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第1節 『選定の宝玉』

一話、公開です。なるべく連続で投降できるように頑張ります!!

誰も見ていないから、設定を書き換えました


両腕で顔を庇い、目をギュッと閉じていた魁人は、ザワザワと騒ぐ無数の気配を感じてゆっくりと目を開いた。そして、周囲を呆然と見渡す。

まず目に映ったのは、巨大な旗だった。見たこともない紋章が金糸で描かれた旗が壁から垂れ下がっていた。社会科赤点ギリギリの魁人でも、その旗が元の世界の物ではない事は一発でわかった。なぜなら・・・・・


(・・・・・・・俺が言うのもなんだが、厨二病じゃん。このデザイン考えた奴、絶対阿保だったに違いない)


厨二病患者が真っ先に追いつく六芒星を中心に龍が円を描いたデザインだからだ。

他のクラスメイトたちの視線も可愛そうな物を見るような眼で国旗を見詰める。


「・・・・・あれが俗に言う厨二というやつなのね」


自分に向けられた言葉ではないのになぜかダメージを受けてしまう。

頭を軽く振り、魁人は状況を整理する為に辺りを見渡す。

どうやら自分たちは巨大な広間にいるらしいということがわかった。


(・・・・あれ、大理石か?)


美しい光沢を放つ滑らかな白い石造りの建築物のようで、これまた美しい彫刻が彫られた巨大な柱に支えられ、天井はドーム状になっている。


(まるで、大聖堂だな)


魁人たちはその最奥にある台座のような場所の上にいるようだった。

周囲より位置が高い。


「・・・・・・まるで祭壇ね」


魁人の前方にいたポニテ―ルをした美少女が警戒した表情で呟く。


彼女の名前は『江口春歌えぐちはるか』。

このクラスの学級委員長にして、棒術道場の一人娘である。

ポニテ―ルにした長い黒髪が自慢のトレードマークである。鋭い切れ長の眼だが、眼の奥から柔和なイメージを与える為、冷たいよりカッコいいというのが周囲からの印象である。身長は167cmと女子にしては少し高めだが、その高身長と引き締まった身体、そして面倒見の良さから、一部からは『姐さん』と呼ばれている。


「その通り。コレは私の『異能』を発動させるのに必要な祭壇だ」


暗がりから王冠を被り手には王錫を持った60代前半の老人が数十人の騎士たちを引き連れて現れる。その男に対し、隼人が警戒心むき出しで叫ぶ。


「誰だ!あんたら!」


「貴様!何と不敬な!!」


背後に控えていた騎士が隼人の不遜な物言いに怒るように声を上げる。

そんなお付の人を手で制す王様(?)。


「よい。いきなり、このような場に呼び出されれば、警戒もする。そう目くじらを立てるな」


「し、しかし、分かりました」


「申し訳ない。余の家臣はどうにも頭が固くてな」


「は、はぁ」


王様(?)が好々爺とした微笑を見せた。


「話が逸れたな。余の名は、『ロイド・V・パルテギア』だ。この『パルデギア王国』の国王である」


(・・・・・・社会科の『桂里奈』先生の反応からして、マジで異世界ぽいな)


魁人が左斜め後方で戸惑う社会科教師を一瞥する。


彼女の名は『真藤しんどう 桂里奈かりな』。

今年26歳となる社会科の女性教師。

身長は170cmと女性にしては高身長だが、モデル顔負けのスタイルとルックス、長いロングヘアを揺らしながら、生徒の為に働く姿から男子からも女子からも人気を持っている。


そんな困惑する生徒と教師を静かに観察していたロイドが微笑む。


「立ち話もなんだ。客間へ案内しよう」


魁人たちはロイドの指示に従い、巨大な円卓といくつもの椅子が椅子が置かれた広間へと辿り着いた。

案内されたその広間も例にもれず煌びやかな作りだ。素人眼にも調度品や飾られた絵、壁紙が職人芸の枠を集められたものであることがわかる。


(・・・・・場違い感半端ないんですけど)


小市民の魁人は恐縮しながら席に座り、自然体に席に着く男子生徒を見る。


(流石ブルジュワ。平然としてるな)


