を無視して、魁人が奇怪な右手を鉄格子に翳し


「・・・・تخریب」


先程とは違う言葉を呟く。


「うわ・・・・」


すると、魁人と刹羅を隔てていた鉄格子が青炎を上げて燃え散った。

そして・・・・


「・・・・折角だ。俺自身・・・の『異能』の試運転に付き合ってもらおうか」


魁人が沈む三日月のように、頬まで裂けた歪な笑みを浮かべる。


「あ、雨宮」


「大丈夫。悪いようにはしないよ」


あまりの変貌ぶりと心の奥から湧き出た恐怖から、刹羅が思わず後ずさる。

だが、一気に距離を詰めた魁人が普通・・右手・・で刹羅の頭部を掴む。

そして・・・・・・


「異能『■■ーーーー」


(一体、どうしちゃったの・・・)


魁人が何かを言い終える前に、刹羅の意識が途切れた。











記録




王歴1021年 蒼苺あおいの節 14日




『スカ』判定を受けた生徒(17人)、古代魔獣の肉を移植される。



現状


『異能力者』:24名(生存者24名、死亡者0名)




『スカ』:17名(生存者17名、死亡者0名)




合計:41名(生存者41名、死亡者0名)



今日中に、次話が投稿できるように頑張ります!!

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