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9話 咲良の失恋

咲良が、凛子に手紙を声に出して読むように言われ、逃げ出した次の日のこと、

咲良は公園であったことについて凛子に何か言われるんじゃないかと、ドキドキしながら学校に向かった。

しかし、当の凛子はそんなことなかったかのように、いつものように過ごしていて、話題にすら上らなかった。


その日の夜、咲良は逆に気にされないことが悲しく、涙した。

そして、凛子に受け取ってもらえてなかった手紙は、まだ咲良のカバンの中にあった。

手紙を取り出すと、昨日に握りしめながら逃げ出したので、クシャクシャになって、それがさらに物悲しい気持ちにさせる。

咲良は手紙の封を切り、自身の想いを綴ったメッセージを読む。

そこには咲良の凛子に対しての想いが、十分に伝わると思える内容だった。

咲良は読みながら涙する。


凛子の元からに逃げ出している時に、偶然出会って話を聞いてもらった美月のことを思い出す。

そして、あの時にもう一度告白すると、誓った気持ちを取り戻していく。


でも、どうやって想いを伝えればいいんだろう。

教室で二人きりになった時? いや校舎裏に呼び出し?それとも屋上で?

どれにしても口頭で伝えられるのは、私には難しいよ。

私自身のやり方があるって言われたけど、それが手紙なのに。


咲良は手紙をじっと見つめる。そして気づいた。

そうだ、朝早くに学校に行って、手紙を凛子の靴箱に入れておけばいいんだ。

そして、手紙に一文で、その日の放課後に公園で待ってます、と一文を追加すれば会って話もできる。


咲良は名案に心が躍り、すぐさま新しい手紙を取り出して、クシャクシャになった手紙に書かれた文字を写し写し記載していった。

書き終わった時には咲良は希望が満ち溢れているような表情をしていた。



次の日の朝、咲良は誰よりも早く学校に着き、凛子の靴箱に手紙を入れる。

手紙を入れた後、ドキドキとワクワクが入れ混じったような気持ちで咲良は教室に戻り、凛子の登校を待った。

しばらくすると、クラスメイトが次々と登校してくる。

そして朝会が始まる数分前に凛子が登校してきた。

咲良はいつものように挨拶しながら、凛子の顔色を伺う。

凛子はいつも通りのようにも見えたが、気のせいか苛立ちを覚えているような気がした。

そして、その後に凛子から手紙の話はなく、放課後になった。

凛子は帰宅準備すると、足早に教室から出ていった。


咲良は凛子のいつも通りの姿を見て、何か嫌な予感がしていた。

しかし、手紙を渡した以上は凛子の住むマンション前の公園で、凛子を待ち会って話をする必要があった。

凛子が出て行ってから、すぐに公園に向かう。そして、

ベンチに座り凛子が公園に来てくれるのを待つ。


しかし、夕方が過ぎ、暗くなって街灯がついても凛子は公園に来なかった。

咲良はそれでも凛子が公園に来てくれると待ち続けていた。

お姉ちゃんも流石に帰ってるかな。もしかして怒ってるかな、咲良は同じ家に住む姉のことを思う。

そして、こんなに待っても凛子が来てくれないことは、手紙に対しての回答な気がして、段々と悲しい気持ちが大きくなっていった。


「一体何時まで待つ気なの。」

咲良は悲しい表情でとベンチで座り込んでいると、後ろから声をかけられ振り返る。

そこには制服姿の凛子がいた。凛子は声からも表情からも苛立っているようだった。


「り、凛子ちゃん……。」

咲良は苛立っているようでも、凛子が来てくれたことが嬉しく笑みを浮かべる。

その笑みを見ると、凛子はさらに苛立った表情をして、睨むように咲良を見た。


「手紙じゃなくて言葉ではっきり言いなさい。」

凛子は咲良に言った。咲良は何も言いせず、後ずさる。

「前から思っていたけど、あなたは、はっきりしていない。気持ちが伝わらないの。」

「凛子ちゃん?」

「手紙は返すわ。」

凛子は手紙を咲良に突き出す。咲良は受け取ることしかできなかった。

咲良が手紙を受け取ると、凛子は睨みつけるように咲良を見て、言った。

「一応読んだけど、はっきり言うわ。今のあなたは嫌い。」


「ぁ、ぁ、ふぁ、ぅわぁー」気づけば咲良は大きな声で鳴き出していた。

「ちょっと咲良、落ち着きなさい。」

さすがの凛子も咲良の泣き出しっぷりに驚き、咲良を落ちつけようとする。

しかし、咲良は泣き止まない。

すると段々と凛子は苛立ちを感じ始めてくる。


「あんたねぇ。泣いててても始まらないでしょ。この前もだし、前に美月さんがいた時も逃げ出したし、

あなたも美月さんみたいに堂々として、自信や余裕を持ちなさい。」

「ぅわわわ。私のやり方じゃだめなんだぁああ。」

気づけば咲良はまた逃げ出していた。

目からは涙がこぼれ落ちていた。

走りながら、走馬灯のように、過去のことが思い浮かんでくる。

凛子と会った日のこと、一緒に過ごした日のこと。マンション前で凛子と美月と話したこと。


私が美月さんのように自信を持って、はっきり言える人になれたら。

私が美月さんだったら、凛子と付き合えたのかな。

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