8話 納品1日前
意識朦朧な中、優奈に告白すると誓った次の日、美月の仕事はまだまだ終わってなかった。
美月はこの三日間は仮眠を少しとったくらいで、ほぼ三徹状態だった。
そして、追い込まれた美月は、終わるはずがない量を抱えていることに快感を覚えるくらいに正常な感覚が失われていた。
しかし、生真面目な美月はそんな状況でもオフィスで業務をこなす機械として働き続けていた。
目は赤く充血し、死んだ魚のような目でディスプレイを見つめ続ける。
あ、あかんわ。飛びますわ、美月は段々と理性と意識が失われていく心地がした。
「美月さん?」
振り返ると優奈が心配そうな表情で見つめる。
「もう定時なんですけど、お仕事大丈夫ですか?」
「…。だいじょうぶだよー。」あ、もう定時か。あと9時間は働けるな。
「美月さん、本当に大事部ですか?何か目の視点が会ってない気がします。」
「だいじょうぶだよー。」
「美月さん。私美月さんのそういうところ、良くないと思います。」
美月はぼやけた焦点で優奈の顔を見た。
優奈は今にも泣き出しそうな顔をしていた。そして、優奈は目をぬぐうと美月と目を合わせる。
「私の分は無事に終わりました。美月さんのおかけです。納品ディレクトリに入れておきました。」
そういうと優奈は自席に戻り、帰宅準備を始める。
美月はぼんやりと、帰宅する優奈の姿を見送ることしかできなかった。
優奈が帰った後、XもZも次々帰宅していった。
二人は美月の状況を確認することなく、足早に美月の横を通り過ぎ、帰途についていった。
美月はそれには気づくことなく、仕事に励んだ。もはや正常な意識はほぼなかった。
ただ、同時に理性も感情もなくなっていた。ただ、うっすらではあったが想いだけは残っていた。
この納品終えたら、結婚じゃなかった告白するんだ。
そもそもなんでこんなことやってんだっけ。
そうだ優奈のためだ。優奈と付き合うためにやってたきがする。
ふぅーと息を付き天井を見上げる。
そしてまたパソコンの画面に向き合う。
ディスプレイの光は眩しく、もはや画面の中に何が写っているのかすら判別できなかった。
あぁ、うん。
うん、も、もう。
休んでいいかな?
いいよね。