今村浩二いまむらこうじ』。

今村グループという大企業の御曹司。

身長は170cmの中肉中背の男子生徒で、金髪に染まった髪をオールバックにしている。

成績、スポーツ、容姿は魁人と同じく平均的だが、莫大な資産と将来性から女子からの人気が高い。


(そして、あの女も平常運転、と)


魁人が当たり前のように、浩二の横に座る美少女を白けた表情で一瞥する。


木下麻衣子きのした まいこ

幸福はお金で買えるという心情を掲げる見てくれだけの美少女。

150cmと低身長に童顔、ボブカットの顔を揺らしながらコロコロ笑う姿に庇護欲を誘う。だが、その可愛らしい容姿とは似つかわしくない性格を持っているが故にクラスからの評判は悪い。因みに浩二の前では巧妙に隠しているので、浩二はその本性を知らない。


そんなクラスメイトたちの様子を観察していると、タイミングを見計らったように絶妙なタイミングでカートを押しながらメイドたちが入ってきた。


「ブヒー!!!!マジメイドでござる!!流石、異世界、秋葉に出没しているなんちゃってメイドとはクオリティがまるで違うでござるな!!」


「・・・・・・・・」


魁人の左隣で、テンション爆上げで立ち上がって騒ぐ男子生徒を魁人がベルトを掴んで強制的に席に座らせる。


「何をするでござるか!!雨宮氏!!」


「騒ぐな。俺らまで変な眼で見られるだろうが」


文句を垂れながら再び立ち上がろうとする男子生徒を魁人が抑え込む。


「変とはなんでござるか!!彼女たちの恰好を見て雨宮氏は何も感じないでござるか!!」


その問いかけに魁人が何事もないように黙々と給仕するメイドを一瞥して口を開く。


「プロ意識が高いな、とは思った」


「流石、雨宮氏お目が高い!!そう彼女たちが来ているメイド服は秋葉原の似非メイド共が来ているーーーー」


「お前の気持ち悪い笑い声と解説、視線にも全く動じていない」


「其処じゃないでござる!!それに、拙者の何処が気持ち悪いでござるか!!」


「全部」


「ブキ―!!」


魁人が執辣な対応に、男子生徒は地団駄を踏む。


はやし 光里ひかり』。

重度のメイドオタクで、魁人の友達。

身長160cmと男子にしては小さい上、肥満体系。おまけにブヒブヒと豚のように笑う事から、友人以外のクラスメイトからは嫌われている。(ちなみに魁人はアニメオタクである)


「まぁまぁ、光里くんも落ち着いて」


「そうだな。光里が気持ち悪いのは今に始まったことじゃないだろ」


「フォローになってないでござるよ!!『森野』氏!!」


そんな二人の漫才(?)の間に一人の男子生徒が割って入り、光里の左隣にいた男子生徒がフォロー(?)を入れる。


二人の間に割って入って仲介した男子生徒の名前は、『中村なかむら 亮介りょうすけ』。

重度の機械オタクで、魁人の友達。

身長は176cm、体つきも中肉中背で魁人と同じ体系をしている。

隼人程ではないが、顔立ちは整っており、サラサラの黒髪がよく似合うイケメン。

争いごとが嫌いな温和な性格をしている。

また、機械オタクなだけあって、理系科目は常にダントツの一位を不動のものにしている。


そして、光里の左隣に座ってフォロー(?)を入れた男子生徒の名前は、『森野(もりの) 祥吾(しょうご)』。

重度の軍事オタクで魁人の友達。

身長は180cm、体つきは3人と違い細身ながらも引き締まっている。

魁人と同じで平凡な顔つきをしているが、スポーツ万能な為、女子にはソコソコ人気がある。

性格は一見クールだが、友人が傷つけられたら、手を出さずにはいられない性格。


そんな4人の阿保な即興コントに、戸惑っていたクラスメイトたちも落ち着きを取り戻し始める。

隼人が笑みを浮かべ、手を叩き始める。


「そろそろいいか。4オタ」


「「「その呼び名はやめろと言ってるだろ(でござるよ)!!」」」


「あはは・・・ごめんね。煉獄くん」


亮介が曖昧な笑みを浮かべながら席につき、魁人たちが抗議な声を上げる。

隼人は3馬鹿の抗議を軽くいなし、ロイドに視線を向ける。


「では、落ち着いたところで、一から説明しよう」


そう言って説明し始めたロイドの説明はとても身勝手なものだった。

要約するとこうだ。

この世界は大きく分けて4の国に別れるそうだ。


一つ目は、最南の温和な大地で、高レベルの異能者が団結してできた異能大国、『パルデギア王国』。


二つ目は、最北の寒冷な大地で、騎士と皇帝が築いた武装国家『アイングラム帝国』。


三つ目は、最西の霧の込もる広大な樹海に、狩猟を得意とする民族が住み着いてできた狩猟国家『フォグラシア連邦』


四つ目は、最東の荒れ狂う海にポツンと浮かぶ島国に、独自の文化を気付いた閉鎖国家『ジルグニス』


ジルグニスは鎖国をしき、残りの国が睨み合うことで、三竦みの関係を600年も維持していたそうだ。だが、最近になって状況が一辺したという。


それが、アイングラム帝国とフォグラシア連邦が同盟を結びパルでギア帝国に宣戦布告したというものだった。

これの意味するところは、600年間保ってきた三竦みの関係が崩れたということ。

つまり、パルデギア王国は一気に滅亡の窮地に立たされたのだ。


「宣戦勧告が出された今、敵がこの国を滅ぼしにくるのは時間の問題。いくら王国が最強の異能国家であったとしても、2つの強国から責められては一溜りもない。・・・・よって、余は最後の手段をとった・・・・・それが余の異能『儀式召喚』。異世界から素養のある者をこの世に呼び出す禁忌の異能を使うことを決断したのだ」


「ふざけないでください!!」


桂里奈が突然立ち上がり、ロイドを睨み付けた。


「誘拐した挙句に戦争に参加しろですって?私の生徒は戦争の道具じゃなんかじゃありません!!わかったら、ささっと返してください!!」


キッとロイドを睨み付ける桂里奈に対し、ロイドは深刻そうに目を瞑る。


「・・・・・申し訳ないが、余の異能『儀式召喚』は一方通行・・・・連れてくることはできるが、帰すことはできないのだ」


「そんな勝手なーーーっ!?」


ロイドの物言いに桂里奈が堪忍袋の糸が切れたのか、ロイドに詰め寄ろうとするが、その前にロイドが立ち上がり


「申し訳ない」


床に額を擦りつける。一国の王が遥かに年下である自分たちに土下座をする。

これに周りにいた騎士やメイドは慌てふた向き、魁人たちも戸惑うしかなかった。


「だが、余も国を守る為に必死なのだ。だから、頼む。余の国を救ってほしい!!」


「だからってーーーーー」


「その代わり、誓おう!!もし、この危機を乗り越えることができたなら、必ず元の世界へ返す術を探し出して見せると!!」


その一生懸命なロイドの姿に、桂里奈は席に戻る。

その姿にロイドは静かに「ありがとう」と呟いた。


(この人、すごくいい人かもしれないな)


魁人が心の中でそんな感想を抱き、他のクラスメイトも同じ感想を抱いていた。

そして、隼人が静かに問いかけた。


「それで先程話された素養というのは?」


「あぁ、強力な異能力者を呼び出せなければ意味がないからな。その為、魔法陣には素養のある者を選定し呼び出す術式が施されておるのだ」


(俺TUーーー)


「俺、TUEEE----!!展開キ、ブベッ!?」


魁人が思い浮かべた言葉を光里が叫ぼうとするが、祥吾が腹パンして無理やり黙らせる。


「俺、なんだ?」


「気にしないでください。阿保が阿保な言っただけですから」


「う、うむ」


戸惑うロイドに隼人が再び問いかける。


「それで、此処にいる全員にその素養があると?」


「それをこれで確かめる」


ロイドが背後にあるカーテンが開き、中から巨大な水晶玉が姿を見せた。


「『選定の宝玉』。これで異能力者を判別し能力を解明する」


その水晶玉に全員が心躍らせた。

自分たちは一体どんな能力をやどしているのかを。


だが、魁人たちはまだ知らなかった。

それがこのクラスを分断する悪魔の道具であるということを。













記録

王歴1021年 蒼苺(あおい)の節 7日

2年4組の生徒(40人)と社会科教師1名、パルデギア王国に転移する。


現状

生存者41名

死亡者0名



        





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